「新たな評価」の活用と質向上 vol.02
文科省担当課長に聞く(下) 評価の内容とその公表
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2026.0803
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3行でわかるこの記事のポイント
●学部教育を4段階で評価し質向上を促進
●教育成果だけでなく改革途中の努力も評価
●Univ-mapで評価結果を社会へ発信
これまでの認証評価制度とは大きく異なる「新たな評価」の導入が検討されている中、前回は文部科学省高等教育局大学振興課長の石橋晶氏に、制度を見直す背景と、それにより目指すものを聞いた。今回は評価の内容の詳細と留意点、評価結果の公表の在り方等について具体的に聞いた。
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―ここまでのお話は、大学が教育に責任を持つ最小単位としての学部に着目し、その教育の質を評価するというものでした。学部教育については、4段階の段階別評価(要是正、1つ星、2つ星、3つ星)が行われる予定です。1つ星は「高等教育機関として求められている水準に達している」ことが基準とされていますが、2つ星と3つ星はどのように区別されるのでしょうか。
石橋:前提として、評価の起点はディプロマ・ポリシーにあります。そこに掲げられている内容が、実際にどの程度達成されているかが重要な基準となります。

3つ星については、高い達成度が確認されていることに加え、成果に結びつく教育活動が着実に実践されていること、さらに同分野の他大学にとっても参考になるような優れた取り組みが行われているケースを想定しています。必ずしもインパクトのある取り組みである必要はなく、学生の成長を支える教育が着実に行われているかどうかが重要です。
一方、2つ星は、すでに教育改革に着手しており、将来的には成果が期待できる段階にあるものの、現時点では十分な実績が出るまでには至っていない場合などが該当します。教育の成果が出るまでには時間がかかるため、そのプロセスにおける努力も適切に評価しようという考え方です。
この3つ星と2つ星の区別は、議論の中でも特に重要な論点でした。真摯に努力している大学を適切に評価し、応援する視点も欠かせないという意見が多く出された結果、3つ星は高度な成果を示す評価としつつ、2つ星についても「前向きな取り組みをプラスに評価する」という位置づけで整理しました。「頑張っている大学を後押ししたい」というのが意図です。

―この段階別評価に対しては、「大学の序列化につながるのではないか」「学問分野によって星の獲得しやすさに差が出るのではないか」といった懸念の声も上がっています。この点についてはどうお考えですか。
石橋:この評価は、相対評価ではなく、絶対評価であるという点を強調しておきたいと思います。「全体の何割を3つ星とする」といった枠を設ける考えはありません。この評価制度の目的は、評価を通じて日本の高等教育機関全体の教育力を高めていくことにあります。仮にすべての大学が3つ星評価の水準に達するのであれば、それはとてもすばらしいことです。
また、この評価をインセンティブと結びつけていく可能性についても議論されています。もし、特定の分野で国際的にも優れた教育が実現しているのであれば、それは我が国にとって大きな強みとなります。国としても適切に評価し、支援やインセンティブを提供していくべきだと考えています。
―大学全体としては適合であっても、学部別評価の中で1つでも「要是正」があれば、大学全体としても「要是正」となる仕組みです。この点について、「厳しすぎるのではないか」という意見もありますが、いかがでしょうか。
石橋:確かにワーキンググループでも「厳しすぎるのではないか」という意見はありました。しかし、大学が全学的に協力しながら、教育の質保証や質向上に取り組むという前提に立つ以上、1つの学部で問題が生じた場合、それは大学全体の責任でもあると考えています。
制度や運営上の制約によって、学部単独では解決できない課題が生じているケースもあります。そのような場合、学部の努力だけで改善することは難しく、大学全体としての関与と支援が不可欠です。1学部で「要是正」が生じるということは、大学全体としてのマネジメントや支援体制にも課題がある可能性を示しており、その意味でも大学全体の評価に反映させるべきだと考えています。
―万が一「要是正」となった場合、文部科学省としてどのような対応を考えていますか。
石橋:要是正の内容には、軽微なものから重大なものまでさまざまなレベルが想定されます。そのため、対応も一律ではなく、その内容に応じて判断することになります。軽微な事案であれば、大学から改善計画とスケジュールを提出いただき、その進捗を確認する形で対応します。速やかに改善が図られれば、再度評価を受けることも可能です。
一方で、改善の見込みが立たない場合や、問題の性質が重大である場合には、大学との対話を前提としつつ、当該学部の在り方、さらには大学全体の存続も含めて検討せざるを得ないケースも想定しています。
―議論のまとめでは、この評価は同じ分野の大学教員による「ピア・レビュー」が基本とされていますね。
石橋:行政が教育の中身を判断し、評価することはできません。高等教育の評価は、ピアである大学関係者が担うというのが国際的に共通した仕組みです。アカデミアの力を借りることで、各大学の優れた教育力を適切に可視化するのが妥当だと考えています。
ただし、その実現には、一定の専門性や見識を備えた評価者を十分に確保することが不可欠です。現在の認証評価の体制のままでは、負担の面も含めて難しい部分があるのも事実です。そのため現在は、「何をどこまで確認すれば教育力が的確に把握できるのか」という観点から、評価項目の厳選を進めています。同時に、ピアとして評価に深く関わってくださる方々に対し、適切な処遇や環境の整備も進めていきたいと考えています。
―評価結果については、データプラットフォームの情報公表機能である「Univ-map(ユニマップ)」を通じて公表することが想定されています。一方で、過去には「大学ポートレート」が導入されたものの、当初の理念通りに活用されてきたとは言い難い経緯があります。「Univ-map」の運用にあたり、文部科学省としてどのような方針をお持ちでしょうか。
石橋:大学ポートレートは、大学が自らの活動を発信する仕組みとして一定の意義はありました。しかし、情報公表そのものや、公表した結果を大学間で比較することに対して大学側の受け止め方に温度差があり、その結果、利用者にとって必ずしも使いやすいものにはなっていないという課題があります。
これをふまえ、「Univ-map」では「わかりやすさ」を重視しつつ、大学側の取り組みや成果が適切に伝わるように情報を掲載します。これにより、高校生や高校の進路指導の先生がデータを積極的に活用し、実際の進路選択に役立てていただくとともに、大学の質向上を促していくことが重要です。「わかりやすさ」「正確性」「公的な信頼性」を兼ね備えた仕組みとして整備していきたいと考えています。
ーこの「新たな評価」によって大学の教育力が可視化される可能性を感じました。その一方で、大学に対してかなり大きな変革を求めるものだとも思います。その大きなチャレンジに対し、文部科学省としてどのような支援を考えているのでしょうか。
石橋:これまでの議論において大学や認証評価機関の皆さんと対話を重ねる中で、この「新たな評価」の理念そのものについては、多くの方にご賛同いただけた手ごたえを感じています。財務省からは「250校の大学を削減すべき」との指摘も受けていますが、教育力を検証することもないまま、一律に撤退を迫ることがあってはならないと考えます。その反面、評価の実現可能性については、まだ議論を重ねるべき課題が多く残っています。
例えば、大学にとって最初の課題となるのは、ディプロマ・ポリシーの見直しに時間と労力がかかることではないでしょうか。そのための支援策として、かつての「教学マネジメント指針」のように、何を起点にしてどのように見直しを進めればよいのかといったガイドラインのようなものを作成することも企画しています。
この例に限らず、文部科学省としても、「新たな評価」の実現に向けた課題解決のために、大学や認証評価機関の皆さまと一緒に考え続けていくことが最も有効な支援になると考えています。「新たな評価」に対する多くの方々からの期待を裏切ることがないよう、ぶれずにやり抜く覚悟です。

聞き手:ベネッセi-キャリア 🔗まなぶとはたらくをつなぐ研究所 村山和生