認証評価制度の改革案(後編) 情報基盤を導入しデータ入力や情報公表を一元管理
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2026.0511
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3行でわかるこの記事のポイント
●「特定分野評価機関」が専門的知見に基づき学部評価を支援
●データプラットフォームで大学と評価機関、双方の負担を軽減
●情報公表では進路選択にも使える検索性を担保
現在の認証評価制度を抜本的に見直す形で検討されている「新たな評価」制度。🔗前編では、学部単位の「教育の質」を4段階で評価するという最大のポイントを中心に説明した。後編では文部科学省の案を基に、「新たな評価」を誰がどのように担うのか、データプラットフォームの導入によって大学・評価機関双方の負担軽減や利用者目線の情報公表がどう実現されるのか、運営面に焦点を当てて解説する。
*図は文科省の資料から流用
🔗文科省の案
🔗認証評価制度の改革案(前編) 学部ごとの「教育の質」を4段階で評価
「新たな評価」も、従来通り複数の評価機関が関わるという前提で設計される。そこで重要になるのが、評価機関ごとの評価基準の考え方の整理だ。
学部ごとの評価における「質保証の視点」は、学校教育法や大学設置基準など、法令で求められる水準を満たしているかを判断するものだ。したがって、全ての評価機関が同一の基準に基づいて評価し、評価機関によって判断が揺らぐことがないようにする必要がある。
一方で「質向上の視点」は、教育改善の取り組みや教育成果(アウトカム)をどのように評価するかという、より裁量性の高い領域だ。多様な目的を持つ高等教育機関を適切に評価するためには、分野ごとの特性や大学のミッションをふまえた判断が不可欠となる。このため文科省案では、教育成果の例や段階別評価の判定基準について、評価機関間で目線合わせ(調整)をする必要があるとしている。
「質保証は横並び」「質向上は、共通理解の下で多様性を尊重する評価」が、「新たな評価」の基本的な考え方となる。
文科省案によると、評価主体となるのは「総合評価機関(仮称)」と「特定分野評価機関(仮称)」だ。
総合評価機関が、大学全体の評価と学部の段階別評価を総合的に担うことが想定されている。「大学全体の社会的信頼」「全学的な内部質保証体制」、そして「質保証・質向上の視点に基づく学部の段階別評価」を一体的に実施し、評価結果を大学と文科省に通知する。
評価基準・項目、評価方法が現在の認証評価制度から変わるため、既存の評価機関もあらためて文科大臣の認証を受ける。
総合評価機関は基本的に全学部の評価を行うため、設置認可で用いられる21の学位分野ごとの評価員を確保し、受審大学の各学部の学位分野に応じて割り当てるなど、評価体制を整えることになる。学際系学部の場合、授与する学位に対応する複数分野の評価員をあてる必要がある。
現認証評価機関は評価員の確保について不安視しており、文科省は大学関係者に広く協力を促す。
学部ごとの教育の質を適切に評価するには、分野特性に応じた専門的知見が不可欠である。この役割を担うのが特定分野評価機関で、医学分野の日本医学教育評価機構(JACME)などが想定されている。
文科大臣の認証を受けたうえで、分野固有の教育方法、学修成果の捉え方、国際的・専門的な参照基準などに精通した立場から、学部の段階別評価を行う。
「新たな評価」では、総合評価機関が評価全体を統括し、その過程で特定分野評価機関の専門的知見を活用するという関係になる。評価の主体はあくまで総合評価機関であり、特定分野評価機関はその評価を支える専門的パートナーという位置づけだ。
例えば、医学部で医学分野の特定分野評価機関の評価を受けた大学は、その評価結果を以って総合評価機関による医学部の評価を代替できる。この仕組みによって従来、課題とされてきた分野別認証評価と機関別認証評価の両方を受審する負担の解消を図る。

「新たな評価」における評価機関は、教育の質保証・質向上について評価するために自らのPDCAサイクルの確立が従来以上に求められる。そのため、評価機関としての適格性を文科大臣が定期的に確認する仕組み(評価機関の更新制)も導入される。
「新たな評価」では、受審管理、データ入力、データ閲覧・評価支援、情報公表といった機能を一体的に担うデータプラットフォームを、大学改革支援・学位授与機構(NIAD)に設置する予定だ。
■受審管理機能
受審申し込みや評価機関への連絡、ステータスなどを管理する。
■データ入力機能
大学は、教学IR等で日常的に整備しているデータを活用し、共通フォーマットで登録することが想定されている。受審対応で特別な事務作業が発生するのではなく、継続的な教育改善・内部質保証の取り組みの延長線上に受審が位置づけられる。
「新たな評価」での活用が予定される全国学生調査の結果は文科省が一括してデータプラットフォームに登録し、大学が個別に入力する必要はないという。
■データ閲覧・評価支援機能
自動計算機能によって、例えば大学が入力した学部ごとの教員数と学生数からST比を算出し、基準を満たさない場合はアラートを表示するなど、評価機関の負担を軽減する。
評価結果は、データプラットフォームで一元的に公表する。
閲覧者が必要な情報に到達しやすいよう、設置者、学問分野、地域、評価結果など、さまざまな条件で検索やソートができるようにする。
条件に合致する大学の一覧から個別大学の学部に遷移し、段階別評価結果に加え、そのように判断した具体的内容のポイントを説明。高校生の進路選択に活用できるよう、所在地や授与する学位、養成する人材像、ディプロマ・ポリシーなどの基本情報も表示する。

「新たな評価」は、学部単位の教育の質(教育成果)の評価を軸に、それを実現するための評価の基準や体制、情報公表のあり方など、運用面も大きく変わる。
2030年度からのスタートに向け、文科省は間もなく具体的な設計に入る。大きな制度変更に戸惑いや不安を覚える大学も多いと推測されるが、教育改善と学修成果の向上、受審負担の軽減を出発点に、社会、受験生・保護者など「大学の顧客」に目を向けた改革であることを受け止めるべきだろう。
「新たな評価」を、「偏差値とは異なる新たな価値をアピールする機会」「改善のためのフィードバック」として、各大学で積極的に活用する姿勢が期待されている。大学は制度開始を漫然と待つのではなく、ディプロマ・ポリシーの見直し、学修成果のエビデンスとなるデータの収集と整備など、新制度をチャンスに変えるための準備を早急に始めることが重要と言えそうだ。