2026.0727

「新たな評価」の活用と質向上 vol.01
文科省担当課長に聞く(上) 新制度導入の背景とねらい

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3行でわかるこの記事のポイント

●「学部教育の質の可視化」で大学の価値を伝える
●学生をどれだけ成長させたかを重視して評価
●DPに大学の特色や育成人材像の明確化を求める

現行の認証評価を大きく変える「新たな評価」に関する議論が進んでいる。2026年6月には具体的な案が公表され、2030年度からの導入を見据えた制度の骨格が固まりつつある。本記事では、文部科学省高等教育局大学振興課の石橋晶課長に、認証評価を見直す背景と、これまでの議論の経緯、見直しによって実現が期待されることについて話を聞いた。

🔗「新たな評価」の案がまとまる―2030年導入に向け具体的な制度設計へ


高校生の適切な進路選択につなげる

―先般、「新たな評価」に関する議論の取りまとめが公表され、その全体像が示されました。なぜこの議論が進められてきたのか、さらに、それがなぜ認証評価の第4サイクルの期中である「今」行われたのか、その背景をあらためて説明していただけますか

高等教育局大学振興課・石橋晶課長(以下、石橋):
今回の「新しい評価」をめぐる議論の背景には、「日本の大学教育の質が、これまで十分に可視化されてこなかった」という課題意識があります。

現行の機関別認証評価は、「学位授与機関として適切であるか」を7年に1度確認する仕組みとして2004年に導入され、20年以上にわたって運用されてきました。各大学に内部質保証の仕組みを定着させるという点では、これまでに一定の役割を果たしてきたと言えます。
しかし、これはあくまでも大学全体を評価する仕組みであるため、個々の学部における具体的な教育の状況までを評価することは困難でした。

今後、18歳人口が減少していく中で、知名度が高い都市部の大規模大学に受験生が集中してしまう可能性は否定できません。しかし、地方にも、地域の未来を支える人材を育成するために、質の高い教育に熱心に取り組んでいる大学は数多く存在します。だからこそ、学部ごとの教育の質をしっかりと把握できる評価へと転換していく必要があります。それによって、高校生や保護者にその大学の価値を正しく理解してもらい、適切な進路選択につなげていただくこと。それが、今回の「新たな評価」のねらいの一つです。

そして、なぜ「今」なのかという点ですが、2035年には、これまで100万人前後で推移してきた18歳人口が、いよいよ急激な減少局面に入ります。この2035年の時点で一定の完成形へと導くためには、6年サイクルとなる「新たな評価」を2030年頃にはスタートさせる必要があります。現行の認証評価の第4サイクルの途中であるなど、まだ整理すべき実務的な課題は残っていますが、このタイミングを逃すわけにはいかないと考えています。

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学生一人ひとりを丁寧に育てる大学を評価

―「新たな評価」においては、具体的にどのような大学が高い評価を受けることになるのでしょうか。

石橋:学生の成長を適切に可視化し、一人ひとりを丁寧に育てている大学こそが、優れた大学として適切に評価されるべきだと考えています。

教育力を重視した評価と聞くと、「入学時の学力が高い学生を多く集めている大学が有利になるのではないか」という声もありますが、私たちが評価したいのは、あくまで「入学後、学生をどれだけ成長させることができたか」という点です。そのため、各学部が掲げるディプロマ・ポリシーの達成度が、評価の軸になっていくと考えています。

―一方で、ディプロマ・ポリシーは表現が抽象的なケースも多く、大学や学部ごとの違いが伝わりにくい印象もあります。「新たな評価」でここを重視するということは、大学に対してポリシーそのものの見直しを促す意図もあるのでしょうか。

石橋:ディプロマ・ポリシーの見直しについては、大学の自主性の根幹に関わる部分ですから、基本的に各大学の判断に委ねられます。一方で、中央教育審議会の部会などでも、その重要性は繰り返し指摘されています。多くの大学がこの点を真摯に受け止め、主体的に対応していただけることを期待しています。

その際、「いくつかの大学のポリシーを並べても違いがよくわからない」という現状のままでよいのかという問題意識が生じるはずです。同じ学問分野であっても、地域社会を支える人材を育てる大学と、研究を第一に置く大学とでは、ディプロマ・ポリシーに自ずと違いが表れるべきでしょう。

こうした違いを明確にするためにも、ディプロマ・ポリシーには、自学がどのような人材を育成するのか、また、そのためにどのような教育を行うのかを具体的に盛り込むことが求められます。

―一定の水準を画一的に求めるのではなく、各大学の強みや特色が十分に表現されているかを問うという理解でよろしいでしょうか。

石橋:そのとおりです。今回の議論においても、大学の多様性が損なわれるのではないか、あるいは画一的な評価になってしまうのではないかという懸念が寄せられました。

しかし、私たちはむしろ、ディプロマ・ポリシーこそが大学の多様性を表すものであると考えています。各大学が掲げるディプロマ・ポリシーの多様性を前提とし、それに応じた評価の多様性も担保されるべきだと認識しています。

ただし、ディプロマ・ポリシーは学位授与の基準であるため、その水準は、それぞれの学問分野や教育の質に基づいて適切に設定される必要があります。そのうえで、ディプロマ・ポリシーの多様性を生かしながら評価を行っていくことが重要であると考えています。

大学全体の質保証と学部教育の質向上を確認する仕組み

―「新たな評価」は、質保証の観点から大学全体を評価し、質向上の観点から学部別の評価をする、いわゆる「二階建て」の構造になっている点が特徴的です。なぜ、このような構造にしたのでしょうか。

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石橋:出発点は非常にシンプルで「学部ごとの教育力を評価したい」という考えがありました。そこから議論を進める中で、「では、大学全体の評価をどうするのか」という問いが示され、多くの意見をいただきました。

議論の結果として導かれたのが、この「二階建て」の評価です。まず一階部分では、大学全体について質保証の観点から問題がないかを確認します。これは現行の認証評価の機能をしっかりと引き継ぐものです。
そのうえで二階部分では、学部についても最低限の質保証を確認しつつ、さらに一歩踏み込み、教育内容やその成果といった「質向上」の評価を行います。そして、その結果を学部ごとに4段階でわかりやすく示していく、という仕組みにしています。

―これまでの議論の中では、評価の単位は学部ではなく学位プログラムであるべきとの声もあったかと思います。今回、学部単位とした理由は何でしょう。

石橋:ご指摘のとおり、ディプロマ・ポリシーに基づき、学位に紐づけて評価を行うのであれば、学位プログラム単位での評価となるのは自然な考え方です。ただし、学位プログラムの数は膨大となるため、現実的な運用が難しいという点が理由の1つです。

加えて、現在多くの大学では、学部を基本単位として教育が行われています。学部の中に複数の学位プログラムが存在する場合もありますが、その場合でも、あえて1つの学部としてまとめ、組織的にマネジメントされています。こうした実態もふまえ、まずは学部単位で評価を行うことが適切であろうと判断しました。

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聞き手:ベネッセi-キャリア 🔗まなぶとはたらくをつなぐ研究所 村山和生