2026.0817

「新たな評価」の活用と質向上 vol.03
ワーキンググループ主査に聞く(上) 大学側の準備において重要な視点

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3行でわかるこの記事のポイント

●大学は教育成果を社会に説明する責任を負う
●認証評価を大学改革と教育改善の機会に変える
●教員主体で組織的な教育改善を進める必要がある

大学の認証評価制度が大きな転換点を迎えている。2030年の導入を視野に議論が進む「新たな評価」制度では、これまでの大学のガバナンス中心の評価から一歩踏み込み、「学生がどのように成長したのか」という教育成果に焦点が当てられようとしている。本記事では、「教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ」の主査を務める桐蔭横浜大学・森朋子学長に、「新たな評価」が果たそうとしている役割と、それに向けてどのような視点から準備を進めるべきか、話を聞いた。

🔗「新たな評価」の活用と質向上 vol.01 文科省担当課長に聞く(上) 新制度導入の背景とねらい
🔗「新たな評価」の活用と質向上 vol.02 文科省担当課長に聞く(下) 評価の内容とその公表
🔗「新たな評価」の案がまとまる―2030年導入に向け具体的な制度設計へ


問われる大学の存在意義ー社会に教育の価値を示す

―森先生は「新たな評価」の議論に深く関わっており、かつ、私立大学の学長でもあります。この「新たな評価」について、先生ご自身はどうお考えですか。

森朋子学長(以下、森):私自身、これは単に「これまでの認証評価の方法を変える」という話にとどまるものではないと考えています。
 
本年4月、財政制度等審議会で「大学数を250校程度削減すべき」という厳しい指摘が出された際、社会から「それではいけない」と大学を擁護する声がほとんど聞かれませんでした。この事実に、私は一人の小さい私立大学の学長として非常にショックを受けました。

少子化が加速度的に進む今、大学はその存在意義を、かつてないほど強く問われるようになっています。だからこそ大学は、内部で議論を完結させるのではなく、自らの社会的役割や、自学が提供する教育の価値を社会に丁寧に説明していかなければいけません。

人口が減少する時代においては、一人ひとりの能力をいかに高めるかがより重要になります。大学は学生募集ばかりに力を注ぐのではなく、「学生をどのように育てるか」という原点に立ち返るべきです。今回の「新たな評価」は、そのために大学が自らを総点検する貴重な機会です。言い換えれば、大学が教育を見直し、その成果を教育の質向上につなげていくための"エンジン"として活用すべきものだと考えています。 

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大学の説明責任における「新たな評価」の役割

―「新たな評価」では、教育力の評価の比重が高くなっています。大学には教育のほかに、研究や社会貢献といった役割もあると思いますが、今回、特に教育が重視されているのはなぜでしょうか。

森:私も、大学の役割が教育だけだとは考えていません。研究と社会貢献も同様に重要です。しかし、あるとき「研究成果を教育に還元してこそ大学ではないか」「社会貢献も人材育成。つまり教育を通じて行われるものではないか」という指摘を受け、あらためて大学の第一義的な使命は教育なのだと気づかされました。

―研究や社会貢献に比べると、教育成果は可視化しにくく、評価が難しい側面もあります。この点はどのようにお考えですか。

森:たしかに教育には遅効性があります。その価値が、数年たってから初めて見えてくることも少なくありません。そのため、短期的な視点で教育成果を測定し、評価することに懸念があるのも理解できます。
しかし、社会に対してそれを説明する努力をしていかなくてはなりません。また、ときには、言葉だけではなくエビデンスを示すことも必要でしょう。これは大学に課された社会的責任です。可能な範囲で誠実に説明を尽くす以外にないと考えています。
その意味では、むしろ「新たな評価」は各大学が自学のディプロマ・ポリシーに基づき学生の成長を主体的に発信できる機会であり、大学にとって一つのチャンスだと捉えています。

個人の授業改善から組織的な教育改善へ

―この「新たな評価」のために、大学が何か特別な準備をする必要はあるのでしょうか。

森:別な組織を新たに設ける必要はないと考えています。学部、ファカルティとして、毎年カリキュラムを見直し、学生の状況を確認しながら改善していく――その日常的なサイクルこそが、自己点検・評価の本質だからです。

その意味では、ミドルFDが果たす役割もこれまで以上に大きくなります。これまでは個々の教員による授業改善(ミクロ)にFDの重点が置かれてきましたが、今回の「新たな評価」では、それを学部全体、さらには組織全体へと広げていくことが求められます。学生は一人の教員の努力だけで育つわけではなく、カリキュラム全体を通じて成長します。だからこそ、学部として教育を支える仕組みを検証することが重要なのです。

専門人材を雇用しなければ認証評価に対応できないという意見もありますが、私はそうは考えていません。FDやアカデミック・アドバイザーの専門人材に任せきりにするのではなく、日々、目の前の学生と向き合っている教員自身が主体となって取り組んでいただくことが重要だと考えています。

これまでの認証評価では、職員が専門チームを組み、資料を整備して対応する大学が多かったように思います。しかし、その取り組みは日常的な教育活動と必ずしも十分に結びついていなかった面もあったのではないでしょうか。

「新たな評価」の基本的な4つの評価方針、7つの評価基準、15の評価項目はすでに整理され、公表されています。これを見ていただくと、学生が成長する学びのプロセスにそった設計になっていることがおわかりいただけると思います。つまり、学修者中心の評価項目になっていますので、評価のために何か特別なことをするのではなく、日々学生の指導・支援にあたっている教員の方々に取り組んでいただきたいと考えています。

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聞き手:ベネッセi-キャリア 🔗まなぶとはたらくをつなぐ研究所 村山和生