2026.0730

〈共に挑む学生募集DX〉vol.07 「学部→専攻→教員」段階的な学びの可視化で志願倍率37倍超 を達成。 成蹊大学 国際共創学部の新設広報戦略

大学(募集・接続・教学)

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3行でわかるこの記事のポイント

・一般選抜の定員86名に対し志願者3,192名・倍率37倍超。開設1年半前からの段階的な訴求設計が奏功
・受験生アンケートで想定とのずれを発見し、訴求先を社会課題・経済経営関心層へ再設定
・教員を名前で認識し「学びたいこと」を明確に持って入学する学生の獲得に成功

成蹊大学は20264月、国際共創学部を新設した。一般選抜の定員86名に対し志願者は3,192名、倍率37.1倍。在学生も卒業生もいない新設学部で、この結果をどのように実現したのか。成蹊学園企画室広報グループの賀屋周防氏と瀧田光毅氏に聞いた。


新設学部の「名前」では伝わらない。学びの本質をどう届けるか

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国際共創学部は、国際日本学専攻と環境サステナビリティ学専攻の2専攻で構成される。前者は日本と世界をつなぐ視点から文化や社会を探究し、後者は環境問題をはじめとする社会課題に文理を越えて取り組む。いずれも問題意識を出発点とした実践的な学びが特徴だ。

しかし「国際共創」という学部名からだけでは、具体的な学びの中身が伝わりにくい。在学生の声も卒業生の実績もない中で、受験生に届く表現をどう組み立てるかが課題だった。「受験生にとってキャッチーに伝えたい一方で、教員には研究に裏付けられた思いがある。そのすり合わせに苦心しました」と賀屋氏は振り返る。

設置届出で用いる正確な表現と、高校生に響く分かりやすい言葉はどうしても距離がある。賀屋氏は「教員が大切にしている学問の本質を損なわずに、受験生目線で伝えるにはどう表現すればよいか。そのすり合わせを丁寧に重ねたことが、結果として学部の訴求軸を固めることにもつながりました」と語る。新設学部の広報に携わる大学関係者の多くが直面する課題ではないだろうか。

開設1年半前からの情報発信。早期着手を支えた学内の体制

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新設に向けた学内の動きは、かなり早い段階から始まっていた。202310月にはWebサイトでニュースとして情報を公開。同年度内にはチラシも制作し、早期の認知獲得を図った。

2024年度に入ると、学部の教員、入試部門、広報グループなどが参加するワーキンググループが発足。「設置構想委員会は毎週開催していました。世に出す情報は、そこで先生方に一斉に確認してもらう体制を取りました」と瀧田氏は話す。順番に回覧するのではなく全員で同時に確認し決裁を進める方式が、意思決定の速さを支えた。

この時期に進研アドへの相談も開始した。広報パートナーに選んだ理由について賀屋氏は、「国際共創学部の特性を踏まえたうえで、受験生に届く分かりやすい広報戦略を提示してもらえた点が大きかった」と語る。具体的には、特設サイトの構築とキービジュアル・キーメッセージの制作を専攻ごとに行う提案だった。

早期着手の意義について、賀屋氏はこう強調する。「もしこれが開設前年の1年間だけだったら、今回の結果にはなっていなかったと思います。できる限り早く情報を発信できる体制を学内でつくることが重要でした。高校の先生方からも、『新しい学部の情報をかなり早く出していますね』という声をもらいました」。

「学部専攻教員」3段階のキービジュアルで抽象から具体へ

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広報戦略の核となったのは、情報の「出し方」を段階的に設計したことだ。新設学部は認可前の段階で発信できる情報に制約がある。この制約を逆手に取り、受験生の理解度に応じて訴求を深化させる方針を採った。

1段階では、「国際共創学部」という学部全体のキービジュアルと特設サイトを展開した。まずは学部の存在を知ってもらい、特設サイトへの来訪者を増やすことを目指した。賀屋氏によると、当初から特設サイトのアクセスは順調に推移し、一定の認知効果は確認できたという。

2段階では、専攻にフォーカスしたビジュアルに切り替えた。国際日本学専攻と環境サステナビリティ学専攻、それぞれの学びの特色をビジュアルの中に組み込んだ。学部の認知から具体的な学びの選択肢の理解へと、受験生の関心を一段深める狙いがあった。

3段階は、受験期直前のフェーズだ。在籍する教員のメッセージや体験講義の情報を、Instagramなどを通じて発信。「この先生のもとで、こういう研究ができる」というレベルまで具体化した。

「最初から細かい情報を出しても受験生には響きにくい。段階を踏むことで、自分がどう学べるのか、どうなれるのかを、高校生がイメージできるようにしたかった」と賀屋氏は語る。

受験生アンケートが示したターゲットのずれ。訴求先の再設定へ

段階的な訴求を進める一方で、広報チームはデータに基づく軌道修正にも取り組んだ。きっかけとなったのは、DM送付先の受験生を対象としたアンケートの結果だった。

環境サステナビリティ学専攻は当初、社会課題に関心を持つ層を中心にターゲットを設定し、理系寄りの受験生にもリーチすることを想定していた。しかしアンケートでは、「自分は理系なので、文系学部には興味がない」という回答が一定数確認された。賀屋氏は「これはまずい、と感じました」と当時を振り返る。

この結果を受け、広報チームは訴求先を見直した。社会課題への関心層に加え、文系の中でも経済・経営分野に関心を持つ層にもターゲットを拡大。「模試データを活用し、学びの内容が近い学部・学科を志望している高校生に対して、DMやデジタルメッセージでアプローチしました」と瀧田氏は説明する。

訴求先の再設定は、特設サイトのアクセスにも反映された。202510月以降、環境サステナビリティ学専攻のページへのアクセスが伸び、国際日本学専攻を上回った。「学部名だけでは分からなくても、DMやサイトで専攻の具体的な学びの内容を届ければ理解してもらえる」と賀屋氏は手応えを語る。

年間を通じて実施したデジタルメッセージ配信や、リーフレットDMの自宅配送も効果があった。「高校生に直接メールを届ける施策は、進研アドのデータベースがあったからこそ実現できたものです」と瀧田氏は振り返る。

教員を「名前で知って」入学してくる学生たち

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一連の広報施策の成果は、入試結果に明確に表れた。一般選抜の定員86名に対し志願者3,192名、倍率37.1倍。環境サステナビリティ学専攻は途中まで伸び悩んだものの、訴求先の再設定後に志願者が増加し、一般選抜全体では志願倍率の目標を達成した。

しかし、賀屋氏が最も手応えを感じているのは、入学者の「質」だ。2026年度の国際共創学部の新入生に対して実施したアンケートでは、多くの学生が入学前から「学びたいこと」を明確に持っていた。社会課題や環境問題に取り組む意欲の高い学生が集まっているという実感がある。

さらに印象的だったのは、教員からの報告だ。「新入生が、特設サイトや体験講義の動画を見て、先生の名前を知ったうえで入学してきていると話していました。既存の学部では考えられないことだそうです」と賀屋氏は語る。教員にとっても、学生が事前にしっかり調べ、自分の研究に共感して入学してくれることは大きなやりがいにつながっているという。こうした成果の背景には、学部全体だけでなく専攻別・教員別まで展開した段階的な訴求設計があった。

外部パートナーに求めた「届ける力」と「第三者の説得力」

今回の広報戦略を振り返り、賀屋氏は進研アドに期待した役割を2つ挙げる。

1つ目は「届ける力」だ。「受験生に情報を届けるチャネルを持っていること自体が、大きな価値でした」と賀屋氏は話す。模試データに基づくターゲティングやデジタルメッセージの配信基盤は、大学単独では構築しにくい。新設学部という限られた時間の中で、確実にリーチできるインフラがあったことが、施策の推進力になった。

2つ目は「第三者としての説得力」だ。新設学部の広報では、教員の意見を集約する作業が不可欠になる。しかし、職員から教員への提言は受け入れられにくい場面もあった。「同じ内容でも、受験業界のプロである進研アドから伝えてもらうことで、先生方の受け止め方が変わることがありました」と賀屋氏。教員との打ち合わせに進研アドにも同席してもらうことで、コミュニケーションがスムーズに進んだという。

最後に、同じく新設学部の広報に悩む他大学へのメッセージを聞いた。賀屋氏は2つの点を挙げる。「1つ目は、やはり早期の着手です。広報できる期間は限られています。その中でできる限り早く動くための体制を、学内でつくっておくことが大切です」。

2つ目は、教員との連携です。新設学部のアイデンティティは、やはり教員の研究がベースになります。教員としっかり相談しながら進めることで、広報に悩む時間はおそらく半分くらいに短くなると思います」。

1年半にわたる広報戦略を経て、成蹊大学 国際共創学部は、学びたい内容を明確に持った学生を迎え入れた。在学生という有力な広報素材を得た2年目以降、同学部の情報発信はさらに進化するだろう。


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写真左から、成蹊学園 企画室広報グループ・賀屋周防氏、成蹊学園 企画室広報グループ・瀧田光毅氏、進研アド 営業本部ソリューション営業部・稲垣智士

(文・写真:大坪 侑史)
(文責:進研アド DX事業本部 本部長 高橋 毅)

新設学部の広報戦略に関する進研アドへの相談

成蹊大学のように、新設学部・改組にあたっての情報発信戦略や、受験生への学びの訴求設計にお悩みの大学は、ぜひ下記よりお問い合わせください。早期着手からキービジュアル制作、データに基づく軌道修正まで、実例を交えてご説明いたします。

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