「新たな評価」の活用と質向上vol.04
ワーキンググループ主査に聞く(下) ディプロマ・ポリシー点検のポイント
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2026.0831
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3行でわかるこの記事のポイント
●DPは達成度を測定できるような設計を
●大学方針と学部方針の一貫性確保が重要
●新評価を通じ大学教育と社会の接続を強化
大学の認証評価制度が大きな転換点を迎えている中、前編では「教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ」の主査を務める桐蔭横浜大学・森朋子学長に、「新たな評価」の役割や、大学として持つべき準備の視点について話を聞いた。後編では最初に求められるディプロマ・ポリシー点検のポイントや、点検によって期待される変化について聞いた。
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―ここまで、特別な組織をつくったり、外部人材を雇用したりして評価に対応する必要はないというお話でした。一方で、対応には時間がかかりますが、早期に着手したほうがよいポイントなどはありますか。
森:「新たな評価」では、学部が掲げるディプロマ・ポリシー(以下、「DP」)の達成度が評価の軸になります。そのため、まず現在のポリシーが実際に測定可能かどうかを点検することから着手すべきです。そもそも、すべての大学のDPが測定可能かと問われれば、今現在は疑問が残ります。

例えば、「優しさ」「愛」「倫理性」といった幅広い概念を含んだ言葉をDPとして掲げている大学があるとします。もちろん、大学として「優しさ」などを育成することは重要ですが、DPよりも上位の「人材育成目標」として掲げるべきものなのかもしれません。DPは「学位授与の方針」である以上、学位を授与するに足りる水準まで学生が到達したことを、大学として明確に説明できる言葉で表現する必要があるでしょう。言い方を変えれば、DPを「どう測定するのか」、その定義と評価方法や、何をラーニング・アウトカムとするのかを明確にすることが不可欠だと考えています。

―DPの見直しについて、学内でどう議論すべきだとお考えですか。学部単位で検討すべきなのか、あるいは大学全体として進めるべきなのか、いくつかの方法が考えられます。
森:まず大学が、自学のミッション、特に私学であれば「建学の精神」をふまえ、進むべき方向性を明確に示すことが重要です。各学部が個別にDPを策定した場合、それらをすべて並べて見た際、同じ大学のものとしての一貫性を欠くおそれがあるからです。
そのうえで、DP策定のための基本的なフレームワークを大学として示すべきです。この全体方針とフレームワークを受けて、各学部が主体的に具体化していくという手順がよいのではないでしょうか。学部では、このように示された大学独自のミッションと、自らの専門分野における学協会や関係団体が示す基準を合わせたDPを策定することになります。これらの調整を担うミドルリーダーの役割は、DPの見直しだけでなく、「新たな評価」全体において非常に重要であると考えています。
―今お話にあったミドルリーダーについて、もう少し詳しく教えてください。具体的には、どのような立場や役割の方を指すのか、また、その担い手は教員であるべきなのか、それとも職員も含まれるのかお聞かせください。
森:「新たな評価」で問われるのは学部の教育の内容です。具体的な教育内容の議論については、その分野に深く精通している教員が主体となるべきでしょう。具体的には、学部長、学科長を担っている教員です。一方で、これまでの認証評価において、職員が果たしてきた役割が非常に大きかったことは承知しています。教育学的な視点を持ち合わせている職員の方も多くいますので、その力も借りながら教職協働で進めていくことが有効だと考えます。
―「新たな評価」に対応することによって得られる価値や、今後期待される変化についてのお考えをお聞かせください。
森:私は、この「新たな評価」が、大学教育と社会をつなぎ直す契機となることを期待しています。現状を振り返ると、高校から大学、そして大学から社会への接続は、必ずしも十分な状態とは言えません。企業は大学の成績を十分に信頼しておらず、その代わりに「ガクチカ」やエントリーシートで学生を評価しています。
一方で、高校生や高校教員は偏差値などさまざまな要素で進路選択を考えていると思います。しかし、これからは最初に「自分が伸びる大学はどこなのか」という観点を重視して、大学を選ぶ時代になってほしいと考えています。
もし大学が、教育の成果、すなわち学生の成長を明確に示せるようになれば、高校生はより納得感を持って進学先を選べるようになります。さらに、企業の大学に対する信頼感を高めることにつながるはずです。
この「新たな評価」をめぐる議論のさなか、ある大学関係者から「これは、もう一度設置審査を受け直すようなものですね」と言われたことがあります。まさにその通りだと思います。
大学は設置時に、その時代の社会的要請をふまえて教育計画を立て、プログラムを整備して、人材の育成を宣言します。しかし、その後の社会変化の中で、当初の理念と教育の実態が乖離してしまっているケースも見受けられます。私はそれを肯定的に捉えていますが、「新たな評価」を機に今一度、現状や未来を見据えてこれからどのような教育が必要になるのかを総点検すべきではないでしょうか。
本格的な少子化が進む今、現状をふまえるだけでなく、10年後、20年後の未来を見据えたうえで、大学・学部のあり方を根本から見つめ直す。今回の制度改革には、まさにそうした意味があるのだと思っています。

聞き手:ベネッセi-キャリア 🔗まなぶとはたらくをつなぐ研究所 村山和生