2026.0623

入学前教育を通じて、意欲的な入学者の受け入れと専門職人材の輩出を目指す―新潟医療福祉大学

入学前教育・初年次教育

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3行でわかるこの記事のポイント

●地域社会を支えるための、意欲的な入学者の受け入れ
●全学科共通の教育体制構築に向けた、試験的な入学前教育の導入
●共通のデータを用いて目指す、教育指導の平準化

保健、医療、福祉、スポーツ系の16学科を擁する🔗新潟医療福祉大学は、多様な入学者の受け入れに対応可能な教育体制を整えるため、2026年度入学生から全学で入学前教育を統一した。
本記事では、同大学が抱えていた課題や導入の経緯、今後の展望について紹介する。


多様な入学者受け入れと、初年次教育の課題

新潟医療福祉大学は、地域社会に貢献するQOLサポーターの育成を建学の精神に掲げ、ワンキャンパスでの多職種連携による教育・研究や、地域の医療・福祉機関や各高等学校と連携した専門職人材の育成に力を入れている。

地域社会を支える観点から、これまで以上に多くの専門職人材を輩出するため、志望動機や職業観、地域への関心など多様な観点での入学者受け入れを進めている同大学では、2026年度入学生のうち75.6%が年内入試による入学者となった。
こうした状況について、「年内入試の拡大に伴い、高校から大学へのスムーズな移行に課題があると認識しており、その課題に対して、大学の責任として主体的にサポートしていく必要があると実感している」と教育・学生支援の事務を取り仕切る木原学務部長は語る。

また、理学療法学科で入学前教育を担当する宮口講師は「年内入試で合格した後、入学までの期間にモチベーションや学修習慣が低下すると、入学後の学修もつまずきやすくなってしまう 」と話す。

医療福祉系大学では、1年次前期から専門的な学びが始まるため、学修面でつまずくと、その後の修学に影響が及ぶ場合がある。
事実、新潟医療福祉大学では、1年次前期の段階から修学継続に困難を抱える学生が一部に見られる。また、進級後も、国家試験に向けた学修において十分な準備が整わず、苦労する学生が一定数存在するという。

初年次のつまずきを予防するための教育改革

こうした状況を改善すべく、新潟医療福祉大学は「国家試験合格率」「退学率」「卒業率」「就職率」の4項目で目標を再設定し、2021年から段階的に改革を進めている。
これらの取り組みは、「多様な学生一人ひとりの学修を確実に支え、専門職として社会に送り出すことを大学の責務とする」という学長の考えのもと、全学的な方針として進められている。

一連の改革の中で、同大学が重視してきた取り組みの一つが入学前教育だ。

その理由について木原学務部長は、「医療福祉系大学・学科では、入学後早期から専門的な学修が始まるため、入学後の限られた期間だけで支援を完結させるのではなく、入学前から入学後までを見据えた教育体制への転換が必要であることを大学として検討してきた」と語る。

一方で、ゼミ担当を中心としたきめ細かな学生支援を行っている同大学において、こうした考え方を全学的な取り組みとして実装していくためには、教育の質を担保しながら共通の枠組みを整える必要があった。

そこで、教育事業者による複数の入学前教育プログラムを比較検討し、各学科がその中から適したものを選択する形で、2022年度入学生から試験的に導入した。

全学統一に至った入学前教育の成果

同大学では、2022年度入学生からの4年間にわたって検証を実施した。

その結果、「看護系」「医療技術系」など学問系統ごとに設計された、入学後の学びへの接続と学習意欲の喚起を目的とするプログラムを、2026年度入学生から全学科で採用することを決めた。

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採用の決め手となったのは、以下の3点だ。
①受講完了率の高さ
②大学の学びへの期待が向上
③教員の指導負担の軽減 

①受講完了率の高さ
入学前教育は高校、大学双方の教員から目が届きにくい時期に行われるため、受講者が最後まで取り組める設計であることが重要だ。
複数のプログラムを比較検証する中で、採用した入学前教育プログラムは、試験的に導入した全ての学科で受講完了率が95%を超えた点を評価した。

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2025年度入学生の受講完了率

②大学の学びへの期待が向上
新潟医療福祉大学では、入学後に大学への不安や期待、進学満足度等のアンケートを実施しているが、採用したプログラムを受講した学生は「入学前の期待度」と「入学直後の満足度」の2つの項目で好意的な回答をしていることがわかった。

「入学後の学びへの接続と学習意欲の喚起を図る」というコンセプトのプログラムは、アンケートの結果から、期待した通り専門教育への導入に役立っていると考えた。

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※期待、満足度を5段階で評価(1=高評価、5=低評価)

③教員の指導負担の軽減
採用した入学前教育プログラムは受講データを1年次からのゼミの振り分けに活用できる点も教員から評価された。

新潟医療福祉大学では、1名の教員が78名の学生をサポートするゼミを1年次前期から実施している。
これまでは、入学前の情報が不足する中で所属先のゼミを決めていたため、特定の教員に支援が必要な学生が集中してしまい、教員の負荷が高くなってしまうケースがあった。

入学前教育プログラムのデータを用いて、支援が必要な学生や周囲を引っ張っていくことが期待されるリーダー候補の学生をバランス良く振り分けることで、教員の指導負荷の軽減につながった。 

入学前教育を担当する教育・学生支援機構の吉田教授(健康スポーツ学科所属)は「教員が入学前教育プログラムの受講データを閲覧し、学生の指導に必要な情報を事前に確認できるため、教育的支援が必要な学生の早期把握・早期支援に繋がった 」と語る。

入学前教育のデータを活用した学生指導と募集広報の展望

新潟医療福祉大学では、入学前教育を全学科で統一したことで、さらなる教育改革を進めようとしている。

全学科で共通の入学前教育データを取得できるようになったことを活かし、データに基づいた学生指導のノウハウを学内で共有・展開していく考えだ。
これまで学生指導の方法は教員個人の経験や工夫に委ねられる側面があったが、今後は共通データに基づいた指導を、誰もが実践できる体制を整える。
これにより、指導の質の向上と、教員による指導の円滑化を図る考えだ。

また、改革は教育だけにとどまらない。
木原学務部長は、「近年、入学者受け入れにあたって、大学における学修支援の在り方を重視する高校教員が増えている」と語る。

年内入試の進路選択においては、高校での学びを大学でどのように繋げていくかという点で、高校教員の影響は非常に大きい。入学前教育を全学科で統一し、学びの継続を意識した学生サポートに役立てていることを、地域の高校に発信することを同大学として検討している。

新潟県では2040年以降、在宅・訪問診療のニーズがピークを迎えるとされており、医療従事者をはじめとする保健・医療・福祉・スポーツ領域の専門職人材の確保が急務だ。

多様な背景を持つ高校生に、保健・医療・福祉・スポーツ職への関心を高めるとともに、新潟医療福祉大学で学ぶ意義を伝えること。
●入学後は、一人ひとりの状況に応じた学修支援を通じて、確実に修業年限での卒業へと繋げていくこと

こうした取り組みを一体的に進めることで、地域社会を支える専門職人材の育成を目指している。

(文責・及川愛)


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