2026.0331

認証評価制度の改革案(前編) 学部ごとの「教育の質」を4段階で評価

この記事をシェア

  • クリップボードにコピーしました

3行でわかるこの記事のポイント

●最低限の「質保証」に加え、「質向上」の取り組みを評価
●DPに基づく教育成果を可視化し、わかりやすく社会に発信
●評価結果に応じたインセンティブとペナルティを設け、質向上を促す

認証評価制度が大きく変わろうとしている。現行の「法令上の基準への適合・不適合」の判定にとどまらず、学部単位の教育の質(教育成果)を段階別に評価し、社会にわかりやすく発信する方向で検討されている。「質保証」と「質向上」の両立を図り、大学全体の評価と学部ごとの評価の二層構造になる見通しだ。2030年度からの導入をめざし、文部科学省がまとめた案を2回に分けて解説する。


評価結果のわかりにくさや受審負担の重さを問題視

認証評価制度の見直しについては、中央教育審議会大学分科会に置かれた「教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ」(座長:森朋子・桐蔭横浜大学学長、以下「WG」)で議論されている。

2004年度の制度導入から20年以上が経過。この間に、大学では内部質保証の体制整備が進み、自己点検・評価を土台にした改善サイクルが定着してきた。

しかし、その一方で、
◆評価結果が一般の人にとってわかりにくい
◆大学全体の改革は進んだが、カリキュラム改善や学修成果の向上に結び付いていない
◆受審負担が重い割にメリットが感じられず、大学が「評価疲れ」を起こしている
といった問題が指摘されてきた。

これらをふまえ、中教審の🔗「知の総和答申」が現行制度の抜本的見直しを提起、質向上をより重視する「新たな評価」への転換を打ち出した。
答申を受け、2025年5月からWGが検討をスタート。文科省は2026年3月中旬、それまでの議論にもとづく🔗「『新たな評価』制度の在り方について(案)」をまとめた。大学の人材育成機能を強化し、一人ひとりの学生の能力を最大限に伸ばすことを目的に、教育に特化した評価への移行を打ち出している。「これまで環境や組織、計画が認証評価の基準となっていたのを、学生を主語にした評価に切り替えた」(WG委員)ことがポイントと言える。

高い教育成果を上げている学部には「3つ星」を

文科省の案では、「新たな評価」について
◆  教育成果をデータに基づいて可視化し、社会に分かりやすい形で公表する
◆  最低限の「質保証」にとどまらず、大学に「質向上」を促すものにする
◆  評価項目の精選とデータベースの活用等によって、受審負担を軽減する
といった方向性が打ち出された。

「新たな評価」制度における現行からの最大の変更点は、大学全体の評価に加え、学部(短大は学科)単位の「教育の質」を4段階で評価し、公表することだ。「教育の質」については、学部が掲げるディプロマ・ポリシー(DP)を軸に、その整備・運用や達成状況を評価。評価結果を「1つ星(★)」「2つ星(★★)」など、一般の人にわかりやすい標語で示す。

例示された4段階の区分は以下の通り。

要改善:DPとカリキュラム・ポリシー(CP)の整合性、単位認定の適切性など、学生の学びに関する内容を中心とする項目が、法令の求める水準を満たしていない。
1つ星:水準を満たしている
2つ星:優れた取り組みがなされ、現時点では十分な教育成果を上げていないが、今後、高い成果が期待される
3つ星:優れた取り組みによって高い教育成果を上げている。

「2つ星」と「3つ星」に対するインセンティブ、「要改善」に対するペナルティとして、助成金の増減などが今後、検討される。
「要改善」の学部がある大学には文科省への改善状況の報告を課し、早期に改善された場合は再評価の受審を可能にする。一方で、取り組みが不十分で改善の見通しがない場合には厳格に対応する方向だ。

従来の自己点検・評価の項目を精選・簡素化

「新たな評価」の全体像について説明する。

大学全体の評価では、
①  社会的信頼
②  全学的な教育の内部質保証システムの方針と体制
③  目指すべき方向性に向けた自己点検・評価と内部質保証
などが対象。従来の自己点検・評価の項目を精選・簡素化し、既存資料の提出で受審できるよう負担軽減を図る。

大学全体の評価で基準を満たさない場合は、学部単位の評価には進まない。

「質保証の視点」でDP公表や学修成果の把握状況を確認

大学全体の評価で基準を満たした場合は、学部ごとに法令が定める水準への適合(質保証)と、水準を超える取り組み(質向上)の両面から、「教育の質」を評価する。設置認可で活用している21の学位分野をふまえた評価が想定されている。

学部ごとの評価では以下の4つの基本方針の下、7つの評価基準と15の評価項目を設定。
1)「養成する人材像」とDPの明確化・公表
2)「養成する人材像」とDPの達成に向けたカリキュラム・教育環境体制
カリキュラム・ポリシー(CP)との整合やアセスメント・プラン(AP)の整備、教員配置、入試設計、施設・設備、学生支援の体系的整備など
3)学修成果の把握と評価
単位認定の厳格化と適切な成績評価基準、卒業時のDP到達度の多面的方法による把握など
4)学びと成長を基盤とした不断の自己改善 
教学IRや外部ステークホルダーの意見をふまえ、点検・評価の結果を教育改善に循環させているか

「質保証の視点」では自己点検評価書と根拠資料に基づいて、各項目について水準を満たしているか確認する。
一つでも満たしていない項目がある学部は「要改善」となる。

「質向上の視点」では学生満足度や就職状況が教育成果の根拠に

水準を満たす学部については、上記4つの基本方針をふまえ、「質向上の視点」から次のようなことを確認する。
① 学生の成長につながる優れた取り組みを、根拠をもって示せているか
② 優れた取り組みを通じて教育成果(アウトカム)を上げていることを、根拠を示して説明できているか
③ 取り組みと教育成果の関連性を、根拠をもって示せているか

①の「優れた取り組み」の例としては、次のようなものが挙げられている。
「『養成する人材像』とDPの策定・公表」における優れた取り組み
➡社会・地域のニーズの把握に向けた体系的・継続的な調査や、産業界・自治体・卒業生等との意見交換を通して『養成する人材像』を定期的に見直している。

「学びと成長の結果を基盤とした不断の自己改善」における優れた取り組み
➡内部質保証システムの中で学生が参画し、その意見や提案を反映する体制が構築されている。

「教育成果(アウトカム)」の根拠としては、以下が例示された。
◆学生の高い満足度や成長実感を示すデータ
◆直接評価と間接評価を組み合わせ、DPで示す資質・能力を身に付けていることを示すデータ
◆就職状況や進学率、専門分野と進路の関係性を示すデータ
◆企業アンケート等を活用した卒業生の活躍状況に関するデータ

大学が提出するこれらのデータや「優れた取り組み(教育実践等)」の内容をもとに、評価機関が総合的に段階別評価をしたうえで、結果を大学と文部科学省に通知。大学は学内で結果を共有し、改善のために活用することになる。

WGは2026年夏ごろをめどに議論をまとめる見通しで、文科省による具体的な法令化に移る。新たな評価制度は2030年度から導入される予定だ。

「教育の質」はDPに基づいて評価される。各大学・学部は新制度の下での受審を見据え、「社会や地域のニーズに合っているか」「学修成果を可視化できるものになっているか」という観点から、再度DPを見直す必要があるだろう。