2026.0908

入学前から「学び合う仲間」をつくる高大接続プログラムを始動―四條畷学園大学看護学部

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3行でわかるこの記事のポイント

● 年内入試入学者の学習習慣未定着への危機感から、入学前教育を刷新
● スクーリングを通じて学生同士の関係構築と学び合いを促進
● 主体的な学習への転換と早期離脱防止につながる成果

入試の多様化が進むなか、多くの大学で課題となっているのが、年内入試入学者の学習習慣の未定着だ。四條畷学園大学看護学部でも、近年、年内入試入学者の目的意識や学習姿勢の変化に課題を感じていた。そこで2026年度入学者から、従来のリメディアル型の入学前教育を抜本的に見直し、学問系統別入学前教育プログラムと入学前スクーリングを新たに導入。入学前から主体的な学びの促進や学生同士の関係構築をめざす高大接続施策に取り組んだ結果、入学前教育受講完了率の向上や学習姿勢にも良い変化が見られた。


深刻化する学習課題と休退学リスクへの危機感

大阪府大東市にキャンパスを構える四條畷学園大学看護学部(入学定員80)は、少人数教育を特徴とし、学生の個性に合わせた手厚い指導を実施。2015年の学部開設以来、4年間のサポートにより、高い看護師国家試験合格率を誇る。

一方で、「近年の入学者は、学習上の課題を抱える学生が一定数顕在化してきている」と、当時、看護学部事務室に所属していた後藤仁氏(学生支援センター在職)は語る。

「開設当初と比較して、全体的に入学者の学力低下を感じていた。特に、学生に対して入学直後にとったアンケートを見ると、総合型選抜や学校推薦型選抜といった年内入試入学者は、自主学習経験の少なさが目立つ。そのなかには、レポート提出の遅れや欠席・遅刻の増加など、大学で求められる主体的な学習姿勢にも課題があるように見られた。また、そういった入学者のなかには、入学後学び合う仲間がつくれず孤立している様子が見受けられることもあり、残念ながら休退学につながってしまうケースもあった」。

こうした状況を受け、看護学部の教職員は「入学後に支援するだけでは限界があるという危機感を抱いていた」とのこと。4年間で一人ひとりの夢の実現を叶えるうえでも、学習習慣の未定着や孤立化の問題を、入学前の段階から支援する必要性が高まっていた。

従来型入学前教育の限界と新たな課題

同学部では開設以来、年内入試入学予定者に対する入学前教育そのものは毎年実施していた。内容は、外部業者の映像教材を中心としたリメディアル型の教育プログラムで、理系科目の基礎学力補填と、学習習慣の維持が目的だ。

しかし、後藤氏は「10年弱、入学前教育を実施していても、本当に目的の達成につながっているのかが見えにくかった。また、最近では、受講完了率が90%に届かず、2025年度入学者では、86%と最後まで入学前教育をやりきることができない層が一定数いることも課題だった」と話す。

教材自体の悩み以外にも「入学前教育を委託する外部業者からは、受講状況に関するデータが入学後一定期間経過してから提供されるため、入学者支援に活用しづらい」という、初期指導との接続についても問題意識を抱えていた。

単に教材を提供して取り組ませるだけではなく、実施効果を把握し、入学後の指導にどうつなげるか。2026年度入学者に対して、この視点から入学前教育の見直しが始まった。

学び合いを育む仕組みと教材・受講データへの期待が導入の決め手

新たに教材を選定するなかで同学部が重視したのは、「入学前教育を一人で自己完結させるのではなく、学生同士での学び合いの機会を提供し、学生間で取り組み促進を行っていく仕組み」だ。

後藤氏は「入学後も含めて、一人で学習を継続していくことが難しい学生もいる。だからこそ、仲間と支え合いながら国家試験の受験を見据えて4年間学び続けることは非常に重要になる。入学前から学生同士の相互支援の土台をつくりたいと考えていた。その考えに共感し、企画段階から連携してくれる教育事業者の入学前教材を採用した」と話す。

新たな教材は、「看護・医療系」という学問系統別のプログラムになっており、看護現場をイメージしながら基礎学力を学び直せる構成だ。「『なぜ看護師をめざすのか』という目的意識が十分に整理されないまま入学する学生もおり、入学後に理想と現実のギャップを感じてしまうケースもあった。この教材を活用して、入学者が仲間と看護師をめざす動機を再確認する機会になると考えた」と後藤氏。

また、教材内容に加え、リアルタイムで受講状況を把握できるシステムや、教育事業者による結果報告のスピードと要注意学生の特定支援は、学部長より「早期の休退学を防ぐことができる」と期待された。

学びのスタートを支える伴走型の高大接続プログラム

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2026年度入学者から、入学前教育を委託する教育事業者と連携して、高大接続プログラムを実施した。

プログラムの受講申し込み者は、教材による自宅学習と、教材と連動した計2回のスクーリングへ参加する。案内対象者には、これまでと変わらず、入学予定者に受講費用を負担してもらうかたちで、専願入試層には「受講必須」、併願入試層には「受講推奨」で受講案内書を送付。学部長からのメッセージも同封して、教材とスクーリングを組み合わせた高大接続プログラムとして案内した結果、受講申し込み率は75%から93%へ上昇した。

詳細は以下の通り。

初回スクーリング(1月下旬)では、その場で教材一式を受講生に配付。受講方法の説明だけでなく、初回ログイン手順の確認や課題への取り組みまで全員で実施した。受講方法が分からず学習が止まってしまうことを防ぐとともに、入学前教育の重要性を共有した。

自己紹介やアイスブレイクのほかに、「大学進学後に頑張りたいこと」「入学前教育で頑張りたいこと」を宣言し合い、目標や将来像についてグループワークを実施。さらに近くの病院を調べるワークを教材に書き込みながら、看護職への理解を深めていった。

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2回目のスクーリング(3月上旬)では、全員が教材にしっかり取り組んだ上で参加することを前提として、教材に取り組んだ気づきを共有した。

より入学後の自分の姿や目標をもてた状態をめざすために、在学生との交流も実施。在学生は、入学予定者にとって身近な大学1年生で、参加者と同じく指定校推薦合格者、内部進学者に登壇してもらった。実際に履修している授業や大学生活について話を聞きながら、シラバスを活用して入学後の学びを具体的にイメージできる機会を設けた。

スクーリング当日の様子を受けて、教職員からは、「入学前の段階で学生の学習姿勢や人間関係の様子がよく分かった」「学生同士の関係づくりが期待通り進んだ」といった評価の声が上がった。

学びへの主体性が向上し、休退学防止にも成果

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入学者の高大接続プログラムの満足度は高く、受講前後のアンケートでは、「大学でどんなことを学ぶのかイメージがわいている」のポイントが、受講前70.8%から受講後100.0%に上昇。受講後の気づきとしても、「看護師に必要なのは病気の知識だけではなく、計算やコミュニケーションも重要だと分かった」「看護師をめざす理由や将来の目標を改めて整理できた」「これから看護学生として勉強をコツコツ励み、分からないところはしっかり復習をして行きたい」といった声が寄せられている。

また「大学の学びに向けて計画を立てて学習することができている」のポイントが、受講前27.7%から受講後78.0%に上昇した。これまで課題であった入学前教育受講完了率も92.3%と、9割を超える水準となった。

入学後も、高大接続プログラムの受講者には、良い傾向が見られているとのこと。「今年度から新たに正課外で生物のリメディアル教育講座を開講したが、そこに高大接続プログラムに参加していた学生が、『不安だから参加しておこうよ』と友人同士で声を掛け合いながら学習機会に参加する姿が見られている。自律的な学習習慣に対する課題がある本学の学生にとっては、大きな前進である」と後藤氏。

入学前に形成された関係性は、入学後の学び合いにもつながっている。結果として、大学1年生前期時点では、孤立を理由とする休退学や学習不振による離脱は確認されていない。

入学前教育データを活用し、学生支援と教学マネジメントへ展開

受講データが入学後の初期指導に接続されないという問題も解消しつつある。

2026年度より、入学前教材の課題提出状況や学習時間、取り組み姿勢のデータは、アセスメントテストであるGPS-Academicや出席状況などとあわせて学生理解に活用されている。例えば、アドバイザー教員が行う、ゴールデンウィーク明けの入学者との個別面談でも、これらのデータを積極的に活用してコミュニケーションをとるように促しているとのこと。

教育事業者から入学前教育の受講結果報告を経て、次年度の改善点を後藤氏はこう語る。「特に『締め切り直前に課題を提出する』『課題提出の督促後に動く』といった傾向は、入学後の学習行動とも相関している可能性が高い。次年度は、課題提出だけでなく、提出期日を遵守することの重要性についても、入学前から働きかけていきたい」。単なる教材の受講ではなく、入学後支援へとデータを接続し、改善する仕組みづくりが進められている。

学生支援センターでIRも担当する後藤氏は「入学前教育は、高校の『教えられる教育』から大学の『学ぶ教育』への転換期だからこそ、学問への導入を効果的に実施できるか、学生自身が主体的に学習するきっかけを掴むための仕組みづくりを構築できるかが重要だ」と語る。学習行動データが蓄積されれば、個別支援だけでなく、学年・学科単位での教育改善にも活用できる。将来的には高大接続プログラムの全学展開を視野に入れ、GPS-Academicや学習データを組み合わせながら、学生の成長を可視化する教学マネジメントの実現を構想している。さらに、入学前教育から初年次教育、国家試験対策、キャリア支援までをつなぎ、学生が安心して学び続けられる環境づくりを進めたい考えだ。

入学前の学力補填にとどまらず、学び続ける姿勢や仲間とのつながりを育てる。そして、その過程をデータで捉えながら次の支援につなげる。四條畷学園大学看護学部の取り組みは、高大接続の新たな可能性を示しているといえるだろう。

(文責・及川愛)

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