2026.0615

「新たな評価」の案がまとまる―2030年導入に向け具体的な制度設計へ

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3行でわかるこの記事のポイント

●「学部単位」の学修成果に基づき教育の質を4段階で評価
●1学部でも基準未達なら大学全体の評価が「要是正」となり再受審へ
●学位分野ごとに担当する評価員の確保が課題

認証評価制度の抜本的見直しによる「新たな評価」の案がこのほど、まとまった。現行制度は導入から20年余りを経て、「学修成果に基づく教育の質の可視化・向上」という理念の下、その役割と仕組みが大きく変わる。文部科学省は2030年度の新制度導入をめざし、具体的な設計に入る。



🔗「教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ」議論のまとめ
◆検討の途中経過を解説した記事
🔗認証評価制度の改革案(前編) 学部ごとの「教育の質」を4段階で評価
🔗認証評価制度の改革案(後編) 情報基盤を導入しデータ入力や情報公表を一元管理
*図表等は文科省の公表資料から引用

学生を成長させている地方大学にも光を当てる評価に

文科省は、中央教育審議会大学分科会の「教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ」(以下、「WG」)の🔗「議論のまとめ」を公表した。

認証評価制度は2004年の導入以来、大学の自己点検・評価、内部質保証の体制整備を前進させる一方で、「評価結果が社会にとって分かりにくい」「インセンティブがない中で負担が大きく、大学・評価機関双方に『徒労感』がある」「学修成果の向上、カリキュラム改善につながっていない」といった課題が指摘されてきた。

WGには、今の認証評価が「各大学がどのような教育を行い、学生がどれだけ成長しているか」という社会の関心に応えておらず、受験生の大学選びにも活用されていないとの問題意識がある。「議論のまとめ」には「全国的な知名度は高くないが、地域の社会基盤を支えるための教育に取り組み、学生の成長を促している地方の高等教育機関がある」という趣旨の一文があり、このような大学に光を当てる評価にしたいとの考えが議論の前提になっている。

教育成果の分かりやすい公表、受審負担軽減などをめざし議論

こうした課題や社会的要請をふまえ、WGは「新たな評価」について
◆  教育成果をデータに基づいて可視化し、社会に分かりやすい形で公表する
◆  最低限の「質保証」にとどまらず、大学に「質向上」を促すものにする
◆  評価項目の精選とデータベースの活用等によって、受審負担を軽減する
という方向性を打ち出した。

新たな評価制度では、次のような手法や仕組みでその実現を図る。
・大学全体の評価に加え、学部単位の「教育の質」を4段階で評価
・大学全体の評価と学部の評価を総合的に担う「総合評価機関」のほかに、特定の分野を専門的に評価する「特定分野評価機関」を設ける。
・大学によるデータ入力機能、データ閲覧・評価支援機能、データ公表機能を一元的に備えたデータプラットフォームを新設
・評価結果は公表内容とフォーマットを統一し、検索・比較できるようデータプラットフォームで一元的に公表
・評価項目の厳選、既存データの活用、データプラットフォームの整備、実地調査の簡素化などによって負担を軽減
・評価サイクルは現行の7年から6年に変更

学部単位の「質保証」はDPの公表等に関する水準達成を確認

特に高い注目が集まる「評価対象」「評価の視点」について、詳しく見ていく。

「新たな評価」は、「大学全体の評価」と「学部単位の評価」の二層構造になる。
大学全体の評価では、機関全体として内部質保証の責任を果たすための基準を満たしているかを判断。基準を満たす場合は「適合」とする。満たさない場合は「要是正」とし、学部単位の評価には進まない。「不適合」ではなく「要是正」としたのは、機関自らが是正しなければならないことを強調するためだ。

学部単位の評価は、ディプロマ・ポリシー(DP)を軸にした「教育の質」に特化。「養成する人材像とDPの策定・公表」「学修成果の把握と評価」などに関する15の評価項目で法令等が定める水準に達しているか確認する「質保証」と、学修成果の達成状況を確認する「質向上」の両面から評価する。

「質保証」で一つでも水準を満たさない項目がある学部は「要是正」となる。「要是正」の学部が一つでもあると全学としての内部質保証がなされていないと見なされ、大学全体の評価は「適合」ではなく「要是正」になる。

星3つと星2つは「学修成果が継続的・組織的なものか」等の違い

「質保証」の水準を満たす学部については「質向上」の視点から、「学生の成長につながる優れた取り組みをしているか」「その取り組みを通じて教育成果を上げているか」などを根拠資料に基づいて確認。
教育成果については、科目試験やアセスメントテストなどの直接評価、学生自身の成長実感などの間接評価、卒業生や就職先への調査を通じて社会での活躍を示すデータなど、多面的な可視化が求められる。間接評価には文科省が実施する全国学生調査も活用される。

「教育の質」の評価結果は、「1つ星(★)」「2つ星(★★)」などわかりやすい標語で示す。「最低基準の充足」だけでなく、「優れた取り組み」や「高い教育成果」を評価し、大学間・学部間の違いを可視化するわけだ。

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学生の成長につながる優れた取り組みを通じて「高い教育成果を挙げている」3つ星と、「高い教育成果が期待される」2つ星は、具体的にどこで判断が分かれるのか。WGでも繰り返し議論され、最終的に3つ星の要件は「社会的・学術的に期待されている水準をDPに掲げ、高い教育成果を挙げている」「DP達成に向けて入学時から大きく成長に導いている」「教育成果が単年度や個別の教職員の取り組みに依存するものではなく、継続的・組織的なものである」と説明されている。

文科省は、教育の質で高い評価を得た大学に対しては、補助金など資源配分のインセンティブを設ける。

「要是正」で改善の見通しがない大学には文科省が厳格な措置

一方、文科省は「要是正」の大学に対し、速やかに改善を図ったうえで6年を待つことなく早期に再受審するよう促す。その場合でも、2つ星や3つ星の評価を受けた学部はそれをアピールしても問題ない。次の定期受審の時期は再受審を起点にするのではなく、「要是正」とされた当初の受審から6年以内となる。

文科省は「要是正」の大学から改善状況の報告を受け、取り組みが不十分だったり改善の見通しがなかったりする場合は厳格に措置する。法令違反があった大学に対する勧告・変更命令等の段階的措置を定めた学校教育法15条に基づく対応も視野に入れる。

教学マネジメント指針は改定へ

「新たな評価」の具体的な制度設計においては、①段階別評価の基準の具体化、②評価結果に基づく資源配分や「要是正」への対応、③評価機関のあり方と評価員の確保、④重複感のある評価制度の整理-などが検討課題となる。
特に、教育の質をどのように評価して比較可能な形で示すかは、制度の実効性を左右するポイントとなる。自己点検・評価の段階からの拠り所となる🔗教学マネジメント指針、🔗「3つのポリシー」の策定・運用ガイドラインは、新制度のスタートまでに改定される方向だ。

学部単位の評価は、設置認可で用いられる21の学位分野ごとに、当該分野の大学教員によるピア・レビューを基本とし、学際系学部については授与する学位に対応する複数分野の評価員をあてる。運用には多数の評価員が必要となり、十分な人数と質を確保できるのか、現在の評価機関を中心に不安視する声が多い。

評価の効率化と負担軽減の観点から、「新たな評価」の導入に合わせて、機関別認証評価と分野別認証評価の統合、国立大学法人評価における現況分析との重複解消が図られる。

自学の教育の価値を社会に示す仕組みとしての評価へ

「新たな評価」の検討を通して打ち出された大学へのメッセージは、評価の重心を「制度適合の確認」から「教育の質の向上」に移すことだ。大学にとっては、DPの実質化、学修成果の可視化、IRによるデータ活用といった取り組みが、評価対応にとどまらず経営・教学の中核になることを意味する。

認証評価は、外部からのチェックという位置づけを超え、大学が自らの教育の価値を問い直し、社会に示すための仕組みへと変わろうとしている。新制度が実際にその役割を果たせるかどうかは、各大学の向き合い方と活用姿勢にかかっていると言えよう。