2021.0315

2021年度、私学助成でデータサイエンス教育の取り組みを支援

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3行でわかるこの記事のポイント

●「先導的」「他大学への普及促進」「準備段階」の3階層を想定
●プログラム導入に向けたワークショップやFDへの参加も対象に
●一般補助の「教育の質の指標」による増減率は-6%~+6%に引き上げ

文部科学省は、大学におけるデータサイエンス教育推進の一環として、2021年度から私学助成による支援に力を入れる。データサイエンス教育の導入を目的とするワークショップ等への参加やモデルカリキュラム策定など、さまざまなレベルの取り組みに対し、補助金を上乗せする。次年度の私学助成の全体概要とあわせて解説する。

*2019年度の私学助成に関する参考記事
私学助成配分ルールの変更①一般補助 定員割れによる減額をさらに強化
私学助成配分ルールの変更②特別補助 経営悪化×定員割れで不交付も
私学助成配分ルールの変更③改革総合支援事業 IRをさらに重視


●改革総合支援事業ではデータサイエンス教育関連の評価項目を見直し

 2021年度の私立大学等経常費補助の予算(案)は、前年から2億円減の2975億円。一般補助は13億円増の2756億円、特別補助は15億円減の219億円で、特別補助から一般補助へのシフトという近年の方針が踏襲された。
 特別補助の配分で注目されるのが、新たに7億円の枠を設けたデータサイエンス教育に対する支援だ。政府のAI戦略実現に向けた「文理を問わず、全ての学生がリテラシーレベルの数理・データサイエンス・AIを習得できるようにする」という方針に基づき、私立大学にデータサイエンス教育の取り組みを促す。国立大学に対しては、2019年度からデータサイエンス教育の全国展開を図るための予算(2021年度は10 億円)が措置されていた。
 私立大学に対する特別補助では、①モデルカリキュラムの策定や教材開発、実データを活用した実践的教育など、先進的に取り組む大学、②データサイエンス教育担当教員を増やすためのワークショップやFD活動の実施など、他の私立大学への普及・展開を図る大学、③自学でのデータサイエンス教育導入に向けてワークショップやFD活動に参加する大学-の3つのレベルそれぞれに該当する取り組みごとに、補助金を加算する。
 データサイエンス教育を構想・担当できる教員が私立大学に少ない実情をふまえ、裾野を広げるためのインセンティブとして②③を支援する一方で、先導的な取り組みを増やしていくための①も設定した。
 これに伴い、2021年度の私立大学等改革総合支援事業では、データサイエンス教育に関する評価項目を一部、または全て削る方向で検討されている。同事業の評価項目で、他に大きな変更はない見通しだ。

*参考記事
早稲田大学が次年度、データサイエンス教育で独自の認定制度をスタート
外部リソースを活用し1年次向けデータサイエンス教育を開始―香川大学
全ての大学生にデータサイエンス教育を実施できる環境の整備へ―文科省
データサイエンス教育の実践例紹介~ベネッセがセミナー開催

●ポストコロナ時代を見据えたハイブリッド型授業も支援

 このほか特別補助では新たに、新型コロナウィルス感染症対策の支援(11億円)も行う。消毒やパーティション設置など一般的な対策向けに8億円ほどを想定。残り約3億円で、経済的理由により遠隔授業の受講が困難な学生に対する機器の貸し出しや通信費の補助などの取り組みを支援する。「コロナ禍をふまえた『新たな日常』に向けた教育スタイルに挑戦する取り組みの支援」として、対面式の授業でオンライン受講のオプションを提供する取り組みなども支援対象とすることで、ポストコロナ時代を見据えた柔軟な教育システムの構築を促す。
 コロナ禍によって家計が急変した学生に対する学費減免等も、引き続き特別補助で支援するという。

●「教育の質の指標」は評価項目を1つ追加程度の変更か

 私立大学等経常費補助の一般補助については2021年度、「教育の質にかかる客観的指標」の増減率を-5%~+5%から-6%~+6%に引き上げる。教育の質保証に積極的な大学には補助金を手厚く配分し、そうでない大学は減らすという「メリハリ」をさらに強化する。就職率を大学教育のアウトカム指標として位置づけている部分を含め、評価項目は大きく変わらず、1項目追加程度になる見通しだ。
 収容定員充足率に基づく一般補助の削減率は最大50%となっており、文科省はこれ以上の引き上げには慎重な姿勢だ。財政資源の効率的配分を迫る財務省に対しては今後も、教育の質の指標に基づく増減率の見直しで交渉していくと予想される。各大学は、補助金の削減を回避し、上乗せを図るうえでも全学的な教学マネジメントや情報公開に積極的に取り組む必要がある。