2020.0109

私学助成配分ルールの変更②特別補助 経営悪化×定員割れで不交付も

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3行でわかるこの記事のポイント

●資産<負債、3年連続赤字、収容定員が3年連続80%割れで不交付に
●「教育の質」の評価によって25~75%の減額
●社会人や留学生の受け入れは環境整備の取り組みを評価

「教育の質」の指標や私立大学等改革総合支援事業を含む2019年度の私学助成配分ルールが固まり、文部科学省等は各大学から提出された調査票等に基づいて配分調整の作業を進めている。①定員割れによる減額が一般補助と特別補助の両方で強化される、②教学マネジメントの取り組みに関する「教育の質」の評価が一般補助、特別補助の両方に影響を及ぼすなど、「メリハリある配分」という方針の下、大学にとっては補助金獲得に向けて従来以上の努力が必要になりそうだ。配分ルール変更のポイントを3回に分けて解説するシリーズ、2回目のテーマは特別補助だ。
*「私学助成配分ルールの変更① 一般補助 定員割れによる減額をさらに強化」はこちら


●定員割れは二重、三重にのしかかる

 前回、一般補助で収容定員未充足による減額率が強化されたことを説明したが、定員割れは特別補助にも影響してくる。財務省と財政審議会が「税金が投入される私学助成で経営困難大学の延命をすべきではない」「特別な取り組みをしていない大学にも特別補助が多く配られている」とここ数年、特に特別補助の配分のあり方を問題視しており、今回、大幅な見直しが加えられた。

1. 基本的な配分ルール
 2018年度は、①直近の収容定員充足率が75%未満、②当該年度を含む過去5カ年の収容定員充足率が連続して前年度割れ、③過去5カ年の各年度の事業活動収入が事業活動支出を下回る、④「教育の質の指標」による増減率がマイナス―の全てに該当する場合、一定割合を減額するというルールだった。しかし、結果的にこれが適用される大学はゼロで、特別補助の配分是正につながっていないとの指摘もあった。
 2020年度に始まる高等教育の新修学支援制度における機関要件設定もふまえ今回、特別補助の配分方法を抜本的に見直した。経営状態を厳格にチェックし、学生確保、教学改善の努力がなされているかも一層、重視することになった。
 その結果、2019年度は以下の通り変更される。

(1)経営指標等
 ①直近の運用資産-外部負債がマイナス、②経常収支差額が直近3カ年連続でマイナス、③直近3カ年連続で収容定員充足率が80%未満―の全てに該当する場合、特別補助を交付しない。これらは新修学支援制度で除外される大学の基準と同じで、①と②のみに該当する場合も50%減額する。
(2)「教育の質」の指標
 「教育の質」の指標による一般補助の増減率が-3%の場合、特別補助も25%減額、-4%で50%減額、-5%で75%減額となる。
 教育の質が一般補助と特別補助にダブルで影響するため、教学マネジメントへの取り組みは大学の必須課題になる。
(3)収容定員充足率
 収容定員充足率が90%未満の場合は特別補助を下表の通り減額する。toku_kyoikunoshitsu.png

●社会人の受け入れで「学生数×単価」を廃止

2. 社会人の受け入れ
 2018年度までは社会人学生の「学生数×単価」、受け入れ環境整備についても「取り組み数×単価」で特別補助を配分していた。文科省はこれらについて「取り組みにかかわらず結果として学生が集まっている大学に対する支援は適切か」「支援対象の取り組みの中には、大学の間ですでに一般化しているものもある」といったことを検討。
 その結果、2019年度は受け入れ人数に応じた支援を廃止し、支援対象とする内容を精査したうえで環境整備の取り組みを評価する方式にした。具体的には①「社会人学生の再雇用支援」「実務家教員の登用等、産学が緊密に連携した実践的なコース等の設定」等のうち4つ以上を実施し、一定数以上の受け入れを行っている、②キャリアアップ、キャリアチェンジにつながった修了者数の公表―の両方を満たしている場合、①の取り組み数に応じた支援を行う。

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3. 国際化への取り組み
 2018年度は留学生や海外からの教員の受け入れ、学生や教員の海外派遣について「人数×単価」、環境整備の「取り組み数×単価」で支援していた。文科省は前述した社会人の受け入れと同様の問題を検討、留学生の在籍管理の問題もふまえて見直しを行った。
 その結果、2019年度は①卒業生の進路状況の公表、②留学生の出欠状況や成績等の把握、③退学者や所在不明者の定期報告などをすべて行ったうえで、④「シラバスの外国語化・公表」「日本人学生の海外留学必修化」等の中から6項目以上を実施して一定数以上を受け入れている場合に支援することになった。入り口のハードルが上がる一方で優秀な学生を受け入れている場合には加算されるなど、「メリハリある配分の具体化」(文科省の担当者)となった。

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