2026.0825

進路多様校の進路指導 都立蒲田高校<下>
知りたいのは"うまくいかなかった時"の支援体制

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3行でわかるこの記事のポイント

●送り出す側は「活躍する先輩」になれなかった場合も想定
●進路指導では専門学校間の比較を促す工夫も
●高校訪問は歓迎するが、目的に応じた適切な時期に

進路多様校の進路指導や生徒の進路意識、専門学校の募集広報に対する要望について、東京都立蒲田高校の進路指導部主任・淺川貴広教諭に行ったインタビューの後編をお届けする。生徒の自立を応援するまなざしは、送り出した後も変わらず一人ひとりに向けられている。
🔗進路多様校の進路指導 都立蒲田高校<上> めざす職業まで複数のルートがある中、「なぜ専門学校?」と問いかけ視野を広げさせる


先輩動画はその学校に興味を持たせるきっかけ程度に

大学や専門学校がSNSなどで流す「キラキラ輝いて活躍する先輩」の動画には多くの生徒が興味を持つが、私はその状況に懸念を覚える。
この種の動画は、その学校に興味を持たせるための導入程度にとどめてほしい。ホームページやパンフレットでさまざまな情報を発信して動画からそこにつなげば、詳しく知るために頑張って文章を読もうというきっかけになると思う。

「活躍する先輩」の動画の多さを懸念するのは、生徒はそれを見て「自分も同じようになれる」と思い込み、安易な選択をしてしまいがちだから。実際にその学校でうまくいき輝いている学生もいるだろうが、全員がそうなれるわけではないはず。

エンタメ系など才能が求められる分野の専門学校だと、プロとしてその道に進めない学生も多いと思う。そんな学生に対して学校がどんな支援、例えば違う道に進むための助言や手助けをしてくれるのか、そこを知りたい。
あるいは、その学校になじめず通えなくなりそうな学生をどうサポートするのか。

つまり、「うまくいっている例」だけでなく「うまくいかなかった例」を、そして「どんなタイプの学生がその学校でうまくいかなくなりがちなのか」を知りたい。学校側にとって出しづらい情報かもしれないが、可能な範囲内でリアルなケースを教えてほしい。

手厚い支援に慣れた生徒が求めるのは「安心できる情報」

本校はさほど規模が大きくないし、エンカレッジスクールということもあって生徒に対する支援体制はかなり充実している。社会全体で不登校の生徒が増える中、小中学校でも支援が手厚くなっている。
そんな環境で学んできた生徒にとって、進学先の支援体制が弱いと、ギャップになじめず通えなくなってしまうということは往々にしてある。

生徒や保護者が安心して進路選択をするため、そして私たちが安心して生徒を送り出すためには支援体制は重要な情報だ。
だから、私は高校訪問で会う専門学校の方には必ずその点を確認する。専門学校に進んだ卒業生に会った時も、「ちゃんと学校に通えているか」「困った時に学校はどんなサポートをしてくれるか」聞くことにしている。

専門学校に対し、高校までのような手取り足取りの手厚さを求めるわけではないが、社会で自立して生きていけるよう学習を継続するためのサポートは必要だと思う。
本校のような特性がある高校は特に、進学先との間で「3 年間こういう指導をしてきた」「こういう課題がある生徒だ」という引き継ぎとしての情報共有など、学び続けてもらうための連携ができればと思う。

招いた2校にそれぞれの強みのアピールを依頼

生徒は、気に入った学校があると他の学校には目を向けなくなるので、進路指導では比べることを促すようにしている。ある年の1 ・2 年生合同の進路ガイダンスでは、同じ分野の専門学校を2校招いてそれぞれの強みや特色をアピールしてもらった。
「比べなさい」と言うだけでは何をどう比べたらいいかわからないので、「通学の便や学費など、自分にとって重要な要素を明確にしたうえで、そこについて比べよう」とアドバイスする。
🔗他の専門学校との比較情報の出し方等、高校への情報発信に関するご相談

専門学校などによる高校訪問は情報収集の貴重な機会であり、できる限り対応して話を聞くようにしている。ただ、忙しい時期にアポなしで来られ、物理的に難しく断らざるを得ないこともある。
夏休み中に3年生向けの情報提供で訪問を受けても、その分野の志望校はほぼ決まっていたりするので、目的に応じた最適な時期を選んでほしい。 
2年生向けの情報であれば、進路の検討が本格化する2学期の後半から 3 学期にかけて提供してもらえると生徒にとっても有益なものになる。

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こちらの不安を裏切り、輝く卒業生の姿に喜びを感じる

専門学校に進んだ卒業生が文化祭に来ることは多いし、平日ふらっと遊びに来るケースもある。その専門分野に興味を持つ生徒が資格や就職について、先輩に熱心に質問する様子も見られる。

学校生活が充実していると話す卒業生とそうではない卒業生などさまざまだが、進路選択の時にどれだけ真剣に考えたかによって学校満足度が違うように感じる。「早く決めたい」「友達が行くから自分も」という選択では、やはり通い続けること自体難しくなる。

私たちは進路指導で、どうしても生徒にとってのリスクばかりを考えてしまいがち。才能がものをいう分野を希望する生徒については、将来大丈夫だろうかと心配で別の選択肢を示すこともある。そんな時は内心、「この子の可能性を潰しているのでは?」と悩んだりもする。

自分の意思を貫いてその学校に進んだ卒業生が、まさに「キラキラした学生」になって充実した学校生活を送っていたり、「今、こういう仕事をしています」と生き生きとした表情で話してくれたりすることも多い。そんな様子に触れると、自分の心配がいい形で裏切られたなと思い、嬉しくなる。

日々、マニュアルにない対応を迫られることばかりだが、生徒一人ひとりを自立に向けて応援するこの仕事は、自分にとって天職なんだろうと思う。

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文・真境名妙子(事業企画部)


蒲田高校の進路指導に関する淺川教諭のお話を柱に、8月に開催した進研アドの専門学校向け募集広報セミナーは、大きな反響をいただきました。
同教諭のお話は他の高校教員のお話と合わせ、9月のセミナーでもご紹介します。
ぜひご参加ください。
🔗専門学校セミナーの申し込み