2022.0307

基礎学力と学習習慣の定着を目的に入学前教育を実施-聖徳大学

入学前教育・初年次教育

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3行でわかるこの記事のポイント

●看護学部は今年度、外部プログラムの活用に切り替え
●年内入試による入学者が対象
●受講データをクラス編成に活用し、学力レベルの偏りをなくす

聖徳大学の看護学部と人間栄養学部は2021年度に入学前教育を刷新した。身近な題材を通して専門分野に触れながら基礎知識を修得し、現場の課題にも触れる教材を活用。入学直後から学生の意欲の向上が感じられたという看護学部の事例を中心に紹介する。


●高大接続にも配慮し外部プログラムを採用

 聖徳大学は、初年次教育やキャリア教育を包含する全学共通教育科目「聖徳教育」を4年間設けている。1年次には大学での学び方やレポートの書き方を指導し、高校での学びからのスムーズな移行を図る。年内入試による入学者のケアには特に力を入れ、全ての学部で入学前教育を実施している。
 看護学部は2014年度の学部開設と同時に入学前教育を導入。基礎学力の底上げと、こつこつ勉強する習慣を身につけさせることが目的だ。それによって入学後の指導を円滑にして教育成果を最大化したいという考えがある。教員が作成する教材を使い、専門科目を学ぶうえで必要となる生物・化学などの理系科目の復習を中心にした。しかし、学力試験を経ていない年内入試入学者に学習習慣を定着させるのは容易ではなく、指導に負担感もあったという。
 近年は自前の入学前課題の作成について再考を迫られていた。教員の負担が大きいうえに、高校の指導内容に合わせることが難しく高大接続の観点からも問題を感じていたという。そこで、2021年度入学者から外部プログラムの活用に切り替えた。費用は大学が負担している。

●身近な題材で専門分野に関わる科目を復習

 新たに導入したプログラムでは、学問系統別のラインナップから「看護医療系」の教材を選択。体重と肥満度を題材にして「割合」を学ぶなど、医療に関連づけた身近な題材で生物、化学、計算基礎等を復習する。教材には医療現場にかかわる時事問題も反映され、専門分野に対する関心を高めながら知識を増やし、入学後に学ぶ内容もイメージできる。
 水戸美津子学部長は「高校で学んだ内容を短期間でまんべんなく復習させるのは難しい。入学までの間に単元ごとにめりはりをつけて必須のポイントを学べる教材は、自前ではなかなか作れない」と話す。
 刷新した入学前教育の手応えは、入学直後のイベントで早速感じられた。グループワーク等を通して大学での学びへの転換を促し、卒業時の自分を思い描いてもらう初年次教育研修「Freshmen Camp」で、めざす看護師像を具体的に語る学生が例年に比べて目立ったという。「入学前教育を通して医療現場の課題に触れ、自分が取り組みたいことがイメージしやすくなったのでは」と水戸学部長。
 「Freshmen Camp」で感じられた意欲の高さが、学習習慣の定着と基礎学力の向上につながることを教員らは期待している。

●入学前課題の得点率を要フォロー学生の特定にも活用

 アンケートや課題の取り組み状況のデータを指導に活用できるのも、この入学前教育プログラムの特徴だ。看護学部では教務ワーキングチームが課題の得点率を中心とするデータを分析し、教員に共有。学生ごとの得点率のデータは入学後のクラス編成に活用された。それまで、年内入試の学生は成績に関するデータがないため、どうしてもクラス編成に偏りが出て指導が難しくなりがちだった。学力レベルのバランスに配慮して編成した2021年度の1年次のクラスは、その後のGPAによる検証でも成績のばらつきが小さかったという。
 入学前課題の得点率が基準以下の学生はフォロー対象とし、入学直後に個別面談を実施。成績や課題提出状況に問題があれば担任から声をかけることにした。 
 水戸学部長は「看護学部が掲げる『自立・自律する力を身につけ社会で活躍できる人材』を育成する最初の一歩として入学前教育を位置づけ、学生の成長を支援するための活用をさらに検討していきたい」と話す。


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