教科学力試験を排し、IT技術と情熱を評価する特待生入試で"とがった人材"を発掘-岩崎学園情報科学専門学校
専門学校
2026.0820
専門学校
3行でわかるこの記事のポイント
●プログラミング実技試験と面接で選抜し、最大146万円の経済支援
●特別プログラムへの参加権など、教育支援とセットで育成を図る
●アメリカのIT企業創業者らをモデルに「バランス重視」から脱却
生成AIの進化やDXの加速によって、IT人材にはこれまで以上に高度なスキルが求められるようになっている。そうした中、学校法人岩崎学園の情報科学専門学校は2027年度の入学者から、実技重視の新たな入試「IT技術特待生入学」を導入した。筆記試験やプレゼンテーションを課さずにプログラミング技術を評価し、合格者には経済支援と特別な教育支援を提供する。"とがった人材"を受け入れて力を伸ばし、世界のIT業界をリードするエンジニアに育て上げようという野心的な試みだ。
1927年創立の🔗学校法人岩崎学園は、横浜を拠点にIT、デザイン、映像、ゲーム、音楽、ファッション、美容、ブライダル、看護、リハビリ、スポーツ、保育などの分野の専門学校のほか、情報セキュリティ大学院大学を運営。幼児教育、生涯教育、文化事業などの教育事業も展開している。
🔗情報科学専門学校は横浜駅近くに立地し、40年以上にわたりIT人材を育ててきた。2029年度には、IT企業の集積するみなとみらいエリアの新キャンパスへの移転を予定。
4年制の情報セキュリティ学科・実践AI科、3年制の先端ITシステム科、2年制の情報処理科・実践IoT科・Web技術科、1年制のITライセンス科のほか、ビジネス科(2年制)も設置。ITの幅広い分野に人材を送り出している。

情報科学専門学校が新たに導入した入試制度🔗「IT技術特待生入学」は、ITライセンス科、ビジネス科を除く各学科で若干名を募集。既卒者も対象だ。
近年は入学者の約6割を3・4年制の学科が占め、この入試も4年制学科への出願が多いと学校側は見込んでいる。
従来の特待生入試では難しかった「突出した技術やものづくりへの情熱を持つ人材の発掘」のための入試だ。対象として、独学で高度なプロダクトを開発するような高校生がイメージされている。
この入試では筆記試験やプレゼンテーションを課さない。高校までの教科学力を含む総合力は求めず、プログラミング技術を測るための実技試験を実施。任意で提出してもらう作品も加点対象にする。
合格者には年間で最大146万円の経済支援を行う。加えて、技術力を伸ばすため、特別プログラムへの優先参加権など、さまざまな教育機会を提供する。

岩崎学園マーケティング・教育事業創造本部の伊藤泰宏本部長は、「IT技術特待生入学」導入の背景を次のように説明する。「アップルやマイクロソフトなど、アメリカの名だたるIT企業の創業者は、すべての能力に秀でていたわけではなく、ITに関するずば抜けた能力によって成功をおさめた。一方で日本では、専門学校も大学も教科学力を含むバランス重視の発想から脱却できず、入試にもそれが反映される。それではとがった人材を見つけることはできない」。
情報科学専門学校の既存の特待生制度のうち、学費の約半分を減免する手厚いものも、プログラマー適性試験と面接に加えて、英語・数学・情報などの中から1つを選ばせて筆記試験を課す。「本当にそれだけでいいのかという問題意識があった」と伊藤本部長は話す。
同氏は大学の総合型選抜や学校推薦型選抜にも言及。「近年は大学でも、特定の分野に突出した力を評価しようという動きが広がっていて、方向としては正しいと思う。ただ、大学は幅広い教養を基礎に据えることが使命でもあり、カリキュラムをそう簡単には組み替えられない。入口だけを変えても、入ってきた学生が伸び悩む構造は残ってしまう」。
一方、情報科学専門学校のカリキュラムについて「高度なITエンジニアというゴールから逆算して組んでいる」と説明。1年次から専門科目に取り組み、4年次まで段階的にステップアップするロードマップになっているわけだ。全科目のシラバスが一元管理され、到達目標と履修順序が科目間で接続。社会のニーズに合わせて毎年、機動的な改定も加えている。
「学生のとがった能力を引き出して世界に送り出すのは、このようなカリキュラムがある専門学校の仕事だと思っている」
情報科学専門学校を7年ほど前に卒業した学生のエピソードも、伊藤本部長らに気づきをもたらした。
その学生は就職者が多い高校の出身で、教科の成績は振るわなかったという。しかし、Web制作やデザインの力はずば抜けて高く、アルバイト先のドラッグストアでは店の広報を任されるなど、活躍していた。
情報科学専門学校にはAO入試で入学、Web技術科でさらにスキルを高めた。大手IT企業の採用試験で役員面接まで進み、「うちに決めてくれるなら、この場で内定を出す」と言われて就職が決まった。
伊藤本部長は「それまでもその企業に就職した卒業生はいるが、役員面接で即決なんて聞いたことがない。驚き、いよいよ入試のあり方を変えねばと思った」と振り返る。
「数学も英語も」と求められることによって開花できずに埋もれている才能を全国から見つけ出し、伸ばすための入試は、こうして生まれた。「大学と違って組織的・機動的に動ける専門学校だからこそできた」と伊藤本部長。
「IT技術特待生入学」の選考概要は以下の通り。
■出願・作品提出(任意)
出願書類の中に学校の調査書も含まれるが、成績は評価対象にしない。コンテストでの受賞作や個人で開発したアプリケーション、ソースコードなどを提出すれば、加点の対象とする。
■選抜試験
プログラミング実技試験ではPython、Java、C言語、Webプログラミングの4言語の中から一つを選択し、学校側が用意するパソコンで120分間、課題に取り組む。
面接では、技術力や取り組み内容、作品へのこだわりをアピールする。
■選考日程
2027年度入試では、以下の通り5回の選抜が予定されている。

6月から始まっているAO入試の合格内定者が「IT技術特待生入学」にチャレンジすることも可能だ。内定者は、同特待生制度志望者を主たる対象として企画されているプログラミング特別公開講座への参加が推奨される。そこで、教員とのコミュニケーションを通して特待生入試受験へのモチベーションを高められ、準備について相談もできる。
IT技術特待生に対しては一律に、1年次学費から86万円の減免とIT活動支援金30万円の給付を実施。さらに学期末審査により、それまでの取り組み内容に応じて最大30万円のIT活動支援特別金を給付。1年次の経済支援は最大146万円となる。
さらに、神奈川県および東京都以外からの入学など、一定の要件を満たす特待生には48万円の「ひとり暮らし支援金」も支給する。
とがった人材を受け入れて経済支援をするだけではなく、次のような教育的特典を通してモチベーションと能力を高める。
■エンジニア教員による個別メンタリング
■上級学年や情報セキュリティ大学院大学の授業を受講する機会の提供
■高度技術サークル「IPFactory」への参加権利の付与
■産学連携プロジェクトへの優先参加権の付与
入試では、制作物をアピールするプレゼンテーションも課さない。「卒業研究発表会などを見ると、技術力が高く一人で制作に没頭する学生は必ずしも人前で話すことが得意でなく、作品についてうまく説明できないことがある」と伊藤本部長。「制作物については、面接で熱く語ってもらえばいい。私たちがそれを存分に引き出す」。
社会に出た後、最低限必要となるプレゼンテーション力は、入学後のチーム制作や産学連携プロジェクト活動を通して段階的に修得してもらえばいいという考え方だ。
高校訪問などの機会に新しい入試制度を紹介し、「教科学力では測れないすごい才能の生徒がいたらぜひ紹介を」と話すと、喜ばれることも少なくないという。伊藤本部長は「一定のニーズは確かにある。マスの広報だけではなく、草の根的な活動で人材を見つけていく入試だ」と話す。
広報活動を通して手応えを感じながら、10月以降の面接で受験生に会うのを楽しみにしている。「面接では思い切り自慢話を聞かせてほしい。親や先生、友達に話してもいつも『いや、そんなこと言われてもわからない』と言われてがっかりしてきたであろう、その思いを私たちがしっかり受け止める。何かにハマっている、ちょっと変わっている、ぶっ飛んでいる―そんな人を歓迎し、出る杭を打たずに伸ばしていくのがこの入試だ」。
特異な才能を見出し、それを伸ばす環境を提供することによって、世界の名だたるIT創業者に並ぶような人材を育てたい。その"野望"の先にあるものを、伊藤本部長はこう話す。「世界で活躍するカリスマエンジニアが『出身校は岩崎学園だ』と言ってくれたら、もうそれだけで最高じゃないですか」
文・真境名妙子(事業企画部)