進路多様校の進路指導 都立蒲田高校<上>
めざす職業まで複数のルートがある中、「なぜ専門学校?」と問いかけ視野を広げさせる
専門学校
2026.0806
専門学校
3行でわかるこの記事のポイント
●進路指導による働きかけで動き出す進路選択
●情報があふれる中、ガイダンスなど"生身の人間"の話が響く
●同じ分野の学校を比較できる情報が欲しい
進路多様校においても大学進学の門戸が広がる中、専門学校はどのような理由・プロセスで選ばれているのか。東京都立蒲田高校の進路指導部主任・淺川貴広教諭に、専門学校の広報に期待することとあわせ、話を聞いた。
🔗東京都立蒲田高校(大田区)は、都が6校を指定している🔗エンカレッジスクールの一つ。エンカレッジスクールとは、小・中学校で能力を十分に発揮できなかった生徒のやる気を育て、励ましながら勉強や学校行事・部活動など、充実した学校生活を支援する全日制の高校だ。
蒲田高校は1学年約150人。6、7割が進学し、その半数前後が専門学校を選ぶ。
今回話を聞いた淺川貴広教諭は教員歴18 年。進路指導部の担当は通算 7 年目で、2026年度から主任を務めている。

同校における進路指導や生徒の進路意識に関する淺川教諭の話は以下の通り。
本校の場合、自発的に進路を考え出す生徒はあまり多くなく、進路指導プログラムによる学校からの働きかけによって検討を始めるのが実情だ。
本校では3 年間を通した進路指導計画を立てる。1回1回の進路行事は言わば「点」としての情報提供であり、時間がたつと内容を忘れてしまう。そうならないよう各回の目的を明確にして流れを考え、点と点がつながり線として内容を定着させる工夫をしている。
こうした考え方の下、次のように目的を設定して進路指導スケジュールを組んでいる。
〈1 年生〉
自己理解を深めることに重きを置く。本校にはさまざまな課題を抱える生徒が多いため、進路を考える前にまず自分と向き合って強みと弱みを自覚し、その先どうしたいのか考えさせる。
進路指導部が実施する進路ガイダンスに加え、都の「社会的・職業的自立支援教育プログラム」でセルフマネジメントやコミュニケーションの力を高める。

〈2 年生〉
職業理解を深めることを目的に、 学期ごとに進路ガイダンスを実施するほか、自立支援教育プログラムも継続する。
進学希望者には、1学期末の三者面談などの機会も使ってオープンキャンパスへの参加を促す。夏休みの宿題として参加レポートを課すこともある。
徒歩や自転車で通学している生徒も多いので、朝のラッシュ時に1 時間かけて電車で通う生活をイメージできるよう実際に体験し、学校の環境や雰囲気も自分で確かめておくことが大切だ。
修学旅行にあたる宿泊体験研修が11 月にあり、それが終わる2 学期後半から進路の検討がいよいよ本格化する。卸売業など、日常生活で直接的な接点がない業界も含めさまざまな職業分野に携わる方を招いて話をしてもらい、職業に対する視野と理解を広げさせる。
専門学校の方から話を聞く機会も設ける。こうしたイベントにおいては、テーマを自分事化できるよう事前課題を出すようにしている。
3 月には 1 年生と合同の進路ガイダンスを実施する。
これらの機会を通して進路の検討を深めてもらい、進学希望であれば大学、短大、専門学校のどれを選ぶのか具体的に考えさせる。
<3年生>
例年1学期に三者面談があり、2026年度は5月に実施した。
専門学校志望者のうち、夏休み前の時点である程度、志望校まで絞りきれている生徒には、最終決定に向けて引き続き情報を集めるよう指導する。
一方、分野だけ決めて志望校をどこにするか決めきれていない生徒には、夏休み中のオープンキャンパスや学校説明会への参加を促す。
自分の進路を自分事として捉えられない生徒が増えていると感じる。面談で、本来、自分で決めるべきことを教員に委ねるような質問をされて驚くことも少なくない。
以前なら3年生のはじめには就職か進学かくらいは決まっていたものだが、近年はそれすらあいまいな生徒が結構いる。就職志望だと思って面談すると「やっぱり進学しようか迷ってるんです」と言われて困惑したり。
本校では、学力に応じて専門学校と大学のどちらかを勧めるような指導はしておらず、本人の希望や特性をふまえてアドバイスする。ただ、大学志望の生徒でも、4 年間ドロップアウトせず続けられるのか、経済的に問題ないかといった観点から「専門学校も検討しては?」と助言することはある。
専門学校を志望するのは、就きたい職業がある程度決まっている生徒。専門学校に限らないが、保育や介護など、人と接する職業は中学の職場体験がきっかけで興味を持つケースが多い。
例えば保育士志望の生徒に対し、私たち教員は「実現するためのルートは専門学校だけではなく、大学も短大もあるし、高卒で現場で働いてから保育士試験を受けることもできる」と話す。いろんな選択肢がある中で「なぜ専門学校を選ぶのか」と問いかけ、視野を広げて考えさせる。
多くの生徒は「勉強が苦手だし、大学の学術的な知識ではなく、実践的な知識や能力を早く身につけて現場に出たい」という理由で専門学校を選ぶ。
専門学校から就職に志望変更する場合、経済的な理由によることが多い。国の修学支援制度や学校独自の奨学金など、さまざまな支援制度の情報は届いているが、2年間、3年間の学費に加え通学費用などが大きな負担になる家庭もあり、毎年何人かは就職に変わる。
一方、専門学校志望だった生徒が「職業直結の学びではなく、もう少し幅広く学んで将来の選択肢を広げたい」という理由で大学進学に切り替えるパターンも少なくない。
特に2年生は、大学と専門学校の間で迷いがちだ。私たちもその時点で早く決めなさいという指導はしておらず、迷うのはいいことなので、情報を集めてしっかり考えるよう促す。
多くの専門学校が学費の安さや面倒見の良さをアピールしているし、資格取得率にも大きな差はない。そうなると何を基準にして選んだらいいかわからず、最終的には立地で決めることになったりする。
教員も同様で、進路指導の経験が短いと学校の良し悪しをどう見極めたらいいか分からない。同じ分野の学校を横並びで比較できるような情報があればいいのにと思う。
学費の安さをアピールしている学校でも、入学してみると別途、施設利用料などを徴収され、トータルだとすごく高額になるという例もある。生徒には学費の安さで安易に飛びつかず、よく調べるようにと指導する。
3年生になっても進学か就職か決められない生徒もいる中、この時期に「専門学校志望だが、具体的な学校名はまだ挙げられない」という生徒はめずらしくない。決められない背景には、情報過多の現状があると思う。
オープンキャンパスに参加しなくても、スマホを使えばSNSなどさまざまなツールから手元で情報を得られ、生成 AIが情報の集約までしてくれる。次々に流れて来る情報を受け取ることに終始し、浅い情報が残るだけで、真剣に考えて何かを選んだり決めたりするところまでいかない。
そんな生徒たちでも、ガイダンスで専門学校の方から直接話を聞くと、興味を持ってパンフレットを手に取り自ら調べ始めたりする。ネットの世界の真偽不明な情報に日々さらされていると、生身の人間が語る「うちの学校はこうだよ」「こういうことには気をつける方がいい」といった話は強く響き、内容に興味を覚えるようだ。
オープンキャンパスもそうだが、高校生に対して直接話を届ける広報というのは、この時代だからこそ大切だと思う。
よく言われることだが、近年の高校生は驚くほど長い文章を読めない。学校のパンフレットなどは情報量が多すぎると感じるらしく、情報収集はSNSやショート動画に頼りがちだ。
専門学校や大学のショート動画はどれも上手く作られていてインパクトがあり、興味を引くものが多い。「この学校いいな」と思って何度か閲覧すると、そこの情報だけがポジティブな内容で次々に出てきて、ネガティブな情報や他の学校の情報には目を向けられなくなる。
「キラキラ輝いて活躍する先輩」の動画には多くの生徒が興味を持つが、私はその状況に懸念を覚える。本校の生徒が専門学校を選ぶうえでは、「むしろこういう情報こそ提供してほしい」と考えるものもある。
ー淺川教諭が専門学校に「提供してほしい」と考える情報とは?
ー専門学校は「活躍する先輩動画」をどう生かすべきか?
これらの答えは、
進研アドの無料広報セミナー
「高校教員が『送り出せる』と感じる専門学校の条件とは」
でお届けします。ぜひご参加ください。
🔗セミナー申し込み
※後編は8月下旬に公開予定です。
文・真境名妙子(事業企画部)