2026.0723

「目標」「評価」の確認を繰り返し、成長実感を意欲向上につなげる―東京テクニカルカレッジ

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3行でわかるこの記事のポイント

●校長が入学式で一人ひとりの目標を問い、期末ごとに再確認
●授業の冒頭で10の目標を明示、小テストで達成度を確認
●小テストの結果をはじめ、各種データを授業改善に生かす

学びに対する目的意識が希薄で、意欲の低下が中退リスクにつながる―。学生のこうした傾向は、分野を問わず多くの専門学校に共通し、めざす人材育成を阻む壁になりがちだ。東京テクニカルカレッジは、毎回の授業で目標を明示して達成感を与え、意欲を高める仕組みを組織的に構築。「わからない学生を取り残さない」という意思が、教職員の取り組みを支えている。


知識と技術を修得し、活用できる人材の育成を掲げる

🔗学校法人小山学園は、工業系総合専門学校の🔗東京テクニカルカレッジ(中野区)と、中野区・品川区・世田谷区に校舎がある🔗東京工科自動車大学校の計4校を擁する。

東京テクニカルカレッジは、建築・インテリア、情報、ゲーム、環境・バイオ等の分野の11学科を設置。「専門知識と技術を修得するだけでなく、それらを活用して社会の課題を発見・解決できる人材」の育成をめざしている。

こうした人材像の実現において、学生の基礎学力の低下が壁になったが、問題はそれだけではなかった。白井雅哲校長は次のように説明する。「学力の問題もさることながら、継続力や忍耐力が乏しい学生が増えている。進路も周りに勧められて決め、主体的な選択ではなかったというケースが多い」。
目的意識が希薄だと、成長実感を得にくい。その結果、学習意欲が低下し、中退リスクが高まってしまう。専門知識と技術の修得の手前でつまずいてしまうことになる。

そこで同校では、「自らの成長を実感させながら、知識や技術の修得と活用を促すこと」を課題として設定。学生が学びの目標を常に意識し、それを達成できているか確認し続ける仕組みを整え、主体的な学修姿勢を育てようと考えた。

「何を教えるか」ではなく「何をできるようにするか」を重視

学生の主体性を育てるための柱に据えるのが「TTCコヤマ式教育システム」だ。
2000年から、東京工科自動車大学校と共通で運用している小山学園独自の同システムは、学修成果を可視化しながら、学生の理解度や成長を継続的に確認し、教育改善につなげる仕組みだ。
科目ごとのシラバスには、「何を教えるか」ではなく「学生が何をできるようにするか」という観点で目標を記載。これが、各授業回のコマシラバスに落とされる。
授業のはじめに配られる「授業シート」には、コマシラバスに基づき、その授業で「何を学ぶか」「どこまでできるようになればいいか」という10項目の目標が示される。授業のポイントを事前に理解しておけば、自ずと能動的な受講姿勢になる。

授業の最後には、10項目の目標に対応した小テスト「授業カルテ」を実施。間違いが多い場合は、授業と対で開講される「コマ補習」に参加し、「わかる」「できる」状態をめざす。理解が不十分なまま次に進むことがない仕組みになっているのだ。

一方、教員は「授業カルテ」の結果を授業改善に生かす。小テストの不合格者数や平均点は、授業欠席率など他の指標とともに「授業評価」としてデータ化され、週次の学科長会議で共有される。教員は常に、自分の授業が学生に理解されているか、どこでつまずいているのか把握し、それに基づいて授業を改善するというPDCAが確立されている。
授業改善が個人の責任として委ねられるのではなく、標準化された指標に基づいて組織的になされているのだ。

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入学前教育のデータを学生支援に活用

学生の主体性を育てる取り組みは、入学前から始まる。
同校は自前で実施していた入学前教育を2017年に見直し、外部のプログラムを導入。専門分野の理解を深める教材でモチベーション向上を図る。課題の取り組み状況と合わせ、アンケート結果に基づく学習習慣や学習意欲に関するデータも取得できるようになった。
教職員はそのデータを使って支援が必要になりそうな学生を予想。入学後の観察をふまえて対象を見極め、実際の支援にあたる。

入学式では、校長が学生に「宿題」を与える。「なぜその分野を選んだか」「それを実現するために何をすべきか」という学校生活での目標を書かせ、それを全教職員が共有。一人ひとりを見守り指導するうえでの拠り所とする。

入学後は前述の「TTCコヤマ式教育システム」で、授業単位で「目標の確認」と「評価」を繰り返し、知識と技術の着実な修得を促す。
出欠や授業態度、課題提出状況、テスト結果などのデータを継続的に把握して小さな変化も見逃さず、必要に応じて面談を行うなど早めに対応する。

学生は「自分の理解度の把握がやる気につながる」と評価

同校では4期制を採用し、期末や進級時に在校生ガイダンス(学年集会)を開く。
校長が講話で、入学式に設定した目標の達成状況を問いかけ、教職員との面談で実際に確認する。目標を画餅にせず、定期的に向き合うことで自分の現在地を把握し、達成に向けた意欲を高めることがねらいだ。

期末に実施する「就職プログラム」では、ライフプランを考えるワークや内定者インタビューを通して自分の将来像を具体的にイメージし、目標と学びを結び付ける機会にする。
4期制の短いサイクルでの内省の繰り返しが成長実感を与え、モチベーションに再点火するという。

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このような教育システムの下、学生の成長実感は着実に高まっている。
アンケートでは「授業で何を学ぶかが事前にわかり、毎時間の小テストでしっかりと確認ができてよかった」「コマ補習で『わからない』を残さず、『できる』まで学習できた」「自分がどれだけ理解できているかが把握できるので、やる気につながる」「入学前に想像していたよりも勉強が楽しかった」といった声が挙がっている。

企業と連携したプロジェクト型学習でアウトプットの訓練

今回の記事では、同校の教育における「インプット」のための仕組みを説明した。
冒頭に書いた「専門知識と技術を修得するだけでなく、それらを実際に活用して社会の課題を発見・解決できる人材」の育成のためには、インプットしたものをアウトプットするための学びも不可欠だ。
そこで、同校では企業や地域と連携した実習やプロジェクト型学習を積極的に取り入れている。アウトプットの訓練を積ませ、実践的な課題解決能力を高めて即戦力として活躍できる人材の育成を図っている。

「何を教えるか」ではなく「何をできるようにするか」という学生本位の発想の下、校長自ら学生に目標を問いかけ、意欲を引き出す。目標と評価の短いサイクルでの確認を通して意欲を持続させ、成長を促す。
「わからない学生を取り残さない」という意思が、こうした教育体制を支えている。

文・真境名妙子(事業企画部)