「THEインパクトランキング2025」-韓国、インドネシアの大学がトップ10入り
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2025.0623
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3行でわかるこの記事のポイント
●1位は4年連続で西シドニー大学
●日本トップの北海道大学は28ランクアップの44位タイ
●全ランクイン校の過半数を占めるなど、アジアの大学が躍進
イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education」はこのほど、「THEインパクトランキング2025」を発表した。大学の社会貢献の取り組みを国連のSDGsの枠組みを使って可視化するもので、今回が7回目。総合ランキング日本トップは北海道大学の44位タイだった。
「THEインパクトランキング」は気候変動対策やジェンダーの平等、健康と福祉など、国連がSDGsで掲げる17の各目標について、研究、管理責任、アウトリーチ(現場における実践)、教育という広範な4分野にわたる大学の取り組みをランク付けする。サステナビリティにおける大学の貢献度を示すランキングだ。
大学は自学の強みに合った目標を選んでエントリーできる。総合ランキングに参加する場合は「SDG17(パートナーシップ)」が必須項目で、これに加えて3つ以上のSDGについてデータを提出し、「SDG17」以外でスコアの高い3つがランキングに反映される。
SDG別のランキングもあり、こちらに参加する場合は自学が強みとする分野のSDGを1つ以上選び、データを提出する。
2025年のインパクトランキングには、過去最多となる130の国・地域から2526校がランク入りした。前年より3ポイント高い52%をアジアの大学が占めた。2019年にこのランキングが始まってからアジアは常にランクイン校数の割合がトップで、今回初めて過半数となった。
ランクイン校数最多はインドの147校(前年は105校)で、次いでパキスタン126校(同96校)、フィリピン(同62校 )とトルコ(同100校)がそれぞれ121校だった。
総合トップは4年連続でオーストラリアの西シドニー大学。イギリスのマンチェスター大学も2位をキープした。
前年、アジアからのトップ10入りはゼロだったが、今回は韓国の慶北大学校(前年39位タイ)が3位、インドネシアのアイルランガ大学(同81位タイ)が9位タイに、それぞれランクインした。
毎回、総合ランキングの上位を占めるオーストラリア勢は今回、トップ10入りが1校減り3校に。北米からは、アリゾナ州立大学テンピ校とカナダのクイーンズ大学(いずれも6位タイ)、カナダのアルバータ大学(8位)の計3校がトップ10にランクインした。
日本からは68校が総合ランキングにランクインした。日本最上位は前年と同じ北海道大学で、28ランクアップの44位タイ。
トップ400には13校がランクインし、そのうち私立大学は慶應義塾大学、立命館大学、早稲田大学の3校。
今回のランキングで特筆すべきはアジアの大学の躍進だ。先述の通りトップ10に2校入ったのをはじめ、さまざまなデータで裏付けられた。
韓国の釜山大学校は67位タイから13位に急上昇。国立台湾大学とマレーシア科学大学はそれぞれ前年の55位タイと18位から今回、14位タイにランクアップ。
マレーシアはトップ50に2校、トップ100に4校がランクイン。
インド最上位で41位タイのアムリタ大学は、前年の81位タイから大きく順位を上げた。インドからはトップ100に4校がランクインしている。
慶北大学校やアイルランガ大学、釜山大学校などの順位の急上昇は、論文や教職員・学生に関する指標ではなく、サステナビリティを促す取り組みの指標によるものだ。研究に重点を置く「THE世界大学ランキング」は順位の変動は比較的小さい。対して「THEインパクトランキング」は、新しい取り組みの導入やその進捗に関するエビデンスが指標として含まれているため、順位の変動が大きいという特徴がある。
17のSDG別ランキングでも、アジアの大学が10のSDGでトップになるなど、存在感を示した。前年の5つから倍増し、マレーシア、韓国、香港、タイ、インドネシア、イラクの大学がそれぞれトップに立った。
SDG 17(パートナーシップ)ではマレーシアの2大学が1位タイになったほか、トップ10の3校がアジアの大学だ。
マレーシアは外にSDG1(貧困)、SDG16(平和)、SDG17(パートナーシップ)でもトップになった。
今年は2015年にSDGs(持続可能な開発目標)が策定されてから10年の節目となる。2030年の目標達成については懐疑的な見方もあるが、今回のランキングから、大学が持続可能性という課題に取り組み、社会にインパクトをもたらすことに力を注いでいることがわかる。
THEのチーフ・グローバル・アフェアーズ・オフィサーのフィル・ベイティ氏は「この大規模な調査は、大学が現実世界に与える影響と公共の利益への貢献を浮き彫りにしている。アジアは間違いなく、持続可能性の課題の先頭に立っている。大学の社会的・経済的影響力という面で、世界は今後ますますアジアに注目するだろう」とコメントしている。