2024.1216

THEが初の「学際科学ランキング」を発表、日本から33大学がランクイン

この記事をシェア

  • クリップボードにコピーしました

3行でわかるこの記事のポイント

●1位はマサチューセッツ工科大学、2位はスタンフォード大学
●日本最上位は同率37位の東北大学
●「世界大学ランキング」とは異なる構成、顔ぶれ

イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(THE)」はこのほど、初めての「THE学際科学ランキング」を発表した。学際的な研究に取り組む大学が対象で、トップはマサチューセッツ工科大学、2位はスタンフォード大学でいずれもアメリカの大学。トップ10にシンガポールから2校、オランダから1校入るなど、従来のTHE世界大学ランキングとは異なる構成だ。日本からは同率37位の東北大学をはじめ大阪大学、筑波大学など33校がランクインした。
🔗THEによる発表


 3分野11指標でランキング

「THE学際科学ランキング」は、複数分野の知見の活用によってグローバルな課題の解決を図る学際的な研究を讃え、奨励することを目的に、THEと科学技術分野の学際的研究推進プログラム「シュミット・サイエンス・フェローズ」が協力して作成した。同ランキングの「学際科学」とは、2つ以上の科学分野(THEが定めるコンピュータ科学、工学、生命科学、物理科学の各分野)を統合した研究を指している。

ランクインするためには、2019年から5年間で100件以上の学際科学研究学術出版物を発表してエルゼビア社のScopusに収録されていること、申告する科学分野で50人以上の学術・研究スタッフを擁していることなど、要件を満たす必要がある。 

研究プロジェクトのライフサイクルの各段階を表す「インプット」「プロセス」「アウトプット」の3つの分野の下、11の指標で大学をランク付けした。

shihyo.png

「昇進プロセス」は、学際的な研究を評価するテニュア(終身在職権)または昇進システムの有無をスコア化。「評判」は現役の研究者に、学際科学研究において最も優れた大学を5つまで挙げさせる調査に基づいてスコアが算出される。

トップ100にアジアから15か国47校がランクイン

2025年版が初となる「THE学際科学ランキング」には92ヵ国から749大学がランクインした。

トップ10は下表の通り。

ranking_ALL.png

オックスフォード大学やケンブリッジ大学、ハーバード大学など、世界大学ランキングのトップ校の中で参加していない大学もある。

アメリカからはマサチューセッツ工科大学、スタンフォード大学をはじめ、カリフォルニア工科大学(4位)、デューク大学(5位)など7校がトップ10にランクイン。アメリカの大学の強さをあらためて示したが、これら7校のうち4校は「THE世界大学ランキング2025」では22位~87位で、両ランキングのトップ層の顔ぶれは異なる。

また、今回のトップ10にシンガポールから2校、オランダから1校がランクインした点も従来の世界ランキングとは様相が異なり、世界の大学の多様性に光を当てる新たなランキングと言えそうだ。

THEによると、トップ5の大学はいずれも工学と技術に重点を置いている。学部教育から大学院プログラム、研究センターに至るまで、学際性が「DNAに組み込まれ」、学際的な目標は資金と管理サポートの両面で十分に支えられているという。

トップ20まで広げて見ると、アジアから香港大学が13位、中国の復旦大学が16位にランクイン。

アジアはトップ10015か国47校がランクインし、半数近くを占めた。最も多いのはインドとサウジアラビアで6校ずつ、次いで日本と香港で5校ずつ。インドは全ランクイン校数で見ても世界最多で65校だった。

熊本大学が国内6位、全体で122位と健闘

日本からは国立大学18校、公立大学2校、私立大学13校の計33校がランクインした。東京大学、京都大学、九州大学は参加していない。

国内最上位は同率37位の東北大学で、53位の大阪大学、同率77位の筑波大学と続く。

地方国立大学の健闘が目立ち、熊本大学は国内6位、全体で122位にランクインした。

私立大学最上位は同率151位の慶應義塾大学で、東京理科大学(401-500位)、中央大学と近畿大学(いずれも501-600位)と続く。

ranking_JAPN.png

「ランクイン大学は変革的な発見に近づいている」

THEのチーフ・グローバル・アフェアーズ・オフィサーのフィル・ベイティ氏は「世界中の大学が学際的な科学研究を通じてイノベーションを促進し、世界が直面する大きな課題の解決に役立つ画期的な成果をめざしている。このランキングが世界中の研究機関における科学的進歩を後押しし、多くの画期的な発見につながることを願っている」とコメント。

「シュミット・サイエンス・フェローズ」の共同創設者であるエリック・シュミット氏とウェンディ・シュミット氏は「核融合エネルギーの拡大や量子コンピューティングの発展など、困難な課題を解決するためには、従来とは異なる考え方が必要だ」「初めてのこのランキングに名を連ねる大学は従来の枠組みを打破し、新たな知の探究方法を生み出しながら変革的な発見に近づいている」などとコメントした。