2025.0310

私大経営改⾰⽀援事業の申請傾向、選定ポイントは?―文科省に聞く

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3行でわかるこの記事のポイント

●教学の取り組み分野「その他」は「観光」×「国際」などの掛け合わせ
●「この教学改革が経営改革につながる」という説明が必須
●2025年度は教学改革で5件を選定予定

私立大学等を対象にした🔗経営改⾰⽀援事業の選定結果が、先ごろ発表された。今後、選ばれた各大学が計画内容を公表する予定だ。2025年度に申請を予定している大学にとって参考になる情報を得るべく、今回の申請の傾向や選定結果について、文部科学省の担当者に振り返ってもらった。


●2025年度、大学間連携は5グループ選定へ

18歳人口の急減を見据え、私立大学等に経営の構造転換を促す文科省の事業「少⼦化時代を⽀える新たな私⽴⼤学等の経営改⾰⽀援」には、教育・研究の機能強化を支援する「メニュー1」と、大学間連携による運営の効率化を支援する「メニュー2」がある。
今回、メニュー1は111校の申請の中から45校(大学32校、短大13校)が、メニュー2は8グループの申請の中から4グループ13校(大学10校、短大3校)が選ばれた。

メニュー1は1校あたり1000万~2500万円程度、メニュー2は各グループに3500万円程度、いずれも原則、5年間の継続的支援がなされる。

2025年度はメニュー1で5件、メニュー2で5グループを新規に選定すべく、予算案では2024年度より4億円多い24億円の事業費を計上。5月を目途に申請を受け付ける予定だ。

●申請が少なかった「国際」「文理融合」「理工農」

メニュー1の申請傾向や選定の当落を分けたポイントについて、文科省の担当者に聞いた。

メニュー1では、教学改革の取り組み分野について、「その他」を含む7つの分類の中から大学が1つを選んで申請する。

今回の選定結果を見ると、「観光・地域振興」が13校あったのに対して、「国際」1校、「文理融合」「理工農」がいずれも2校など、分野間で大きな開きが出た。 

これについて担当者は、「観光・地域振興」は申請が20校以上あった一方、「国際」はごく少数だった、などと説明。計画内容という質の面も担保した結果、選定校数に差が出たという。
「選定校の取り組みをその分野のモデルとして横展開していくことを考えれば、どの分野にも質の高い計画が少なくとも1校はあったので、良かった」と振り返る。

取り組み分野として14校ある「その他」には、どんなものが含まれているのか。その多くは「観光」×「国際」、「観光」×「DX」など、他の6分野のいずれか複数を掛け合わせたものだという。「それらも、6分野のどれかで申請することも可能だったのだろうが、学内の複数分野のリソースをつなぎ、有効活用するという大学の意思表明として『その他』で申請したと受け止めている」(担当者)。
「その他」で選定された取り組みにはさらに、「DX」×「スポーツ」のように、6分野の1つとそこに含まれていない分野の掛け合わせもある。また、「特別支援教育」のように6分野のいずれにも該当しない取り組みもある。

●「教学プログラムが魅力的なだけでは評価しない」

申請時には、メニューごとに指定される調査票を提出。調査票は、チェックシートの回答で得点を出す「体制整備状況回答票」と、事業内容を説明する「計画書」で構成されている。
文科省は当初から、審査では計画書の方を重視すると説明していたが、選定された大学とそうでない大学とでは、実際に事業内容に差が出たようだ。
「明確な人材育成ビジョンに基づく教学改革の計画はもちろん重要だが、本事業では教学の構造転換が大学の経営改革にどうつながるかという点を重視する。描かれている教学プログラムがどれだけ魅力的でも、それだけでは評価しない。教学と経営がかみ合った計画を求めており、選定された大学はそこをクリアしたということだ」(担当者)。

計画書では、中間年度(2027年)と計画完了年度(2029年)それぞれの収容定員・学生数・定員充足率、および経常収支差額の達成目標も示す。学部新設等においては、定員削減が必須ではないが、経営の健全性確保のため、定員規模適正化の観点が強く求められる。この点について、実際の申請内容はどうだったのか。
「現在の定員充足状況に関係なくどの大学も、規模適正化の必要性を意識していると感じた。充足率90%以上の大学でも、当初からの定員減を見込んだ計画を示したケースがあるし、ただちに定員削減はしないが本事業による改革を進めたうえで5年後に見直すと明示したケースもあった」

●「出口まで見える教学改革で学生募集につながる好循環を」

担当者は、2025年度の申請をめざす大学に対し、次のようにアドバイスする。

「メニュー1は厳しい選考になるだろうが、今回の選定結果も見たうえで、ぜひ魅力的な計画を考えてほしい。
メニュー2は大学間の調整に時間をかけ、初回の申請に間に合わなかったグループもあると思われる。十分に練り上げた計画に期待している」

「現状の取り組みの延長ではなく、教学・経営が一体となって考えてほしい。18歳人口が確実に減っていく中、社会における自学の存在意義、どんな貢献ができるかを考え、学生目線で出口まで見える取り組みをデザインすることが大切だ。地域ごとの社会・経済ニーズをふまえた教育プログラムを構築し、社会で活躍できる人材を送り出すようになれば、それが自ずと学生募集につながるはず。本事業では、そのようなサイクルの構築・強化を積極的に支援する」