2026.0413

合格者に産学連携グッズを送り入学手続きへの一押しに-北海道武蔵女子大学

大学(募集・接続・教学)

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3行でわかるこの記事のポイント

●合格通知に地元プロバスケのユニフォームや袋麺を加え、宅配便で
●年明け入試の歩留まり率が向上し、入学者数が前年度より増加
●年内入試に比べ低いオープンキャンパス参加率に着目

北海道武蔵女子大学(札幌市)は2026年度入試の一般選抜と共通テスト利用選抜の合格者に、合格通知と合わせ、食品など産学連携の成果物を詰めた「合格おめでとうBOX」を送った。教育の特色を理解してもらい、入学歩留まり率を上げることがねらいだ。合格者との接点を生かす初の試みが成功し、歩留まり率は前年度より5ポイント上がり、入学者が増えた。


「日本一重い合格通知」

2024年度に開学した🔗北海道武蔵女子大学は、経営学部経営学科のみの単科大学で、入学定員は80人。同じ法人の北海道武蔵女子短大には教養・英文・経済の3学科を設置し、入学定員は計250人。四大・短大とも産学連携に力を入れ、商品開発やイベント企画などのPBLを正課の中に位置づけている。

2026年2月中旬、北海道武蔵女子大学は年明け入試の合格者計約100人に、合格通知を発送。手続き書類等に加え、大学・短大の産学連携と関連があるグッズや食品、イベント説明の冊子など9点を60センチサイズの箱に詰めた。

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大学・短大の入試広報課長を務める澁谷太輔氏は、この初の試みを「日本一重い合格通知ではないか」と説明する。

成果物の背景がわかるイベントチラシも

合格者に届けられた黒×ピンクのユニフォームは地元のプロバスケットボールチーム「レバンガ北海道」のもので、短大がチームと連携して11月に開催した「武蔵ガールズデー」で配った限定品。学生がイベントのプロデュースやユニフォームのデザインを担った。ユニフォームは今回の送付用に、チームから無償で提供してもらった。

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BOXには、若者に人気の「辛ラーメン」も。製造元と大学・短大が連携して、2024年度から雪まつり会場で「北海道武蔵女子デー」を企画。先着100人の女子高校生が無料でスケートを楽しめるほか、地元産の牛乳を使ってオリジナル辛ラーメンを自分で調理して食べる体験企画もある。

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これとは別に学生は、辛ラーメンをアレンジして提供する飲食店を取材し、SNSで発信する活動も展開している。

これらの成果物にはイベントのチラシなど、各プロジェクトの内容がわかる資料も添えている。

「第2志望でしか選ばれない大学」という問題意識

「合格おめでとうBOX」のねらいは、北海道武蔵女子大学の一般選抜と共通テスト利用選抜の合格者の入学歩留まり率を上げることだ。
2026年度入試では、総合型選抜、学校推薦型選抜とも志願状況が好調で、前年より8人多い約50人の入学予定者を確保。しかし、年明けの入試の出願者は大きく減り、合格者は前年より少ない78人に。定員割れを回避するため、歩留まり率向上の施策が必要だった。

「前年度の一般と共通テスト利用では、上位私大との併願者の辞退が相次ぎ、入学定員を割り込んだ。設置2年目にして、第2志望でしか選ばれない大学になっていた」(澁谷課長)

「自分もプロジェクトに参加したい」と思ってもらう

出願に至るまでの接触状況を分析すると、年内入試ではほとんどがオープンキャンパス参加済みだったのに対し、一般と共通テスト利用の志願者の参加率は40%程度だった。

澁谷課長は「札幌や東京の企業を中心とする産学連携で北海道全体を元気にする企画を考えている。地域活性化を自分たちで具体化する北海道武蔵女子大学の学びの魅力は、オープンキャンパスに参加してこそ体感してもらえる」と話す。
その体感がないまま、大学案内やウェブサイトの情報だけで出願を決めた年明け入試の合格者に「ここで学びたい」と思ってもらうには、産学連携の成果物に触れる機会を提供することが次善の策になるという発想だ。「北海道武蔵ではこんな面白いことをしていると知り、『自分も一緒にやりたい』と思って入学手続きをしてほしい」。

「合格おめでとうBOX」が功を奏し、一般選抜と共通テスト利用の合格者の歩留まり率は前年度より5ポイント高い36%に。全入学者数は定員80人を満たすには至らなかったものの、前年度から5人増えて78人だった。

成果物は連携先企業から提供してもらったため、1人あたりにかかる費用は送料の530円。手続き書類だけを送る郵便との差額は200円程度だという。

連携提案を持ち込む先は企業のマーケティング部門

澁谷課長は、北海道武蔵女子大学の開学2年目の2024年7月に着任。前任校の戸板女子短大(東京都港区)では、学生広報スタッフを前面に出すファンマーケティングを主導し、成功させた。そこでのコンテンツの柱もファッション、美容、食の分野での産学連携で、実践力が身に付く教育について学生広報スタッフのプレゼンテーションなどを通じてオープンキャンパスで発信した。

同氏にとって北海道武蔵女子大学への転身は、前任校での成功体験を地方大学で再現してみせるというチャレンジでもあった。「北海道武蔵女子大学・短大では以前から産学連携に力を入れていたが、その発信は十分とは言えなかった」。

企業のマーケティング畑出身の同氏が、産学連携を成功させるカギとして挙げるのは次の2点。
① 連携の提案は企業のマーケティング部門に持ち込む
女子の感性を生かせばヒットすることをマーケターは体験的に知っているので、積極的な協力が得られるという。
② 広報ではクリエイティブにこだわり、教育的視点を前面に出し過ぎない
例えば、共同開発した"美味しそうな商品"そのものを前面に出し、まずは幅広い層の関心を集める。それが自学との連携の成果であることは、導線を貼った自学のウェブサイトで知らしめればいいという考え方だ。

プロジェクトを拡大し、年内入試合格者にもBOX送付へ

澁谷課長はこうしたセオリーに基づき、2026年度は産学連携をさらに拡大しようと企業との交渉に奔走している。高校生に人気のジャンルであるウェディングやアパレル、食品、スポーツなど、次年度もさまざまな商品・サービスの開発やプロモーションに学生が参画する計画を温めている。

それらの成果物を合格通知と一緒に届ける「合格おめでとうBOX」は次年度以降、年内入試合格者に対象を広げて続けたいという。「プロジェクトの拡大で、箱が一回り大きくなるかも」。

合格者の入学歩留まり率向上もさることながら、その手前で入学意思の強い志願者を集めるためにも、産学連携をうまく活用したいところだ。「今後は、北海道武蔵女子大学・短大で学びたいという志願者の受け皿として、年内入試の枠を広げたい。プロジェクトを経験した学生が自分の成長実感をオープンキャンパスで伝え、憧れを抱いた受験生が入学してプロジェクトに参加する、そして次は自分が経験を伝える側に回る―。そのサイクルを小規模な地方大学でもつくれることを証明し、大学業界全体を元気にしたい」