3ポリシー達成状況の点検・評価は「不十分」-文科省の教育改革状況調査
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2024.1209
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3行でわかるこの記事のポイント
●学修状況分析、教育改善支援の体制を構築している大学は66%
●学生の成長実感を公表している大学は43%
●教学マネジメントに取り組む大学の事例も紹介
文部科学省はこのほど、2022年度の大学教育の改革状況に関する調査結果を発表した。3つのポリシーに基づく教育の質向上の取り組みと、社会に対する情報公表について説明。これらの推進を促すため、教学マネジメントの取り組み好事例も紹介している。
🔗調査結果
文科省による大学教育改革に関する調査は毎年実施されている。2022年度の調査は国公私立793大学を対象に、2023年9月から12月にかけて実施。781大学から回答を得た(回答率98%)。
大学教育を通して育成すべき力を学生が確実に身に付ける「学修者本位の教育」を実現するためには、3つのポリシー(アドミッション・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、ディプロマ・ポリシー)に基づく全学的なカリキュラム・マネジメントが求められる。
3つのポリシーの達成状況を点検・評価している大学は年々増加し、今回約92%に達した。一方、点検・評価の前提となる評価基準や体制の整備は次のような状況だ。
❶3つのポリシーに基づく教育の成果を点検・評価するための、学位を与える課程共通の考え方や尺度を策定している大学は74%
❷学修状況の分析や教育改善を支援する体制を構築している大学は約66%
❸全学的な教育目標等とカリキュラムの整合性を検証する全学的な委員会を設置している大学は約49%
それぞれ前年から3~6ポイントの伸びだった。
文科省は「3つの方針に基づいた具体的な取り組みの広がりは十分とは言えない」「各大学における具体的な取り組みのさらなる進展が必要」としている。
この調査では「社会に対する大学の説明責任」として、情報公表も重視している。
教育研究活動等の情報を公表している大学はほぼ100%に達する中、具体的な公表内容は次のような状況だ。
❶学生の学修時間を公表している大学は56%
❷大学の教育研究活動を通じた学生の成長実感を公表している大学は43%
❸教員一人当たりの学生数を公表している大学は64%
❸は前年と変わらず、❶は5ポイント、❷は4ポイントの伸びだった。
文科省は「大学の外部からの声や期待を意識し、社会からの信頼と支援を得るという好循環を形成するため、さらに社会からの評価を通じた大学教育の質の向上を進めるため」、より多元的な情報公開を通して大学の全体像を包括的に描く必要があると指摘している。
文科省は今回の調査結果とあわせ、2020年度に実施した教学マネジメント取り組み事例調査の報告書も公開。
好事例として選んだ13大学の取り組みについて、教学マネジメント指針の「三つの方針を通じた学修目標の具体化」「授業科目・教育課程の編成・実施」「学修成果・教育成果の把握・可視化」「教学マネジメントを支える基盤」「情報公表」の各プロセスとの対応に着目して整理している。
その中で北陸大学は、これらすべてのプロセスにおいて特徴的とされている。
同大学の経済経営学部は、コンセプトを「社会と組織と自己のマネジメント力の修得」 と定義。マネジメント力を軸に DP を設定し、カリキュラムを再編した。学部の科目数の上限を120と先に決め、科目数が多すぎるという問題を解決した。
学際的学部のため意思統一は容易ではなかったが、教員間の対話を通してカリキュラム作成方針を固め、120 科目の中身を決めたという。
マネジメント力育成のため、経済、 経営、法律、会計、情報を「社会人のための必須 5 分野」と位置付けてコンセプトを明確化。1・2 年次はこれらを横断的に学び、3・4 年次は興味がある 2 分野程度を集中的に履修することを想定したカリキュラムを編成した。
学生はオンライン上のカリキュラムツリーの履修科目を塗りつぶすことによって履修の積み上がりを確認、重点的に学んでいることを可視化でき、虫食い状態にも気づきやすいという。
学生は年度はじめ、学年ごとに求められる到達度を設定したDP ルーブリックをもとに1年間の学修目標を立案し、年度末には振り返りと自己評価を行う。