標準化の仕組みの下、学科単位で学修成果の可視化を推進-東京家政大学
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2024.0729
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3行でわかるこの記事のポイント
●学修・教育開発センターが企画・推進
●共通フォーマットのワークシートでPDCAの進捗を管理
●可視化したデータを学生に還元し、成長を支援
東京家政大学(東京都板橋区・埼玉県狭山市)では各学科が実施主体となり、全学で学修成果の可視化に取り組んでいる。形骸化を防ぎ、標準的な型を確立するための企画・推進を担うのが学修・教育開発センター(Center for Research and Educational Development=CRED)だ。「学生のための教育」という理念の下で束ねられ、足並みをそろえて歩みを進める可視化の取り組みについて、CREDの丸山毅課長と教学改革推進部の神保正典副課長(前CRED副課長)に聞いた。
東京家政大学には家政学部、栄養学部、児童学部、人文学部、健康科学部、子ども支援学部の6つの学部があり、入学定員は計約1500人。
2017年から取り組む学修成果の可視化の実施主体は、各学科だ。
可視化のために、全学共通で3つの成果指標を活用している。
最初に導入したのは大学IRコンソーシアムの学生調査だ。参加校との情報交換を通じて、可視化に関する知見を深めることが主な目的だった。
次に、学科ごとにディプロマ・ポリシーの達成状況を把握する「達成度アンケート」を始めた。
これら間接評価に直接評価を加えるため、2020年度からはベネッセi-キャリアが提供するアセスメントテスト「GPS-Academic」を導入。1年生と3年生を対象に4月に実施している。学生は指定期間内の都合のいい時に自分のパソコンで受検。受検率は1年生が約90%、3年生は約80%だという。
これらの調査やアセスメントの結果が各学科の自己点検・評価に活用される。
学修・教育開発センター(CRED)は学科単位で取り組む学修成果の可視化を標準化するため、アセスメントの年間スケジュールとアクションプランワークシートのフォーマットを作成。各学科は指定された期限までにワークシートにアクションブランを記入し、進捗管理をしながら取り組みを進める。
アクションプランワークシートでは、アセスメントを起点にしたPDCAの流れを整理。
①アセスメント結果から抽出された課題
↓
②課題解決のためのアクションプラン
↓
③アクションプランの進捗確認(前期)
↓
④アクションプランの進捗確認(通年)
↓
⑤次年度に向けた課題
という各項目に、各学科が記入していく。
アクションプランは単年度の計画と中長期計画に分けて管理。これらの進捗は、前期と通年の2回、全学のオンライン報告会で確認する。通年の総括をふまえ、次年度の課題をまとめる。
CREDはアクションプランの説明会やFD研修等を開催。記入する際の考え方や他大学の取り組みを発信し、学修成果の可視化について全学の理解を深める。
こうしたチェックポイントや進捗の報告会を設けるねらいについて、丸山課長は「ワークシートへの記入だけだと、年度末にまとめて書いて終わりという形骸化につながりかねない。各学科に可視化のことを継続的に考えてもらい、他学科の取り組みを聞いて『うちもちゃんとやらないと』と奮起してもらうための仕掛けだ」と説明する。
CREDはこのように可視化の道筋を示し、全学で足並みをそろえるための仕組みを設定して各学科に伴走する。
アクションプランは2024年度、自己点検・評価との連動を強化するなど、毎年ブラッシュアップを重ねている。
「これまでのFD・SD活動を通して学生本位の教育という理念が浸透しているため、教員はおおむね協力的だ」と神保副課長。東京家政大学にとって、学修成果の可視化や自己点検・評価は「文科省が言うから」ではなく、「学生のために必要だから」やるという意識の下地がある。
学生のための可視化なのだから、学生が自らの成長を自覚して自らの言葉で説明できるようにサポートすべきだ。この考えの下、可視化した結果は学生ポートフォリオ「K-PORT」を通して学生に還元する。
学生は年度はじめにディプロマ・ポリシー達成に向けた自身の目標を決め、「K-PORT」に記入したうえで学修を進める。「K-PORT」に取り込まれるGPAや「GPS-Academic」のデータをもとに年度末には振り返りを記入し、学修のPDCAを回す。
これを形式的なものにしないため、CREDは2024年秋、「K-PORT」の使い勝手や役立ち度について学生にヒアリングする予定だ。
丸山課長は「本学は、常に『今よりもっと質の高い教育』をめざして改善を続け、学生が社会で活躍できるよう成長させたいと考えている。それを具現化するための仕組みを整えることが、われわれCREDの使命だ」と話す。
そんなCREDの思いに呼応するように、全学スタンダードの取り組みの上に"2階部分を増築"して、可視化の解像度を上げようとする学科も出てきた。
同大学では「GPS-Academic」は1年次と3年次、2回の実施がスタンダードだが、健康科学部看護学科では、3年次は実習の前後に実施し、実習の成果を検証している。同じく健康科学部のリハビリテーション学科は、成長過程を精緻に分析するため全学年での実施を始めた。
同大学では今後、学修成果の可視化による成長支援に力を入れていることを学生募集広報で発信し、高校生や高校にアピールしたい考えだ。