"興味"を"志望"に育てる~LINE活用でチャレンジ ①独自調査から見るアカウント取得状況、友だち登録数
学生募集DX
2024.1030
学生募集DX
3行でわかるこの記事のポイント
●調査対象550私大中83%が公式LINEアカウントを取得
●多数の友だち登録者を獲得する一方、LINEの活用状況は...
●登録者情報の取得、コンテンツへの誘導に力を入れる大学も
多くの大学が学生募集広報にLINEを活用しようと、公式アカウントを設けるようになりました。しかし、何とももったいないことに、そのほとんどは、実際にはLINEを募集広報に十分活用できていないようです。自学に対する高校生の興味・関心を「この大学に入りたい!」という志望に育てるうえで、このメディアをどう生かせばいいのか―。独自調査と取材を通し、シリーズで考えます。
*各大学とも、LINEの友だち登録者数は日々変化し、発信メッセージのタイミングや内容も時期によって変わります。ここで紹介している数字や発信内容は調査時点のものであり、最新のものとは異なります。
高校生は目的に応じていくつかのSNSを使い分けると言われますが、その中でもLINEはほとんどの生徒がアカウントを持ち、コミュニケーションや情報収集の場面で幅広く、日常的に使っています。
こうした状況を受けて、多くの大学が公式アカウントを取得。オープンキャンパスなどのイベント参加はLINEのみで受け付ける方式にし、開催のたびに友だち登録者が積み上がる大学も増えています。
しかし、公式アカウントを作れば友だち登録者が自動的に増えるわけではなく、登録者が増えても、そこに情報を発信してさえいれば、学生募集の成果が上がるというわけでもありません。高校生にとって身近なメディアだからこそ、心地良いコミュニケーションを通して気持ちを温め、志望度を高めて出願に導くという緻密な設計が求められます。
進研アドは募集広報におけるLINE活用の知見を蓄積すべく、大学による活用の実態や課題について研究を進めています。その一環としてこのほど、私立四年制大学の約88%をカバーする規模で、公式アカウント(学生募集用と推測されるもの)の有無や友だち登録者数、発信の内容や手法について独自調査を行いました。
シリーズ初回はその調査結果をもとに、大学のLINE活用状況について概観します。
今回のLINE活用調査の対象は私立大学550校。その83.1%にあたる457校が公式アカウントを持っていました。アカウントのある大学については、友だち登録者の数を確認。上位30大学を下表にまとめました。
定員規模の大きい都市部総合大学が上位を占めていますが、15位以降には小規模大学や単科大学も含まれます。今回、友だち獲得施策までは調べていませんが、登録者を増やすうえで小規模大学が必ずしも不利というわけではなさそうです。
友だち登録者数が10万人を超えているのは3校。トップのA大学は唯一20万人台で、2位の大学と比べても2倍以上。登録者数が入学定員の30倍という点でも他を大きく上回っています。
30大学の中では「登録者数/入学定員」は15倍前後が多いのですが、7校は20倍を超えています。C大学、D大学、E大学はいずれも入学定員1000人以下で、その30倍以上の友だちがいます。どんな秘策があるのか、今後の取材で迫りたいところです。
E大学をトップとする女子大の友だち登録者数上位10大学は下表の通り。入学定員に対する登録者数が比較的多い大学が目立ちます。
このように、多数の友だち登録者がいる大学でも、増え続ける登録者を自学の出願者に「育てる」活動には手つかずというところも少なくありません。
調査では、各大学の公式アカウントで友だち登録を行い、メッセージの頻度や内容についても確認しました(10月上旬~同下旬の調査後、発信内容を変更している大学もあります)。
その結果、登録時のサンクスメッセージ以降、1週間以上発信がないケースも多いことが判明。
複数の大学にヒアリングすると、「イベント前に案内を送るだけ」「従量課金を避けるため発信数を抑えつつ、メールと同じ情報を一斉に送っている」といった声も聞かれました。登録者の学年や名前、志望系統などを特定しない「匿名(アノニマス)リード」状態のまま、漫然と情報を送り続けることが多いようです。
こうした中にあって、友だち登録者数上位の各大学は、高校生の気持ちに寄り添った情報発信をするため、登録と同時に、本人情報を取得するための働きかけをしています。
中でもA大学が登録と同時に促す「友だち設定」は、他大学に多い直接フォームに誘導するパターンではなく、次のような工夫が見られます。
①まず、性別や学年を画像からタップで選んでいくスタイル
マスコットキャラクターなどが描かれた画像が次々に現れ、占いやゲームのような楽しさが感じられます。
②エリアや高校名、氏名の入力フォームに遷移
①の工夫によって、よりスムーズな導線となります。
③登録3日後、「興味がある学部はチェックした?」のメッセージ
段階的に距離を縮めていく工夫が感じられます。文系・理系のいずれかを選ぶと、やはりマスコットキャラクター入りの文系学部の画像が一つずつ示され、興味の有無をチェック。
友だち登録数5 位のB大学も、友だち登録と同時に本人情報の登録に誘導。高校名や氏名といった基本情報の入力に加え、興味がある情報カテゴリとして、入試や学部学科、留学、就職、学費・奨学金などの中から2つ選択させます。
いずれの大学も、登録された内容に基づき、その後の情報を送り分けると推測されます。登録者に「自分のために届けられた情報なんだ」という心地良さを与え、読み飛ばされたりブロックされたりするリスクが低くなるわけです。
A大学とB大学は、画面下部のリッチメニューもうまく活用しています。
ここには、入試や学部・学科、イベントなど、その時々で特に読んでほしいコンテンツや資料請求へのリンクを常設できます。これによって、タイムラインの中で情報が埋もれがちなLINEの弱点がカバーされます。
A大学のリッチメニューには、登録者が興味ある学部をいつでも変えられるよう、情報更新へのリンクも設置。B大学は、オリジナル動画が充実したYouTubeの大学公式ページに飛べるようにしています。
女子大の登録者数上位校も、友だち登録者の属性情報の取得、適度な発信頻度、リッチメニューの設定など、LINEの活用に工夫を凝らしています。
E大学は登録時のサンクスメッセージで志望学科と希望する入試方式の登録を促し、翌日の発信ではリッチメニューについて紹介しています。
F大学は登録の1週間後、入試対策講座のライブ配信を告知。翌日は大学ウェブサイトのおすすめコンテンツを紹介し、画像からリンクで飛べるようにしています。
これらの大学は、LINEによる発信頻度を上げるために特別なコンテンツを作るのではなく、既存のコンテンツへの導線としてLINEを生かしていると推測されます。しかも、それをOne to Oneのコミュニケーションに近づけられるよう、登録者情報の取得を図っていることもポイントと言えます。
以下のようなものが「リッチメニュー設置おススメ項目」と言えそうです。
<リッチメニュー設置おススメ項目>
✓入試
✓学部・学科
✓就職・キャリア関連
✓オープンキャンパス
✓本人情報登録・更新
✓YouTube等の"推し"コンテンツ
下図は、これらの多くをカバーしたリッチメニューの好事例です。
さて、貴学ではLINEアカウントを開設していますか?
着実に友だちを増やしながら、学生募集に活用できているでしょうか。
シリーズの次回以降、大学によるLINE活用の取り組みをより詳しく紹介しますので、ご期待ください。
*進研アドは本記事で一部を紹介したLINE活用状況調査の結果について、オンライン会議で詳しくご説明しつつ、貴学のLINE活用についてアドバイスいたします。
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