2025.0714

首都圏3私大の学力評価型年内入試 一般選抜と併願する学力上位層がターゲット

学生募集・高大接続

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3行でわかるこの記事のポイント

●文科省の実施要項をふまえた多面的評価を実施
●学力テストに事前課題の小論文や自己推薦書を組み合わせる
●2025年度入試では「従来の年内入試に比べ上位層が入学」

2025年度入試で学力試験を課す総合型選抜や学校推薦型選抜を導入・実施した首都圏の私立大学が、2026年度の実施内容を固めつつある。文部科学省から示された🔗「大学入学者選抜実施要項」に基づき、学力テストと、小論文等または「志願者本人が記載する資料」等を組み合わせる多面的評価への見直しや強化を図っている。今後、拡大が予想される新たな選抜について、神奈川大学、共立女子大学、大東文化大学の実施内容を紹介する。


神奈川大学、共立女子大学、大東文化大学が2026年度入試で実施する学力評価型年内入試において、複数大学に共通する点として次のようなことが挙げられる。

▼総合型選抜として実施(学校推薦型選抜からの移行を含む)
▼英語外部検定の利用が可能
▼調査書(主に評定平均)の配点を明示
▼事前課題の小論文(に準じるもの)を提出させる
▼他大学との併願が可能
▼他大学を含む一般選抜との併願を念頭に、得点等の情報を提供

 各大学の実施概要は以下の通り(前年度からの変更点や新規実施の部分を下線で示している)。

神奈川大学

12月に学力試験を行う「給費生試験」は、2026年度入試から総合型選抜として実施し、エントリーシートも評価対象に加える。また、これとは別に「総合型選抜(適性検査型)」を新設し、学力試験と自己推薦書を組み合わせた多面的評価を行う。

2026年度入試 「給費生試験」の概要
学力試験(3科目)+エントリーシート
1221日に3科目型試験(科目と配点は学部・学科によって異なる)を実施
3科目+エントリーシートで総合的に合否判定
英語外部検定の利用が可能
・エントリーシートでは入学後に取り組みたいことを問う
・他大学との併願が可能、学内併願は不可
・全国23の試験会場を設置
・共通テスト前の112日に合格発表し、ウェブで得点も開示
・入学手続き締め切りは127日と36日の2段階

2026年度入試 「総合型選抜(適性検査型)」の概要
学力試験(2科目)+調査書+自己推薦書
・全学部共通の基礎学力テスト(国語・英語または数学・英語)を1116日に実施
2教科各100点満点+評定平均(10倍で点数化し50点満点)+自己推薦書で総合的に合否判定
・英語外部検定の利用が可能
・自己推薦書では高校での活動について問う
・他大学との併願、学内併願が可能
1125日に合格発表、入学手続き締め切りは1211日と127日の2段階

 入試事務部の西川朋実次長は、学力評価型年内入試導入のねらいについて「近年、AO入試による入学者の成績が低迷し、中退に至るケースが増えている。4年間、授業についてくることができ、中退しない学生に入学してほしい。それには一定の学力と学習習慣を担保する必要があるため、総合型選抜(適性検査型)で学力テストを実施することとした。学習習慣は評定平均で判断する」と説明。

 長年にわたり学力テストのみだった給費生試験にエントリーシートを課すことにより、「出願者が多少、減る可能性もあるが、一方で、志望度がより高い生徒の出願が期待できる」(西川次長)。

共立女子大学

2025年度入試で「基礎確認テスト」と事前課題を組み合わせた「基礎力判定方式(総合型選抜)」を導入した。2026年度入試でも前年度と同じ名称、内容で実施する。

2026年度入試 「基礎力判定方式(総合型選抜)」の概要
学力試験(2科目)+調査書+事前課題
928日に高2までの基礎学力(国語・英語)を測る基礎確認テストを実施
・基礎確認テスト(100点満点)+調査書(10点)+事前課題(10点)
・出願時、「リーダーシップ」をテーマに大学での学びに対する意欲や将来像について記述する事前課題を提出。学部ごとにテーマが異なるため学内併願はできない
・学外併願は可能
103日に基礎確認テストの得点と全体順位を開示
111日に合格発表、入学手続き締め切りは同10日と34日の2段階

2025年度入試の「基礎力判定方式(総合型選抜)」には、募集人員46人に対して442人が出願し、433人が受験。合格者231人(倍率1.87)のうち106人が入学した(歩留まり率45.9%)。

同大学では、合格者のうち3月の最終手続きをしなかった54%は当初から他大学の一般選抜受験を予定していたと分析、一般選抜との併願層を獲得できたと総括している。

下のグラフでは成績順に、11月の入学手続き率と最終的な入学率を一般選抜と比較している。一般選抜では成績上位層ほど入学手続き率、入学率とも低い傾向にあるのに対し、基礎力判定方式では上位層の歩留まり率も高い。入試・広報課の渡辺篤課長は「一般選抜では本学を受けない高学力層を受け入れることができた」と話す。

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合格発表の前に得点等を開示するのは、一般選抜受験層への情報提供で「共立女子の年内入試で腕試しを」というメッセージを送り、出願を促すねらいがある。

渡辺課長は学力評価型年内入試の導入のねらいについて、「2025年度入試では、一般選抜で私立大学を受験する女子の割合は37.9%(豊島継男事務所調べ)にとどまるなど、女子の年内入試シフトが顕著だ。本学のような規模の大学はそこにしっかり対応した入試に変えていかないと、生き残りは難しい」と説明。

「学力評価型は一定の学力を担保できるので、入学前教育もリメディアル的なものではなく、大学の学びへの移行に重点を置く内容にすることも考えられる」と話した。 

大東文化大学

2025年度入試で、学力テストを課し、調査書も評価に加える「学校推薦型選抜(基礎学力テスト型)」を導入。2026年度は総合型選抜に移行し、調査書および事前課題の小論文も評価対象にする。

2026年度入試 「基礎学力テスト型(総合型選抜)」の概要
学力試験(2科目)+調査書+事前課題の小論文
1123日に基礎学力テスト(国語・英語または数学・英語)を実施
英語外部検定の利用が可能
事前課題の小論文(全学部共通課題)を提出
・基礎学力テスト(100点満点×2)+調査書25点+小論文(25点満点)
・アドミッション・ポリシーとの合致度を見るための出願理由アンケートを提出(点数化しない)
・他大学との併願、学内併願が可能
2段階に分けていた入学手続きを2月下旬に一本化、併願校に入学する場合は入学金納入が不要となる。

入試担当の堀川信一副学長は2025年度入試における「学校推薦型選抜(基礎学力テスト型)」の実施について、「年内入試を目指す高校生が増え、学力についての懸念が出てきたため」と説明。「調査書の評定平均で高校での努力の成果を見る一方、『現在の学力』も見るために基礎学力テストを実施した。年内入試は学力不問という高校生の認識に対し、そうではないという本学の考え方を示している」

2025年度入試では2つの学校推薦型選抜、公募制多面的評価型と基礎学力テスト型を合わせ243人を募集し、学力試験を課した後者には859人が出願。合格者474人のうち147人が入学した(歩留まり率31.0%)。不合格者の一般選抜再出願数は延べ503人だった。

高校教員からは「年内入試で基礎学力テストを受けておくことでチャンスが広がり、一般選抜に取り組みやすくなった」との声があったという。

堀川副学長は「従来の年内入試に比べて幅広い層の高校からの出願が増えたり、合格者がさらに本学の奨学金試験に再チャレンジしたりするなど、手応えを感じた」と話す。

関西圏のこれまで出願のなかった高校から出願があったことをふまえ、2026年度入試では関西に入試会場を追加する。また、都内では山手線内会場も加える予定だ。

下のグラフは、入試方式別の入学者構成比(2026年度は目標値)を示す。

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一般選抜の入学者の割合は2025年度に若干低下したが、それまで50%程度だった。2026年度以降は「基礎学力テスト型(総合型選抜)」での受け入れを全体の10%程度にし、一般選抜と合わせて学力試験型入試による入学者を引き続き半分以上にしたい考えだ。