理系学部等新設の支援対象27大学が決定、選定率は77%
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2025.0704
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3行でわかるこの記事のポイント
●選定率は初年度100%、2年目95%から大きくダウン
●今回も情報・デジタル・データサイエンスの分野が目立つ
●文系大学にとって特に情報・理科の入試問題作成が課題に
大学による理系分野の学部設置等を文部科学省が最長10年間、約20億円まで支援する「大学・高専機能強化支援事業」の3回目となる2025年度の選定結果が発表された。公立・私立合わせて27大学が選ばれた。かつてない勢いで理系学部が新設される中、教員確保や入試問題の作成が課題となっている。
🔗文科省の発表
🔗大学改革支援・学位授与機構の発表
特定成長分野への学部転換等の改革を促す「大学・高専機能強化支援事業」では、3002億円の基金を活用して「デジタル」「グリーン」等の分野の人材育成を継続的に支援する。
公私立大学が対象の「支援1」では、理・工・農の3分野、およびこれらのいずれかを含む融合分野への学部再編等を支援。原則8年以内、最長10年で、20億円程度までの支援を予定している。
国公私立大学と高専が対象の「支援2」は高度専門人材を養成する大学院レベルが対象で、最長10年、原則として10億円程度までの支援を予定している。こちらは今回が最後の公募となった。
3回目となる2025年度は2024年12月~2025年2月に公募。
「支援1」には35件の申請があり、27件(公立大学4件、私立大学23件)が選定された。「支援2」には27件が申請し、19件(国立大学5件、公立大学3件、私立大学4件、国立高専6件、公立高専1件)が選定された。
大阪電気通信大学と福岡工業大学は「支援1」で2度目の選定。
東京理科大学は今回、「支援1」と「支援2」の両方で選ばれた。
「支援1」では、これまで3回の選定によって延べ153大学がデジタル、グリーン、食・農等の分野の学部等をすでに開設していたり、開設準備を進めたりしている。
選定率を見ると、初回は申請67件で全て選定(選定率100%)、2回目は申請62件で選定59件(95.2%)だったのに対し、今回は申請35件で選定27件(77.1%)と一気に下がった。
文科省の担当者は「初期の申請に比べると、学生確保の見通しを示すエビデンスが客観性を欠く等の指摘が審査においてなされるようになった」と説明する。
「支援1」では、これまでと同様、情報系の学部等の新設が目立つ。29大学中、「改組後の学部・学科名」に「情報」「デジタル」「データサイエンス」のいずれかのキーワードが含まれるものが20件に上る。半導体関連企業が集積する九州では、6件中5件をこれらの分野が占める。
もともとこれらの分野を教えられる教員が少ないとされる中、新設ラッシュによって人材獲得競争が一層激化しそうだ。
教員の確保に加えて入試問題の作成も、初めて理系学部をつくる大学にとって高いハードルとなりそう。
進研アド入試サポート事業本部の担当者は「理学・工学・農学など理系分野の学部を作れば、入試でも数学・理科・情報などを課す"理系入試"が求められる」と話す。
「文系中心の大学でも、数学は授業科目として設定していることは多いものの、理科や情報に関しては対応に困りがち。特に初年度の入試問題を作る時点では新学部の教員がまだ着任していないため、頭を抱えている状態だ」。
同じく文科省の「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」に選定された高校は理系学部進学率の目標値を設定しているため、大学・高専機能強化支援事業選定大学の学生募集における重点ターゲットとなる。DXハイスクールの教育で力を入れている「情報」に呼応する入試は、高大接続、入学者確保のための重要課題と言えよう。
大学・高専機能強化支援事業に選定された大学や申請を予定している大学は、DXハイスクールをはじめ高校とのコミュニケーションを深め、高校教育の実態をふまえた良質な入試を設計することが大切になる。
文科省は、大学・高専機能強化支援事業の申請を2032年度まで毎年受け付ける。2026年度の申請はこれまでと同様2025年12月から公募を始める見込みだ。