2024.0917

次年度から全国学生調査を本格実施、全大学の結果公表は「なし」

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3行でわかるこの記事のポイント

●試行版と同様、「任意参加制」で実施
●高評価の大学の一覧公表で参加意欲向上を図る
●2026年度からは参加や結果公表の有無が補助金に反映される方向

*🔗有識者会議で配付された資料
*記事内の図表は文科省の公表資料から引用

文部科学省は、2025年度から始める大学・短大の「全国学生調査」(本格実施)の実施方針をおおむね固めた。参加全大学の結果公表は見送り、質問項目ごとに学生の評価が高い大学の一覧を分野別に公表。2026年度の調査からは、調査への参加や大学による結果公表の有無を補助金の算定要素にする方向で検討するという。


大学独自の学生調査の中での実施も可能

「全国学生調査」は、学生本位の教育への転換を目的に、2019年度に試行版がスタート。202410月から実施する🔗4回目の試行版までの結果をふまえ、2025年度から本格実施に移行する。
このほど開かれた同調査の有識者会議で示された実施方針案の概要は、以下の通り。

🔻基本方針
学修の主体である学生の目線から大学教育や学びの実態を把握することによって、①各大学の教育改善に活用する、②学修成果や教育成果に対する進学希望者やその保護者等、各ステークホルダーの関心と理解を深める、③政策立案の基礎資料として活用する、④学生が学修や大学生活を充実させ、卒業後について考える契機にする―等の目的を果たす。

🔻調査対象
参加を希望する大学・短大の2年生と、4年生(最終学年。短大は最終学年のみ)

🔻実施頻度
2025年度以降、原則として毎年度実施

🔻調査方法
各大学が次のいずれかを選択
①文科省が実施するインターネット調査に参加
②大学独自の学生調査の中に全国学生調査の質問項目を設定して実施
*②では、大学コンソーシアム等で共同実施する調査の活用も可能

🔻質問項目
大学の負担を軽減し、経年比較を可能にするため、当面は原則として、第4回試行版の「選択式33問程度、自由記述1問」から変更しない。

🔻調査結果の公表や活用
〈文科省による公表〉
①各質問項目で肯定的な回答の割合が高い大学について、学部ごとに上位から一覧化した「ポジティブリスト」を公表。

positivelist.png

②公表に同意した大学の回答全体の集計結果を公表

*①②いずれも、集計基準を満たしている場合に文科省のホームページで公表する。
*参加大学には、当該大学の学生の回答一覧や自学の分析に活用できる資料を提供する。

 〈各大学による公表等〉
・調査結果の積極的な発信に努める。
IRFDSD 活動、自己点検・評価、教育改善での活用に努める。 

計3回の試行版への参加率低迷をふまえ、公表のあり方を再検討

試行版では設置者別、学部規模別、学部分野別などでまとめた調査結果を公表しているが、本格実施では当初、すべての参加校について、大学単位で結果を公表する方向だった。
しかし、過去3回の試行版への参加率が伸び悩んだことをふまえ、文科省はこの方向性について再考。大学単位の公表を前提にすると参加率がさらに下がりかねないと考え、学生からの評価の高さをアピールできる「ポジティブリスト」の公表に切り替えた。
担当者は「大学に参加のメリットを感じてもらい、結果を有効活用してもらうことから進めていきたい」と説明する。

文科省は大学の参加や結果の公表を促す方策として、本格実施2年目となる2026年度以降は、基盤的経費等、補助金の申請・採択において、参加や結果公表の有無を加点要素や要件にする方向で検討する。中央教育審議会大学分科会🔗「高等教育の在り方に関する特別部会」の中間まとめでの提言をふまえた対応だ。

本格実施初年度の2025年度の全国学生調査については、同年4月以降に各大学に実施要領を通知し、参加希望の大学にはシステム操作方法、データ提出方法など、具体的な運用のマニュアルを送付する予定だ。

なお、第4回試行版については、20249月に最終的な参加意向調査を実施したうえで、10月から翌年3月まで学生調査を実施。同年7月頃までに調査結果を公表するという。