"興味"を"志望"に育てる~LINE活用でチャレンジ ③メールに比べ圧倒的に高いリアクション率-甲南大学
学生募集DX
2024.1202
学生募集DX
3行でわかるこの記事のポイント
●「受けやすい入試」をアピールして併願層開拓に注力
●広報戦略に基づき、属性に応じた複数のカテゴリで情報を送り分け
●志願者数増加をふまえ、施策のブラッシュアップを検討
甲南大学は2024年度から、LINEを活用した学生募集広報のデジタル化に取り組んでいます。第一志望層に加えて併願層の拡大にも力を入れ、志望度を高めていく「ナーチャリング」にLINEがどのような効果を発揮するのか、同大学の取り組みを通じて明らかにします。
🔗"興味"を"志望"に育てる~LINE活用でチャレンジ ①独自調査から見るアカウント取得状況、友だち登録数
🔗"興味"を"志望"に育てる~LINE活用でチャレンジ ②1to1で寄り添うコミュニケーション-戸板女子短大
🔗〈学生募集をDXで動かす~接触者育成のシナリオ〉vol.10 LINE活用に関するお悩みはこう解決!
甲南大学(神戸市)は8学部1学環を擁する総合大学。「関関同立」「産近甲龍」のいわゆる「関西8大学」の中で唯一、学生数(約8800人)が1万人を切ります。「ミディアムサイズの総合大学」と称する独自のポジションで根強いファン層を持ち、そこから入学者を集めてきました。
しかし、近年は志願者数が低迷。その背景について、アドミッションセンター学生募集広報担当の荻山菜邦課長は「ガラパゴス化した募集広報」という言葉をまじえ、次のように説明します。「本学は良くも悪くも真面目です。『良い教育をしていれば、ちゃんと伝わる。本学の良さをわかってくれる第一志望のファンに来てほしい』という考え方で、他大学に追従する入試改革や、学生募集広報で目立つことには消極的でした」。
一方、競合校では矢継ぎ早の入試改革、戦略的な募集広報が展開されてきました。その中で自学の良さを十分に伝えきれず、志願者が減り続けたという見方です。
接触者リストの人数も伸び悩み、リストを活用して接触者を志願者に育成する施策も停滞。
危機感を強めた荻山課長らは、厳しい現状や予測を示すデータを他大学の動きとあわせて経営陣に積極的に上げ、「待ったなしの状況」との認識を共有。募集戦略の抜本的見直しについて了解を得ました。
荻山課長らがめざす方向性は「第一志望のファン層だけに固執せず、併願校として甲南大学に興味を持つ高校生(接触者)を増やして志望度を上げていく」というもの。その第一歩として、併願しやすい入試への見直しに着手しました。
2023年度入試で外部英語試験活用型試験を導入。2024年度入試では公募制推薦を受けやすくするため、選考方法を変更しました。これらも奏功し、志願者数は2023年度、2024年度と続けて対前年比で10%以上増加しました。
続く2025年度入試では、一般選抜の入試日を競合校とずらし、外国語(英語)の試験で独特の英作文問題を廃止して公募制推薦と一般選抜の出題傾向を統一。
これら「受けやすくなった入試」について知ってもらうことなど、募集広報をより戦略的に展開するため、2024年度からはLINEを活用したデジタルコミュニケーションにシフトし、マーケティング・オートメーション(MA)ツールも導入しました。
荻山課長は、募集広報をデジタル化するメリットとして次の4つを挙げます。
🔻デジタルネイティブである高校生にとって抵抗がない
🔻アナログに比べてダイレクトに反応がわかる
🔻コンテンツの制作スピードが上がる
🔻印刷・郵送が不要でコストが安い
「速くて安いので発信の頻度を上げられ、開封率やクリック率などの成果検証に基づくPDCAサイクルも高速化できます。アイデアをすぐに試せて施策の精度も上げられます」
LINE連携が可能なMAツールを選び、年間スケジュールを組んだうえで4月からLINEによる計画的なメッセージ配信をスタート。11月末現在の友だち登録者数は約2万7000人です。約6万人のアドレスを保有するメールでも同じ情報を配信し、効果を比較しています。
学生募集広報担当職員は6人で、一部、入試の実施や高大接続業務も担っています。メッセージ配信の専属担当がいるわけではなく、必ずしも強固な体制とは言えません。そこで、外部の協力会社と連携し、メッセージやランディングページ(LP)の制作、MAツール運用などの一部を外注化しています。
取得した個人情報を基に高校生を複数のカテゴリに分け、入試情報や進路選択に役立つ情報、大学生活の楽しさが伝わる情報などを属性別に配信しています。
文字数を絞り込んだコンパクトなメッセージと画像で印象づけ、伝えたい情報はリンク先のLPやショート動画で見せます。高校生に読んでもらいやすい時間帯として午後7時~8時頃の配信を基本にしています。
多くの大学では、総合型選抜の説明も一般選抜の説明も同じ入試紹介ページに飛ばすことが多いのに対し、甲南大学では入試方式ごとにLPを分けているのが特徴。高校生が飛び先で必要な情報を探さなくて済むように、また、大学側がメッセージごとのリアクションを詳細に分析できるよう、丁寧に導線を引いています。
LPやショート動画の制作を外注化することによって、こうした導線設計やコンテンツの数とクオリティを担保しています。
年間の配信スケジュールは、時期ごとの進路指導や高校生の心理を考慮し、各カテゴリの生徒がどんな情報を必要とするか考えて策定。配信に対するリアクションをMAツールでスピーディに捉え、分析したうえで2か月ごとに計画を修正します。
LINE、メールとも、年間計画に基づき複数のカテゴリで送り分ける「手動メッセージ」のほか、資料請求やオープンキャンパス参加など、アクションに応じてフォローする「自動メッセージ」も配信。これら2通りのメッセージについて、LPのURLクリック率を分析しています。
自らアクションを起こした高校生に対する自動メッセージの方が反応は良く、メールの場合、クリック率の平均は自動メッセージが9.1%、手動メッセージが2.3%。
一方、LINEのクリック率は自動メッセージ26.4%、手動メッセージが18.1%で、メールを大きく上回っています。
手動メッセージから資料請求やオープンキャンパス参加などにつながった割合を示すアクション率を比べると、メールの8.3%に対してLINEは18.1%で、こちらもLINEが2倍以上となっています。
「今の高校生は友だちとのコミュニケーションや情報収集など、日常的にLINEを使っていて、クリックなどのリアクションもLINEの方が気軽にできるのでしょう」(荻山課長)
こうした結果をふまえ同大学では、ファン層のすそ野を広げるというねらいの下、LINEの友達登録者の拡大に力を入れています。2024年9月から、オープンキャンパス参加は原則、LINE登録を必須にしました。初めて接触してきた高校生は登録と同時に個人情報の取得ができ、資料請求等で接触済みの生徒もLINEによる接点が追加されます。
また、新たに制作するLPのほとんどにLINE登録を促すバナーを貼っています。
LINEを活用するデジタル広報は、URLクリックの先で学生募集の具体的な成果につながっています。
🔻9月時点のオープンキャンパス参加者数は対前年比115%
🔻模擬試験での志望校記入数は6月実施回、7月実施回とも対前年比113%
🔻自動メッセージから資料請求やオープンキャンパス参加につながった人数は8000人
これら定量的成果に加え、高校教員からは「甲南大学の志望者が増えたと感じる」という声が聞かれるようになったといいます。
甲南大学では上半期の総括に基づき、下半期以降の施策の見直しが検討されています。募集状況の好転に気を緩めることなく、手を打ち続け、変化し続けることの重要性は学内で認識されています。
「私たちの新たな募集広報は、登山に例えるとまだ2、3合目あたり。登り始めた以上、頂上をめざして進むしかありません。本学に興味を持ってくれる新たな層を開拓し、それぞれが必要とする情報を届けることによって、甲南大学のファンを一人でも多く増やしていく。手応えを感じているこの手法を、さらに深化させたいと考えています」(荻山課長)
*進研アドは🔗本シリーズ①で一部を紹介したLINE活用状況調査の結果について、オンライン会議で詳しくご説明しつつ、貴学のLINE活用についてアドバイスいたします。
以下のリンクから、ご都合の良い日時を選んでお申し込みください。
🔗LINE活用に関する相談のお申し込み