2024.1126

"興味"を"志望"に育てる~LINE活用でチャレンジ ②1to1で寄り添うコミュニケーション-戸板女子短大

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3行でわかるこの記事のポイント

●「メールは一斉配信」「LINEは1to1」と使い分け
●「LINEはオープンキャンパスへの導線」と明確に位置付ける
●高校生や在学生へのヒアリングで継続的に手法を見直し

戸板女子短大の学生募集広報は、学生広報スタッフ「チームといたん」を前面に出す1to1コミュニケーションで多くの大学・短大の注目を集めています。LINEの活用においても1to1を重視し、独自の工夫を多く取り入れています。広報部の田熊祥則課長に詳しく聞きました。

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*田熊課長の話は以下の通り。

オープンキャンパス参加者はLINE登録を必須に

本学の学生募集広報ではメールとLINEの活用率はおよそ2対8で、今はLINEが中心です。
学生に聞くと、若者の間では圧倒的にLINEの方が多く使われ、90%以上の人は主にLINEでやり取りしているという印象です。

LINEは絵文字との相性が良く感情を表現しやすい点でも、高校生とのコミュニケーションにマッチしています。ただし、最近は絵文字の使いすぎは好まれないようなので、注意が必要です。

本学ではMA(マーケティング・オートメーション)ツールを導入していて、LINE連携機能があることが、今のツールを選ぶ決め手になりました。

メールアドレスしか取得していない高校生もいるのでメールでの発信もしていて、LINEと使い分けています。
メールを使うのは同じ情報を一斉に発信する時と、資料請求やオープンキャンパス申し込みといった特定のアクションに対する自動フォローの時。一方、LINEは主に1to1のやり取りで出願に向けて気持ちを温めるために使い、1to1でつながるまでのプロセスでも積極的に活用しています。

もちろん、LINEの友だち登録者の獲得には力を入れています。オープンキャンパス参加にはLINE登録を必須とし、入場用のQRコードもLINEで発行します。
資料請求等で個人情報を登録済みの生徒が参加を申し込んだ場合も、LINEが未登録なら当日の受け付けで登録してもらってから入場させるという運用です。

2024年11月下旬現在、友だち登録者は約7500人です。

忘れられないよう、登録2、3日後にメッセージを配信

LINEでのメッセージ配信にはMAツールを活用し、友だち登録と同時にサンキューメッセージを自動で発信。さらに、2日後か3日後に直近のイベントを自動で案内するよう設定しています。

高校生はLINEだけでもたくさんの「友だち」がいるので、新しく登録したことを意識しているのはせいぜい翌日くらいまで。2、3日たつと忘れてしまうこともあります。
そこで、本学のことを思い出してもらうため登録の2、3日後にメッセージを送り、「イベントに申し込んでおこうかな」という気持ちを引き出すわけです。

その後は基本的に週1回、月曜にメッセージ発信します。試行錯誤を重ね、忘れられず、かつブロックもされない適度な頻度として、ここに落ち着きました。
週末にイベントが多い時期は配信日を水曜に変えて申し込みにつなげやすくするなど、柔軟に運用しています。

ホームページから記事を切り出してLINEのコンテンツに

LINEで発信するコンテンツは、学内イベントやインターンシップの紹介など、さまざまですが、すべてオープンキャンパスなどのイベントの申し込みにつなげます。
本学では、「LINEはオープンキャンパスに来てもらうための導線」と明確に位置づけています。学生広報スタッフ「チームといたん」をはじめ、生き生きした学生の様子を見てもらうことが、本学の魅力を伝える最強の広報だという自負がありますから。

オープンキャンパス来場促進策としてコスメなどをプレゼントする企画は、卒業生の広報スタッフのアイデアをもとに「TOITAガチャ」というネーミングで、LINE上で実施しています。「何が当たるかは回してみてのお楽しみ」というゲーム感覚が、高校生のLINEの使い方とマッチしていると思います。

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LINE用のコンテンツは一から作るのではなく、ホームページの記事にリンクをはる形が基本。興味を引き付ける見出しをつけ、「詳しくはこちら」とURLで記事に飛ぶようにするわけです。
ホームページには学内のイベントや学生の活動など、頻繁に記事や動画を追加するのですが、常に二次利用を考えた構成にします。ホームページは情報の集積所で、そこから記事を切り出していろいろな発信に使う。このやり方によって、LINEの週1回の発信も負担なくできます。

オープンキャンパス当日はリッチメニューが"変身"

LINEのページ下部に置くリッチメニューは、本学の志願者層の志向や動きを意識していろいろカスタマイズしています。
テキストだけではなくビジュアルを多用した華やかなメニューは、「可愛い」と評判がいい。

平日は資料請求やオープンキャンパスの案内にリンクを貼ったメニューを置いていますが、オープンキャンパス当日は開始直前から終わるまでの数時間だけ、イベント仕様に変えます。
例えば、受け付けで入場パスのQRコードを探さなくてもすぐ出せるよう、リッチメニューに設定。プレゼントの受け取りやイベントのエントリなど、来場者がスムーズに動けるようサポートするメニューにしておきます。

オープンキャンパスが終わったらいつものリッチメニューに戻すこと含め、時間設定による自動切り替えです。

メッセージ配信は授業や部活の時間帯をはずす

高校生に寄り添ったコミュニケーションを心がけ、メッセージを配信する時間帯にも配慮しています。
授業や部活、アルバイトなどの活動を邪魔しないよう昼間は避けて、夕方から夜にかけて配信します。帰宅してちょっとスマホを見ていたらメッセージが届き、その場ですぐ読む、そういうタイミングをねらっています。

一方で、高校生からの質問や相談には24時間対応を基本にしています。多くの大学が業務時間外に設定している「質問は9時から17時の間にお願いします」といった自動応答はしていません。

実際、高校生から質問が来るのは夕方・夜間と朝、学校が始まる8時前がほとんど。深夜に来たらさすがに翌朝まで返信を控えますが、21時くらいまではなるべく早く返信するよう努めています。
広報部の職員5人で曜日ごとに担当者を決め、帰宅中の電車の中でも返信します。

進路について真剣に悩んで相談してくる生徒も結構います。時間外の自動返信が来て受け止めてもらえなかったら、そのまま相談することもなく、結果的に本学への出願には至らなかっただろうと思うケースもあります。
時間を区切った対応やチャットボットによる瞬時のレスポンスとは違う、生身の人間として高校生に寄り添うことを大事にしています。

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個人情報と紐づけるため、リアクションを引き出す働きかけ

本学が重視する1to1コミュニケーションのためには個人情報の取得が必須ですが、現状、友だち登録者7500人のうち個人情報と紐づいているのは約半数。
友だち登録までは割と気軽にやってくれますが、メッセージでフォームに誘導しても、個人情報の入力となるとハードルが高く、なかなかそこを越えてもらえません。

本学が使っているMAツールでは、相手が何らかリアクションしてくれれば、ツールにすでに登録されている個人情報と紐づけることができるので、リアクションを引き出すための働きかけをあれこれ工夫しています。
例えば、「今の気持ちを絵文字で表してみてね」「資料が欲しい人は『資料請求』とつぶやいてみて」といった呼びかけをします。

こうしたやり方も、必ずしも効果が高いわけではありません。それでも、反応してくれる生徒は本学とのコミュニケーションに積極的で、出願まで進む確度は比較的高いはず。今後もいろんな働きかけを工夫したいと思います。

氏名や高校名などの個人情報と一緒に聞いているのは、本学の学科(服飾芸術、食物栄養、国際コミュニケーション)と関連づけた「興味があるカテゴリ」で、国際コミュニケーション学科については「ホテル」「ブライダル」「エアライン」などの選択肢を設定します。
これがわかれば、必要とされている情報に的を絞った送り分けができます。ホテル業界に興味がある生徒に食物栄養の情報を送り続けたら、「私のための情報ではない」と思われてブロックされかねません。

登録者の学年がわかっていれば、卒業後にクリーニングすることもできますが、こちらからやらなくても多くの場合、卒業したら自分で登録を削除します。最近の若者は、自分にとって必要なくなった情報は自らシャットアウトする。そういうリテラシーがしっかりしています。

高校生に対する理解を深めることが重要

本学では、高校生からの問い合わせには広報部全員で曜日を決めて対応しますが、それ以外の1to1コミュニケーションはメール、LINEとも私が担当しています。
LINEは法人向け有料プランを使ってさまざまなカスタマイズを加え、MAツールとの連携でコミュニケーションを工夫していますが、LINEやMAツールの機能を全部使いこなせているわけではありません。デジタルマーケティングの専門人材をいかに育てるかというのは本学にとっても大きな課題です。

ただ、メディアやツールを使いこなすこともさることながら、高校生に対する理解を深めることが何より大事。LINEをどんなタイミングでどう使っているか、どんな時にブロックするか、在学生によく聞きますし、高校ガイダンスなど、機会あるごとに高校生にも積極的にヒアリングします。それをふまえて日々、メッセージ配信の修正を重ねています。

他大学でも同じことを感じていると思いますが、入学者は毎年変化しています。去年有効だった広報のやり方が今年も通用するとは限らない。相手のことを理解して常に広報施策をアップデートすることが大事だと思います。


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