ベネッセグループが高校・大学に呼びかけて「高大接続研究会」を開催
学生募集・高大接続
2024.0716
学生募集・高大接続
3行でわかるこの記事のポイント
●探究学習を切り口に、接続の課題や要望を率直に語り合う
●入試が選抜型から接続型に変わる中での連携のあり方を模索
●参加者の多くが継続的な開催を要望
ベネッセコーポレーションと進研アドはこのほど、首都圏を中心とする高校の教員と大学の学生募集担当者等に呼びかけ、有志による「高大接続研究会」を開いた。探究学習などを切り口に、高校・大学それぞれの立場から接続に関する課題や要望を語り合うことによって、相互理解を深めることが目的だ。
埼玉県さいたま市で開かれた「高大接続研究会~今、あらためて高大接続の意味を考える」には、関東地区の高校・大学を中心に教職員計約40人が参加した。
会の目的について、ベネッセ学校カンパニー変革本部高大接続部の富田泰成部長は「高大接続における三位一体の改革が提唱されてから約10年たったが、依然として高校は大学入試、大学は学生募集に意識が行きがち。変化の激しいこれからの社会を生きて働くうえで必要となる能力をどのように育んでいけばいいのか、高校教員や大学職員と前向きな議論をしたかった」と説明する。
会ではベネッセ教育総合研究所の研究員の問いかけを受け、高校での進路指導経験が豊富な大学職員、長年、学生募集・入試に携わってきた大学職員が基調講演をした。
ベネッセ教育総合研究所の山下真司主席研究員は、そもそも「接続」とは何か、何のための「接続」であり、誰にとっての「接続」なのか、「接続」の先に何があるのかと投げかけ、大学の中途退学の実態とその理由を示した。また、高校の探究学習が問題の発見や解決の力を育み、生徒自身の在り方や生き方を考える手立てとなる大切な学びであると説明。一方で、総合型選抜や学校推薦型選抜に向けた対策になっているケースも見受けられると指摘した。
高大接続・連携の取り組み事例として「熊本サイエンスコンソーシアム」などを挙げ、高校と大学の双方が「生徒・学生を真ん中に置いた対話」の機会を充実させることの大切さを訴えた。
滋賀県の公立高校の教員を経て龍谷大学高大連携推進室フェローに就任した堀浩司氏は、自身が仲介役となって複数の高校との間で実施している連携授業に触れた。「提示されたテーマに取り組む高校の生徒よりも、自分たちでテーマを選ぶ高校の生徒の方が生き生きと探究を深め、発表も面白い」と話した。
「少子化によって、今後は選抜型の入試から高大連携を通じた接続型の入試に変わっていく」と述べ、高大連携の重要性に言及した。
東京都市大学で入試部長などを務めた総合企画局企画・広報部の菅沼直治部長は、高校、大学をめぐる教育行政を概観し、「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」など、高校に対しても従来にない新しい政策が打ち出されていることを指摘。「大学入試が選抜機能から集客機能に変わりつつある。一方で、高校の進路指導は山登り型だけではなく川下り型、すなわち、いろいろな活動をしていく中で自分の適性を見つけさせる指導もあり得るだろう」との考えを述べた。
基調講演に続き、高校教員と大学職員混成のグループに分かれてフリーディスカッションを行った。ここでも、探究学習を中心に、高大接続、高大連携に関する現状を報告し合い、問題意識を語り合った。
高校側からは「高大連携のマッチングをするような仕組みがあるといい。現状、連携授業をしたくても大学のどこに連絡すればいいかわからない」といった要望が挙がった。「高大連携は組織同士で実施するものだが、うまくいくかどうかは結局"人"によって決まる。本当にやる気のある人とつながることが大事だ」という発言も。
参加者アンケートでは「大学の本音を聞けて有意義だった。熱意ある方々と接し、襟を正す機会になった」(高校教員)、「探究学習について高校が抱える課題や負担を知ることができた。大学は高校での取り組みをどのようにつないでいけるか示す必要があると、あらためて感じた」(大学職員)といった声が挙がった。
参加者の多くが「今回のように大学と高校が本音で話し合える場を継続的に設けてほしい」と要望した。ベネッセの富田部長は「高校・大学が連携して生徒・学生を育てるための議論の必要性は、われわれも感じている。継続的な会議体について前向きに検討したい」と話す。