2025.0613

推薦・総合型の教科・科目試験は小論文等との併用で年内実施が可能に

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3行でわかるこの記事のポイント

●多面的評価を前提にルールを変更
●学校推薦型選抜では具体的な推薦要件の明示が求められた
●文科省は要項の遵守徹底をあらためて要請

2026年度入試の総合型選抜、学校推薦型選抜において、2月1日より前の「教科・科目に係る個別テスト」の実施が条件付きで認められることになった。先ごろ各大学に通知された同年度の「大学入学者選抜実施要項」(以下、「要項」)に明記された。高校教育への影響に配慮しつつ、多面的評価を実質化することが問われる。

🔗2026年度大学入学者選抜実施要項


条件は「小論文等」か「本人記載資料や高校記載資料」との組み合わせ

2026年度入試の要項では、従来の「個別学力検査」という名称を「教科・科目に係る個別テスト」に変更。実施時期について誤った解釈が生じないよう、「各大学が実施する教科・科目に係る個別テスト」と定義を明確にした。

これまでは一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜いずれにおいても、「個別学力検査」の実施期日は2月1日以降と決まっていた。
今回の要項でもこの原則を維持しつつ、総合型選抜と学校推薦型選抜について、条件つきで2月1日より前の実施を認めることを明記。条件は、調査書等の出願書類に加え、「小論文・面接・実技検査等の活用」または「志願者本人が記載する資料(活動報告書、大学入学希望理由書、学修計画書など)や高等学校に記載を求める資料等の活用」と組み合わせて丁寧に評価することだ。多面的評価のために、他の評価観点とあわせて教科・科目に係る個別テストを実施するという考え方だ。
高校教育への影響や受験生の負担に配慮することも明記した。

要項では、小論文・面接・実技検査等の位置づけをあらためて明確にする記述も追加された。主に小論文を念頭に、 教科・科目に係る個別テストとは異なる評価方法として規定しているとし、「専ら教科・科目に係る知識等を問うことにならないよう」求めている。
「大学入学者選抜協議会」(以下、「協議会」)では、一部の大学が実質的に教科・科目の知識を問う小論文を課していることの是非について議論。多面的評価の一環として教科・科目に係る個別テストの年内実施が可能になることもふまえれば、小論文がこのテストと同じ評価方法になるのは適切ではないという考え方だ。小論文は思考力・判断力・表現力などを問う内容にする必要がある。

学校推薦型選抜の推薦書のフォーマットを例示

協議会は学校推薦型選抜の在り方についても議論をし、今回の要項に反映した。
「入学志願者自らの意志のみで出願できるものではなく、特定の大学・学部等で教育を受けるにふさわしい能力・意欲・適性等を有する入学志願者を高等学校長が判断する」という位置づけを明確化。高校が個別の生徒について推薦の可否を判断して推薦理由を説明できるよう、「推薦要件を可能な限り具体的に設定し、募集要項等により示さなければならない」とした。
推薦書のイメージとして、アドミッション・ポリシーとの対応の観点から推薦理由の説明を求めるフォーマットを例示した。

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これら は、高校側からの「氏名欄のみで、推薦理由の記入欄がない推薦書もある」「評定などの推薦基準が示されないと、誰を推薦していいかわからず困惑する」といった指摘をふまえたものだ。
また、高校側からは「併願可の学校推薦型選抜は、当該生徒がこの大学・学部にふさわしいから推薦するという本来の趣旨に反している。専願のみにすべきだ」との意見もあり、協議会で議論された。しかし、高校側でも意見が分かれたため、要項でのルール化は見送った。

文科省は要項の遵守徹底をあらためて要請

総合型選抜、学校推薦型選抜での教科・科目に係る個別テストについては、2025年度入試まで、要項が認めていない年内実施が見られ、実質的にこのテストのみで合否を判定する大学もあった。
大学側は、これら年内入試においても基礎学力を把握したいとする要望を協議会に提示。他の評価法と組み合わせた丁寧な評価を条件に、2月1日より前の実施を認めるよう求めていた。これを受けて協議会が検討し、2026年度入試の要項がまとまった。

文科省は今回の通知の冒頭で、2025年度入試において「要項違反が多数散見された」と指摘。要項見直しの過程で国公私立大学の代表者が要項の遵守を表明したこともふまえて新しい要項の合意に至ったと説明し、大学に対してあらためて要項の遵守徹底を求めた。