2023.0718

くらしき作陽大学が探究支援プログラムと修了者対象の総合型選抜を導入

この記事をシェア

  • クリップボードにコピーしました

3行でわかるこの記事のポイント

●探究を通してやりたいことを掘り下げる機会を提供
●総合型選抜では探究プロセスを通じた気づきや展望を評価
●大学の生き残りをかけ、学修意欲の高い入学者を確保

くらしき作陽大学は2023年度から、高校生に探究の機会を提供するワークショップを始める。修了者を総合型選抜で受け入れる一方、同じく総合型選抜で高校での探究経験を評価する新たな入試も導入。探究型授業の運営に苦労する高校を支援しつつ、自学の教育に触れて意欲を高めた入学者を確保したいとの期待もある。


●各学部の専門分野とSDGsを結びつけたテーマを設定

 くらしき作陽大学は岡山県倉敷市にある私立大学で、子ども教育、食文化、音楽の3つの学部で計370人の入学定員を設けている。
 同大学では、2023年度に「作陽探究ワークショップ」をスタートさせる。初年度は、高校の全学年を対象に8月9・10の2日間にわたって実施。3学部それぞれの専門分野とSDGsのゴールを結びつけたテーマを設定する。食文化学部の場合、「食文化・栄養×SDGs」の観点から「10代の健康・栄養課題」「健康で持続可能な食環境」といったテーマを設定。高校生は興味のある学部を選んで参加を申し込む。

3gakubu.png

 2日間の全日程を修了した生徒は、総合型選抜に新設された探究学習評価型入試の出願資格を得られる。 

●コロナ禍の中でも対面の公開講座を継続

 くらしき作陽大学は、4年ほど前からオープンキャンパスの回数を減らす一方で、高校生対象の公開講座「オープンセミナー」を月1回のペースで開催。修了者を対象とする総合型選抜も実施している。セミナーの受講態度はおしなべて良好で、学修に意欲的な入学者を確保できているため、コロナ禍の中でも感染対策を講じて対面で続けてきた。
 入試広報室の島野淳室長は「受験情報誌やサイトでは十分に伝えきれない大学の授業の面白さに触れ、取得できる免許・資格や就職実績以外の基準で大学を選ぶ視点を持ってほしい。そして、授業体験を起点にした入試でミスマッチのない高大接続を図りたいと考えた」と説明する。

●2022年度に協定校でワークショップを試行実施

 「作陽探究ワークショップ」は「オープンセミナー」の内容に、「課題設定」「探究」「成果発表」というサイクルを取り込んで発展させたものだ。2022年度施行の新学習指導要領の下、高校では「総合的な探究の時間」を設けることになった。「しかし、特に普通科高校からは、どうやって探究授業を設計・実施していいかわからないという声を多く聞いている」と島野室長。「大学の教育はまさに探究そのものなので、プログラムを提供することによって高校教育を支援できると考えた」。
 「地方中小規模の私大である本学が生き残っていくためには、基礎学力に加え、学ぶ意欲が高く 、自分のキャリアを見据えて進路を選ぶ高校生を受け入れていく必要がある。探究学習は将来、自分がやりたいことを掘り下げて考えるきっかけにもなる」
 2022年度は教育包括協定を結ぶ岡山県立高校と私立高校の計2校で試行的にワークショップを実施。50分×4回の出前授業を行った。その手応えをふまえ、2023年度からは大学を会場に、生徒が個人単位で参加する形式で本格実施する。学校単位での実施を希望する高校が出てきた場合、「すべてに対応することは難しいにしても、可能な限り応えていきたい」(島野室長)という。

●ファシリテーターの学生が議論を活性化

 2023年度のワークショップは90分×2コマを2日連続で実施。教員による講義を受けたうえでグループごとにテーマを決めて調査等の探究に取り組み、最後に成果を発表する。
 各学部3人前後の教員が担当。入試広報室が「通常の大学の授業の焼き直しではなく、高校生が『明日から応用できることを学べた』と満足できる内容にブラッシュアップしてほしい」と依頼し、教員に内容の修正を求めることもあるという。島野室長は「高校生目線を重視する我々の注文に教員が柔軟に応じてくれるのが本学の強み」と胸を張る。
 グループワークには各学部の3年生を中心に6、7人の学生がファシリテーターとして参加。高校生にとって年齢の近い先輩は質問や相談がしやすく、議論が活性化する効果を試行実施で確認済みだ。
 子ども教育学部のワークショップは特別支援教育が専門の教員が担当し、まちづくりの観点から教育にフォーカスする。障害者支援のNPOや子育て中の人へのインタビューを交えて「すべての人にやさしいまちづくり」について考える。この探究活動を通して、自分が将来やりたいことを明確にしてもらうねらいがある。

●高校1年次の受講証明書を2年後の入試で活用することも可能

 ワークショップの成績評価は行わず、修了者には探究学習受講証明書を発行する。これが新設する総合型選抜「探究型B」の提出書類となる。自学のプログラムで探究に取り組んだことを前提に、提出書類は受講証明書、調査書等、最小限にとどめる。「受講を通して志望理由も明確になっているはずなので、志望理由書も課さない」(島野室長)。口頭試問ではワークショップで何が得られ、それを大学入学後にどう生かしたいかを聞く。探究の成果のクオリティではなく、あくまでそのプロセスを通して学んだことを評価する考えだ。

sogosenbatsu.png

 高校1年でワークショップに参加した生徒が2年後の入試に出願することもできる。「低学年であっても、90分×4回のワークショップを修了することで、学びに対する姿勢を評価できる。また、低学年で参加する生徒はそれだけで終わらず、何らかの形で学びを発展させるはず」。島野室長はそう説明する。
 「本学は大乗仏教に基づく『自利利他』(自己の研鑽だけに留まることなく、他者に利益をもたらすことを自身の利益とする)の精神を掲げている。ワークショップを通して教育、食、音楽、それぞれの分野で他者に喜びを与えることにやりがいを見いだし、学ぶ意欲を高めた入学者を増やし、大学での学びに接続させたい」

●自学の教育にマッチした学生確保のため年内入試を推進

 この新入試と同時に、高校での探究活動を評価する総合型選抜「探求型A」も導入する。探究授業や課外活動の成果を活動報告書やプレゼンテーション、面接でアピールしてもらう。
 「探究型」A、Bいずれの入試でも成績優秀者は特待生の権利を得られる。
 従来のオープンセミナー入試に探究学習評価型の入試2つが加わり、総合型選抜のバリエーションが増える。島野室長は「一般選抜の志願者確保が年々難しくなり、国公立大学でも総合型選抜の枠が拡大される中、本学も自学の教育にマッチし、意欲の高い学生をより多く確保できる年内入試を推進する必要がある。このねらいの下、中四国エリアではまだあまり例がない探究支援プログラムと探究評価型入試で先行し、成果を出していきたい」と話している。