2020.1006

社会科学系の学生に求められる学びとは?-ベネッセセミナー<上>

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3行でわかるこの記事のポイント

●リカレント教育受講データを活用して業界ごとのトレンドを分析
●DXは各業界共通の課題でデータの抽出・可視化・活用スキルのニーズが高まる
●データ可視化の新技術、新たな開発手法への対応のため人に関わるビジネススキルが人気

企業が社会科学系の学生に期待しているのは「AI・データサイエンスのリテラシーを新たな価値創造につなげてビジネスを変革する力」。ベネッセコーポレーションは、社会人の学習履歴データと企業へのインタビューからこのような結論を導きだした。その詳細を報告した大学教職員向けセミナーを2回にわたってレポートする。前半は、社会人の学習履歴データに基づく全体的な傾向と業種ごとの特徴を取り上げる。
社会科学系の学生に求められる学びとは?-ベネッセセミナー<下>


 ベネッセコーポレーションによるセミナー「これからの時代に対応した教育の在り方を考える会(社会科学編)」は9月下旬にオンラインで開かれ、大学教職員約220人が参加した。
 技術革新が加速し、「Society5.0」「DX(Digital Transformation)」「VUCA (Volatility<変動性>、Uncertainty<不確実性>、Complexity<複雑>、Ambiguity<曖昧性>)」などのキーワードに象徴される時代変化の下、社会人はどんな知識・技能の修得をめざし、企業は社会科学系の学生にどんな学びを期待しているのか。セミナーでは、ベネッセが提供するオンライン学習プラットフォーム「Udemy」における社会人の学習履歴データを分析、さらに社会科学系の学生を多く採用している企業へのインタビューもふまえて報告がなされた。
 セミナーの第1部「社会人のリカレント教育の学習歴データの分析と企業インタビューのご報告」の前半部分の概要は以下の通り。


●OAスキル、AI・テクノロジー、ビジネススキルの各学びのトレンド

 現代社会のキーワードの一つである「DX」について、経済産業省は「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義している。多くの企業が新しい時代を生き抜くためにDXに着手している。
 業界ごとの取り組み例は下図の通りで、AIやIoT、クラウド等、テクノロジーを活用した新しい価値創造がなされている。例えば、スポーツ業界のDXの実践例としては2019年のラグビーワールドカップで注目された、対戦カードや集客状況によってチケットの値段が変わるダイナミックプライシングが挙げられる。

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 では、このような変革を進めるために企業、企業人は学びをどのようにアップデートしているのか。日経平均株価の「日経225」社のうち20%が採用しているオンライン学習プラットフォーム「Udemy for Business」の5万6000人の学習履歴データから業界ごとのトレンドを分析してみた。
 全業界の受講者数トップ20の講座は下表の通り。緑色はOAスキル、オレンジ色はAI・テクノロジー、水色はビジネススキルにそれぞれ関連する講座となっている。

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 OAスキルでは生産性向上に貢献するExcelの講座が上位に来ている。AI・テクノロジーでは最新技術の概況をつかむ講座が人気だ。ビジネススキルは統計、会計、プレゼンテーション、デザイン思考、コーチングなど多様な分野で受講されている。
 次に業界ごとの傾向を捉えるため、金融、コンサル、メーカー、テックの4つの業種で受講者数トップ50の講座をピックアップし、全業界の総受講者数に占める各業種の受講者数の割合が高いものを一覧にして見ていく。

●メーカーはAIの知識をビジネスに応用する観点からG検定に注目

 まず金融業界だが、Excelのニーズの高さは、企業評価などファイナンスにおける活用と生産性向上に必要なスキルだからだろう。一方、 AI・テクノロジーではフィンテック(金融とテクノロジーを組み合わせたイノベーション)に関連するブロックチェーンが人気だ。金融分野以外での売り上げを伸ばす動きの中でAI・テクノロジーに対する関心が高くなっている。

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 コンサル業界はどうだろうか。Excelは顧客の経営を把握するための財務や会計のスキルのベースとして学ばれている。全ての業界でデータ活用がカギとなる中、コンサルもデータに基づく支援が主流となりAI・テクノロジー関連の学びが活発だ。データ取得のためのSQL、データの可視化のためのPower BIやTableau、基盤に関するプログラミング言語などを学んでいる。

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 続いてメーカーについて見てみよう。当然のことながらAI・テクノロジーに関する受講が多く、ものづくりの延長線上のIoTと機械学習、AI・データサイエンスのベースとなるPythonに対する関心が高い。人事担当者の間ではディープラーニングの基礎知識と活用能力を見るG検定が注目されている。AIの知識をビジネスにつなげる観点からこの検定が活用され、若手のアイデアを評価するうえで管理職の受検も推奨されている。

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 最後にテック業界だが、フロントエンジニアの受講が多く、AI・テクノロジー分野ではAWSなどのインフラ系やプログラミングの講座が人気だ。アジャイル開発(システムやソフトウェアの機能を小さな単位に分けて設計・実装・テストを繰り返すプロジェクト開発手法)が浸透する中、ビジネススキルの分野ではコーチングやコミュニケーションに関する受講がトレンドになっている。毎週の会議での意思疎通など、コミュニケーション能力が求められるためだ。
 テック業界への就職を希望する社会科学系の学生はこうしたビジネススキルを強みとしつつ、ここで示したAI・テクノロジーに関する素養もある程度、身に付けて意中の企業にアピールするといいだろう。

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●業界ごとのキーワードの意味とそれぞれの関連性を説明する力を

 ここまで見てきた講座の人気コンテンツから業界ごとのキーワードを抽出すると下表のようになる。

keyword.png

 どの業界でもDXが課題となり、データを取り出して可視化し、活用するスキルが求められている。AIの活用は業界ごとに差があるが、メーカーやテック業界をめざす学生は「AIをさわったことがある」と言える程度には学んでおく方がいいだろう。
 どの業界をめざすにしても、その業界のキーワードの意味とそれらがどう関連し合っているか、説明できるようにしたい。

<下>に続く


セミナーの第2部では、社会科学系のカリキュラム設計や改組を支援するオンデマンド型動画配信サービス「Udemy」が紹介された。
*大学向けの「Udemy」紹介サイトはこちら

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