2018.0221

改革総合支援事業で函館市、鳥取県など9つのプラットフォームを選定

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3行でわかるこの記事のポイント

●タイプ1~4で全4年制私大の8割にあたる478校が申請
●改革の進展で選定ラインが上がる中、申請校は年々減少
●次年度から補助金増減の指標となる「教育の質」は大規模校ほど選定率が低い

文部科学省の私立大学等改革総合支援事業の選定結果がこのほど発表され、新たに設けられた「地域の高等教育プラットフォームの形成」では9つのプラットフォームとこれらに参加する74大学が選ばれた。今後、全ての大学に求められる教育の質向上への取り組みモデルとして、このテーマにおける選定大学の事例も示された。

*選定校の一覧はこちら
*文科省公表の各種資料はこちら


●2017年度の予算総額は192億円

 私立大学等改革総合支援事業は大学、短大、高専が対象で、今回が5年目。従来の「タイプ1 教育の質的転換」「タイプ2 地域発展」「タイプ3 産業界・他大学等との連携」「タイプ4 グローバル化」に、今回新たに「タイプ5 プラットフォーム形成」が加わった。これら5つの課題それぞれについて全学的に取り組む大学等に対し、経常費、設備費などを一体的に支援する。2017年度の予算総額は設備費等を合わせ192億円。
 大学は複数のタイプに申請できる。申請時には、タイプごとに設定された改革の進展度の評価項目について自己評価する。その総合得点の高い順に選定され、配分額に得点が反映される。
 大学単位で申請するタイプ1~4について4年制大学は延べ1143校、実数では私立大学全体の約8割にあたる478校が申請し、延べ497校、実数で317校が選定された。実数での選定率は66%だった。

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 申請大学の実数は2013年度の520校から年々減少。各大学の取り組みが進んで毎年、選定ラインが上がっているため、そこに届かず申請を見送る大学があると推測される。評価項目では同じ取り組みについて毎年、継続的に聞き、実施率が100%近くに達したものは削除して新たな取り組みを追加する。
 タイプ1~4すべてで選ばれたのは国際医療福祉大学、東京都市大学、芝浦工業大学、岡山商科大学、福岡工業大学、長崎国際大学の6大学で、長崎国際大学は地域の大学群で申請するタイプ5でも選ばれた。

●プラットフォーム参加大学の配分額は貢献度に基づき決定

 今回加わった「タイプ5 プラットフォーム形成」は、地域の大学群が自治体、産業界と連携して高等教育の中長期計画策定に取り組む。代表大学がプラットフォーム全体としての評価項目に答え、各参加大学が連携における自学の貢献度に関する評価項目に答える形で申請。プラットフォームが選定されると申請した参加大学が全て選定される。プラットフォーム全体の得点で支援総額が決まり、各大学の配分額は個別の得点によって決まるという仕組みだ。3大都市圏の「都市型」とそれ以外の「地方型」とで評価レベルが異なる。
 初年度は21のプラットフォームとそれらに参加している119大学等が申請。その中から「キャンパス・コンソーシアム函館」「とっとりプラットフォーム5+α」など9プラットフォーム74大学が選定された。
 自治体との連携が必須で、評価項目で「自治体からプラットフォームの運営に対する支援があるか」というハードルも課されているため、自治体へのインセンティブとして次年度から地方交付税による支援も予定されている。

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●宮崎国際大学はシラバスチェック委員の下、授業外学修時間等を明記

 私立大学等改革総合支援事業では、申請大学や選定大学についてさまざまなデータが公開されている。「タイプ1 教育の質的転換」における選定率を収容定員の規模別に示したグラフからは、規模が大きくなるにつれて選定率が下がる傾向がわかる。「シラバスの記載内容」「学修時間の把握」等、教学改革に関する全学的な意思統一は規模が大きいほうが難しいためだと考えられる。

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 次年度からは、タイプ1の評価項目の多くが一般補助増減の調整係数の算定に使われるようになる。従って、これまでタイプ1に申請しなかった大学や選定されなかった大学も、補助金を減らさないためには評価項目を確認し、優先順位をつけて取り組みを進める必要がある。
 その際に参考になりそうなのが、今回、高得点でタイプ1に選定された9つの大学等が自学の取り組みとその成果についてまとめた報告資料だ。
 2014年度を除いて毎回、タイプ1に選定されている宮崎国際大学の場合、シラバスチェック委員を置いて授業外学修の内容と時間、DPとの関連をシラバスに記載する、年2回の授業外学修時間の調査・分析・指導、DPルーブリックやeポートフォリオ、アセスメントテスト等で学修成果を可視化するといったことに取り組んでいる。その結果、エビデンスに基づいて授業改善を進めることへの積極性が高まったという。
 椙山女学園大学では、学長の直下に大学運営会議を設けて全学的な視点で改革の企画・立案や実行、検証を行っている。シラバス作成時に授業でのアクティブ・ラーニングの手法を明確化し、2017年度はアクティブ・ラーニング型授業が全体の87.2%に達した。高大接続改革については、入学センターの下にAO選抜第1次評価判定会議を置き、センター主導による評価・判定でアドミッション機能を強化した。
 2018年度の私立大学等改革総合支援事業は、私学助成の配分ルールの変更に伴い規模を縮小。予算は131億円で、現在、タイプ3でひとくくりになっている産業界との連携と他大学等との連携を分けるなど、内容についても一部変更が予定されている。
*記事中の図表はすべて文科省発表資料より


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