2年目の私大研究ブランディング事業ー「全学の看板作り」の理解が前進
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2017.1115
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3行でわかるこの記事のポイント
●学長のリーダーシップの下、研究を基軸としたブランディングを支援
●浸透させたい自学のイメージや伝えたいステークホルダーを明示して申請
●188の申請校の中から計60校が選ばれた
私立大学等経常費補助を活用する「私立大学研究ブランディング事業」に選定された60校が、このほど発表された。初年度に比べ、「研究の支援ではなく、ブランディングを支援する事業」という趣旨が浸透し、ブランディング戦略を的確に説明する大学が増えたという。文部科学省がモデルケースと位置付ける「近畿大学のクロマグロ」のように、「いち押しの研究」を知名度向上、学生募集につなげられる大学が今後、出てくるか注目される。
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2年目となる「私立大学研究ブランディング事業」は、学長のリーダーシップの下、優先課題として全学的な特色を打ち出す研究に取り組む私立大学に対し、3年間または5年間、経常費・施設費・設備費を一体的に支援する。研究を基軸として全学の価値を高めることを目的とし、研究内容だけでなく、それを全学で支援する体制の構築、大学全体のブランド力向上につなげる広報戦略なども評価対象となる。
2017年度の予算額は79億円(経常費55億円、設備費13億円、施設・装置費11億円。前身となる「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」の継続支援分も含む)で、経常費は1大学あたり年額2000~3000万円を配分する。
「タイプA 社会展開型」は3大都市圏以外にある大学、または収容定員8000人未満の大学が対象で、地域の資源活用、産業の振興・雇用創出、文化の発展等に寄与する研究を支援する。特に、地方の小規模大学が地域密着型の研究によって存在感を高め、学生の安定的確保、地域における人材の定着という付加価値を生み出すことが期待されている。一方の「タイプB 世界展開型」は、全国的あるいは世界的な経済・社会の発展、科学技術の進展に貢献する研究が対象。
2017年度の選定校は、タイプAが短大5校を含む33校(申請は123校)、タイプBが大学のみ27校(同65校)の計60校。全体の選定率は初年度より12ポイント高い32%だった。2年連続で選定されたのはタイプAの金沢工業大学、タイプBの順天堂、上智、中央、東京理科、名城、関西の各大学、計7校。
タイプAは、北海道科学大学「北国生活環境科学拠点~積雪寒冷地域における医社工連携をとおした超高齢社会対応のための技術展開と普及」、松本大学「健康づくりを核に自治体・企業・医療機関と連携して進める元気な地域づくり」など、地域特性を生かした研究、継続的な取り組みを基盤とした研究などが選ばれた。福岡医療短大、西九州大学短大部、佐賀女子短大、鹿児島女子短大など、九州の短大の健闘が目を引く。このうち佐賀女子短大は「短期大学におけるダブルディグリープログラムを推進する韓日語併記学習教材の開発と韓国文化研究拠点の構築」で選定された。
タイプBの選定校は、帝京大学「グローバルな視点からの危機管理3カテゴリー(事故、災害、テロ)の学際的エビデンス構築」、大谷大学「仏教を基軸とする国際的研究拠点の形成と<人間学>の推進」など。
「私立大学研究ブランディング事業」は研究支援を目的とする科研費等とは異なり、研究を軸としたブランディングのための事業で、審査の配点にもこの趣旨が表れている。60点満点中、「事業目的」「期待される研究成果」「事業実施体制」等が各9点であるのに対し、「ブランディング戦略」は21点と高い配点だ。初年度はこの趣旨が十分理解されず、申請書類では、研究内容の説明の手厚さに比べてブランディング戦略の説明が不十分な大学も多かったという。
今回は審査の観点を細分化し、観点ごとの配点も明確にした。「事業目的」では、実現しようとする大学の将来ビジョンの説明を求めた。「事業実施体制」では、「学長のリーダーシップの下、全学的に事業を実施する体制が整備されているか」「研究活動、ブランディング戦略、事業全体それぞれのPDCAサイクルが機能するか」といった観点で審査した。
「ブランディング戦略」については、ブランディングの主な対象となるステークホルダー(受験生・在学生および保護者、地域住民・企業、学生の就職先等)、事業を通じて浸透させたい自学のイメージ、アンケート調査等で分析された自学のイメージ、情報発信手段、成果指標等の検討を促す書式になっている。初年度に比べ、この部分の説明がしっかりなされている大学が増えたという。
文科省は2018年度も今年度並みの50~60校を選定したい考えで、経常費は12億円増の67億円を要求している。経常的経費の支援という事業の性格上、連続選定には事業委員会から慎重な意見も出ている。今回、初年度に選定された大学についてはハードルを上げる審査項目を設けたが、選定校の1割以上が2年連続となった。文科省は、大学の特色化を促す事業であることも念頭に、次年度の取り扱いを考える。選定済みの大学は審査でのハードルをさらに上げる、あるいは申請を受け付けないといった対応が検討されそうだ。
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