次年度からの私学助成-定員割れの減額率を上げ、教育の質で増額も
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2018.0129
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3行でわかるこの記事のポイント
●教学マネジメント体制、学修成果の把握等が教育の質の指標に
●改革総合支援事業、経営強化集中支援事業の対象校数は大幅減
●財務省の方針は「私学助成を経営困難校の延命手段にしない」
2018年度から私学助成の配分ルールが大きく変わる。定員割れによる減額率が大きくなる一方、教育の質も評価指標に加え、めりはりある配分をめざす。定員割れの大学にとってはより厳しくなるが、教育の質向上に努めていれば手厚く支援され、場合によっては従来並みを維持できる、もしくは増えるケースもありそうだ。一方で、定員を満たしていても教育の質によって配分額が減る大学が出てくることも予想される。
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今回の見直しは、財務省が文部科学省に「私学助成が経営の厳しい大学の延命策になっているのではないか」と迫ったことが発端。財務省は2012~2016年度の私立大学等経常費補助交付状況をふまえ、「対象校の半数以上が定員を満たしていない」「定員割れが5年間続いた大学等も4割に上る」「定員割れの大学等への補助額が全体の2割を占めている」などと指摘。特に、意欲的な取り組みを支援する特別補助の総額が定員割れの大学等の分で増加傾向にあることが問題視された。
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文科省と財務省による検討の結果、定員未充足に対する調整係数の強化、改革総合支援事業等の対象校削減や選定方法の見直し、教育の質を評価する指標の導入などを決定。「経営努力が見られない大学への厳しい対応」「教育に努力する大学の支援」というめりはりをつける方針を打ち出した。
その方針の下、2018年度予算案における私立大学等経常費補助の総額は前年から1億円増の3154億円。内訳は一般補助2697億円(+8億円)、特別補助457億円(-7億円)となった。特別補助で配分される私立大学等改革総合支援事業の一部を一般補助に移すことによる内訳の変動で、一般補助の増額は2011年度以来7年ぶり。
私学助成配分ルールの具体的な変更点は次の通り。
一般補助(経常的経費の支援)
① 定員未充足に対する調整係数の強化
現在、収容定員充足率が9割以下になると段階的に2%~50%の減額(充足率5割以下は不交付)となるが、この係数をより厳しくする。係数はこれまで徐々に強化され、今回の見直しは2011年度以来7年ぶりとなる。定員超過に対する調整係数は現行通り。具体的な数値は引き続き検討し、2018年3月末に私立大学に通知する予定だ。
② 財務情報の非公表に対する減額率の強化
現在、最大15%となっている減額率を50%に引き上げる方向で検討されている。
③ 教育の質を評価する指標の導入
私立大学等改革総合支援事業の「タイプ1 教育の質転換」の評価項目を改訂・移行する形で指標を新設する。これまで、特別補助の増額を目的に大学が任意で行っていた「全学的な教学マネジメント体制の構築」「シラバスの運用」等の自己評価を、私学助成を申請する全大学に課す。その総合得点によって一般補助を増減する調整係数を設定する。文科省の担当者は「教育で頑張っている大学であれば定員割れでマイナスになってもここでカバーできるよう、連動する係数を設けたい」と話す。
教育の質を評価する指標の具体的な中身については後述する。
特別補助(環境変化をふまえた改革を支援)
④ 主要な支援事業の見直し
私立大学等改革総合支援事業、私立大学等経営強化集中支援事業について、交付対象校の削減、および審査方式等の見直しをする。私立大学等改革総合支援事業は、前述の通り「タイプ1 教育の質向上」の評価項目を一般補助の指標に移行することもあり、タイプ1の対象校数を2017年度の350から200へと大きく減らす。予算も25%減の131億円となる。
経営が厳しい地方小規模大学が主な対象となる私立大学等経営強化集中支援事業は、予算が2017年度の半分以下(40億円→18億円)で、対象校も150→40~50に大幅に圧縮。「私学助成を経営困難校の延命手段にしない」という今回の方針を象徴する見直しとなった。
従来、経営状況の把握・分析や組織運営体制の強化等に関する評価項目で点数化し、総合点で対象校を選んでいたが、2018年度からは経営改革計画の内容を審査する方式に変更。入学者数の増加、収支状況の改善、組織体制の強化等のKPIを盛り込んだ計画と経営改善状況を基に計画の妥当性、実効性を審査する。点数化のための評価項目は大幅に簡素化する方向だ。
➄交付要件の見直し
一般補助においてチェックされる定員割れの状況と教育の質を特別補助にも反映させる形で交付要件を見直す。「定員割れが一定基準以下」「5年程度連続の赤字」「教育の質が一定基準以下」等の全てにあてはまる場合、積算された特別補助の額に所定の減額率をかける。これら3つの要件に「定員割れの度合いが〇年間、悪化を続けている」等、複数年度にわたる定員割れの状況も加える方向で検討している。具体的要件や減額率は3月末までに確定する。
① と⑤については3月末までに決める内容で2018年度を先行実施と位置づけ、その結果の分析に基づいて改訂を加え、2019年度から本格的に実施する。
一般補助の配分額算定の重要基準となる「教育の質」は、どのような指標で評価されるのか。私立大学等改革総合支援事業の「タイプ1 教育の質向上」の評価項目のうち、高大接続改革関係以外の計18項目から相当部分が改訂・移行する形で使われる方向だ。
18項目のうち、文科省が「大学に標準的に期待する要件」と位置付けるものは「教育の質」の指標に移行し、高大接続改革と「手法がまだ確立されていない先進的な取り組み」と捉えているものは私立大学等改革総合支援事業の評価項目として維持される見通し。
後者は「アクティブラーニング」「FD・SD」「教育改革に対する学内予算措置」等が想定されている。一方、教学マネジメントの体制を整備したうえでナンバリングやカリキュラムマップ、シラバス、GPAなどの手法を導入し、学生の学修成果を把握するという一連の取り組みが、一般補助でチェックを受ける「教育の質」の構成要素となる予定だ。
文科省の担当者は「定員割れに対する調整係数の強化はペナルティという趣旨ではなく、定員の適正化やコスト削減など、経営の見直しを促すねらいがある」と説明。「これまで改革総合支援事業への申請等を通じて教育改革に取り組んできた大学であれば、ある程度定員割れしていてもきちんと補助金が取れるはず。定員充足状況にかかわらず教育の質を評価指標とすることによって、真に頑張る大学をエンカレッジしたい」。
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