エビデンス重視と受審負担軽減が特徴―全専研が設立した新たな第三者評価機関
専門学校
2026.0702
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3行でわかるこの記事のポイント
●情報提供や現地調査費用の平準化で地方の専門学校を支援
●評価の地方拠点整備と質保証人財育成の両輪で全体の底上げを図る
●「チェック」ではなく「改善」重視の評価を実施
2026年度から専門学校は第三者評価の受審が努力義務となったが、高度専門士の称号が付与される専門課程設置校など、一部の学校は当初から義務化されている。学校側の受審体制整備に加え、十分な数の評価機関の確保も課題となる中、一般社団法人全国専門学校教育研究会(全専研)が新たな評価機関を設立した。制度の転換点で評価機関に名乗りを上げたねらいは何か、どのような評価をめざすのか、同評価機関の関係者に聞いた。
2026年4月に施行された改正学校教育法によって、専門学校は高等教育機関としての位置付けが明確化された。大学と同等の項目での自己点検評価が義務づけられ、5年に1回、「外部の識見を有する者」による第三者評価を受けることが努力義務となった。
第三者評価については、大学院入学資格が付与される専門課程および専攻科を置く学校、外国人留学生キャリア形成促進プログラム認定校が、他に先駆けて2026年度当初から義務化されている。2031年度からは職業実践専門課程認定校も義務化される予定で、全専門学校の4割ほどが第三者評価を受けることになる。
専門学校はこれまで、自己点検評価や自校関係者による内部評価を中心に教育改善、質保証に取り組んできた。今回の制度改正によって、外部の視点を取り込んだより客観的・専門的な評価というステージに進むことになる。
その動きの中で、全国専門学校教育研究会(全専研)が、第三者評価機関「🔗一般社団法人全国専門学校評価機構・NAEVS(National Accreditation for Evaluation of Vocational Schools、ネイビス)」を設立した。代表理事を務める植上一希・福岡大学教授、事務局の八木信幸氏は、第三者評価の努力義務化について「専門学校にとって非常に大きな意味がある」と口をそろえる。
「今回の制度改正によって専門学校が大学と並ぶ高等教育機関として正式に位置づけられ、これまで果たしてきた役割が法的にも認められたことになる。同時に、専門学校は社会的な役割・責任として質の保証に努めなければいけない。それがすなわち第三者評価の努力義務化だ」(植上代表理事)
大学に課されている現行の認証評価制度との違いについて、八木氏は次のように説明する。「専門学校の第三者評価においては質保証ももちろん大事だが、それ以上に質の向上が重視されている。学校に〇×をつけるのではなく、教育を改善してそれぞれの良い部分を伸ばしていくことが文科省のねらいだ」。
このねらいを具体化するうえで評価機関の"資格"については柔軟に考えられており、当面は、文科省による認証を要件にしない方向だ。
「職業実践専門課程を有する学校は現在、約1100校あり、これらが5年に1回受審するとなると、単純計算で年間200校以上が対象になる。相当数の評価機関が必要になり、認証制にすると供給が追い付かない。文科省は、まずは全ての専門学校が第三者評価を受けられる体制を整えることを優先させ、認証制にはしない判断をしたと理解している」(八木氏)
「NAEVSを含めいくつかの評価機関があり、それぞれ特徴がある。各専門学校が自校に合う評価機関を選んで受審することが望ましい」
評価機関の質の担保は言うまでもなく重要だ。文科省は、委託事業として評価機関の形成支援やネットワーク化を進めるほか、評価機関同士が情報共有するコンソーシアムの構築も進める。
2026年度から5年以内の受審を求められている学校の多くは現在、様子見の状態で、4年目以降に受審の集中が予想される。そこで文科省は、初年度に受審した専門学校を対象に費用補助や人的支援をする委託事業も実施する予定だ。
文科省が、専門学校の第三者評価義務化を検討していた頃から、全専研内では「自ら評価機関を設立すべきではないか」との声が挙がっていた。主なねらいは地方支援だ。
八木氏は「全専研の会員には地方の専門学校が多く、第三者評価の情報が不足し、何から始めればいいかわからないという声も聞かれる。情報提供と受審の支援を通して地域間格差をなくす必要があると考えた」と話す。
地方の学校は受審にかかる負担が大きいという問題もある。第三者評価では現地調査も実施され、地方の学校にとっては評価員の交通費等が懸念材料となる。そこで、全専研は費用負担の平準化を図り、地方の専門学校も安心して受審できる評価機関の設置を構想した。
全専研はこれまでの文科省の委託事業を通し、自己点検の評価表やガイドラインの作成、第三者評価基準の整備や評価者養成に取り組んできた。その成果をふまえ、2026年5月、新たな第三者評価機関としてNAEVSを設立。
NAEVSは、第三者評価の地域拠点整備と人材育成を組み合わせた仕組みを志向している。
「全専研は、各地域に根ざした教育の知見や業界理解を蓄積してきた専門学校のネットワークであり、その蓄積を第三者評価に生かせることがNAVESの強みだ。一方、自己点検評価を適切に行い、各校の質向上を牽引できる『内部質保証人材』を各地域で育てるための研修にも力を入れる」と八木氏。
NAEVSでは、一定の研修を受けた人材を評価者として登録することで評価の質を担保する。評価者養成研修を修了した教職員などによるピアレビューを中心に、職業能力育成の観点から企業関係者も評価員に加わってもらう。
八木氏は、専門学校を含む教育訓練サービスを対象に、国際規格に基づく認証を行うJAMOTE認証サービス株式会社の社長も務めており、同認証機関での経験豊富な審査員に評価を担ってもらえる点もNAEVSの強みだという。
NAEVS の第三者評価は、全専研への加盟の有無にかかわらず、すべての専門学校を対象にする。地方の専門学校の負担軽減策として、評価料は現地調査の評価者2人分の旅費交通費を含め一律に設定。入会金・年会費などは設けない。
受審申し込みの期間を限定せず、随時受け付ける。1年間に複数回の研修を実施し、受審を検討する学校には、まずその受講を求める。評価基準やスケジュールの説明に加え、自己点検評価を高度化し、学校内の質保証体制を強化するための知見を得られる内容だという。
研修受講から評価結果通知まで約9か月間のスケジュールは下図の通り。

文科省の委託事業で全専研が作った自己点検評価表ではエビデンス重視を打ち出し、それが文科省の学校評価ガイドラインでも採用されている。
NAEVSも根拠に基づき、学校側にとって納得度の高い明瞭な評価をめざす。
各学校は、議事録や就職実績、シラバス、カリキュラムマップなど、通常業務で作成する記録や書類をエビデンスとして提出すれば、評価を受けるための特別な作業は生じないという。「エビデンスさえしっかり示してもらえば、そこから内容を読み取って教育の質の高さを認めたり、要改善点を指摘したりするのが評価者の役割だ」と八木氏。
第三者評価を「成長のための対話の場」と位置づけ、「チェック」より「改善」を重視する姿勢がうかがえる。
両氏は今後、第三者評価を受けることになる専門学校へのメッセージとして次のように話した。
「受審準備を負担に感じるかもしれないが、そのプロセスを通じて教育活動を見直し、改善につなげることができれば、学校にとって大きな価値となる。せっかくできた制度なので、少しでも良いものにしていけるよう、学校と評価機関が一緒に育て、専門学校教育の質の改善と社会的評価の向上につなげていきたい」(植上教授)
「高専の学位の国際通用性を高める動きが出ているが、同じく実践的な職業教育を行う専門学校もそこに近づいていくと予想される。実際にそうなるためにも、社会の要請に応えられる教育をしていると自ら示していく機会として、第三者評価が定着するよう期待している」(八木氏)
文・松本晴輝(専門学校支援部)