中央情報大学校が専門学校としていち早く単位制に変えた理由とは?
専門学校
2026.0513
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3行でわかるこの記事のポイント
●効率的なリソース活用のための科目選択制が単位制に帰結
●履修の自由度が向上し、他分野の学生との協働も促す
●制度改正は教育の質向上の好機
2026年4月の制度改正を受け、専門学校の間では単位制への移行や自己点検評価を実施するための体制整備が進んでいる。🔗中央カレッジグループ(学校法人有坂中央学園、群馬県前橋市)の🔗中央情報大学校(同高崎市)は20年ほど前、前身校でいち早く単位制を導入し、カリキュラム改革を推進してきた。単位制導入の背景とメリットについて、同グループ執行役員で教育本部長を務める五十部昌克氏に聞いた。
🔗制度改正を「選ばれる専門学校」としての持続的発展の契機に
中央情報大学校の前身・中央情報経理専門学校高崎校は20年ほど前、単位制に準じる「科目選択制」を導入し、情報分野と医療事務分野の職業教育を実施していた。
当時、同校を含む多くの専門学校では、全学生が学科ごとに決められた科目について所定時数の授業を受けて卒業する授業時数制を採用していた。この仕組みは短期間で実践的なスキルを習得するうえでメリットもある。
授業時数制のカリキュラムでは、学科ごとに時間割が固定されるケースが多い。中央情報経理専門学校高崎校では1日に4~6コマ×週5日、2年間で2000時間ほどの授業を行い、教員と教室を回すのが厳しい状況だった(専修学校設置基準では年間800単位時間以上、専門課程修了要件は2年制で1700時間以上)。
同校が科目選択制を導入したのは、教員リソースを効率的に活用できるよう、学科の枠を超えて学生のニーズが高い科目を共有するためだ。自由に科目を選択できる仕組みで学校の魅力が増す一方、学生ごとに履修科目や授業時間が違ってくるため、従来の授業時数制では管理が難しくなる。そこで、各科目や卒業要件を授業時数ではなく単位数で規定し、学生一人ひとりが卒業に必要な単位(科目)を自分で組み合わせて学ぶ「単位制に準じたカリキュラム」に変えることにした。
「ランチに例えると、それまでは完全な定食スタイルだったのをご飯とみそ汁(必修科目)だけ共通にし、小鉢(選択科目)を自由に選べるアラカルト方式にした。小鉢の形がばらばらだと全員が同じトレーにうまく並べられないので、単位制によってそろえたということだ」
科目選択制によって学科ごとの開講科目を減らすことができ、それまでより少ない教員と教室で授業を回せるようになった。一方、学生にとっては必修科目とは別に、自分の興味・関心や将来の方向性に合わせて自由に科目を選べるというメリットが生まれた。グループ全体で掲げる「学びながら働く、働きながら学ぶ」というキャッチフレーズの下、必要な単位数を満たしていれば空いた時間にインターンシップに参加するなど、主体性に基づく多様な学び方を後押しする。
2018年度、それまで別々の専門学校に置いていた情報、デザイン、電気通信の各分野を中央情報経理専門学校高崎校に統合し、校名を「中央情報大学校」に変更した。これらの分野は相互に関連し合っていて、専門分野が異なる学生が科目選択制の下で協働することによって新たな価値を生み出せると考えた。
例えば、情報系の学科でプログラミングを学んでいる学生が絵を描くことが好きな場合、デザイン系学科の科目を選択履修することができる。エンジニアをめざす学生とデザイナーをめざす学生が協働してユニークなコンテンツをつくることも考えられる。
このような横断的な学びをさらに深めたいというニーズに対応できるよう、4年制の「高度ICTデザイン学科」も新設。「専門学校が大学と競合する中で生き残るためには、資格一辺倒ではなく大学にできない新たな価値創出が必要と考えた」(五十部氏)。グループ内の他の4年制学科と比べても学生募集は好調で、20人ほどの定員はほぼ充足。単位制によって柔軟なカリキュラム設計が可能になったからこそ実現した改革と言える。
2025年度時点の中央情報大学校では、1コマ90分の授業が1日4コマあった。主に3限目以降に選択科目を配置し、週20コマのうち必修科目と選択科目がほぼ半々。
30時間の授業を1単位とし、2年制課程では62単位(1860時間)以上の修得を卒業要件としていた。ただし、授業時間をそのまま単位に換算していたので、厳密な意味で大学と同じような単位制ではなかった。
2026年度からは制度改正に対応して大学と同様の単位制に変え、シラバスの整備も進めている。
専門課程(昼間)における時間制の場合、1単位時間50分で年間800単位時間以上という規定であった。従って、これまで予習・復習など授業時間外の学習はシラバスで明示する必要はなかった。しかし、大学等と同様の単位制になったことにより、現在は「1単位=45時間の学習」とし、「そのうち30時間が授業、残り15時間が授業時間外学習」のように明記する必要がある。
事前学習についても、従来は授業の中で行っていた「ソフトのインストール」や「テキストを読む」などを授業内容に応じて記載するよう整備を進め、それも単位の一部であるという考え方を明確にしている。
シラバスでは成績評価の方法も出席、定期試験、レポートなど具体的に示し、GPAについても説明。非常勤も含め、教員間で評価方法にばらつきが出ないよう、調整を進めている。
「従来の運用だと、仮に1単位45時間であればその時間フルに授業をしていたが、今後は15時間を事前・事後学習にあてて授業時間を短くできる。2025年度までは学校によって週20コマ固定だった時間割を、学習成果を維持しつつ週16コマに減らすことも可能になり、そこに工夫の余地がある。結果として、教員に余力が生まれて授業の質を高めるための準備などにあてられるようになる」(五十部氏)。
学年で修得すべき単位を修得できないケースが発生した場合、どのように扱うかも検討が必要である。今回の単位制移行において文部科学省は、従来の専門学校教育との整合性も鑑み、「学年進行制」と「学年区分を設けない課程」のどちらを選ぶかは学校ごとの判断に委ねる旨の説明をしている。
大学では学年は制度上の必須区分ではなく、修得単位数によって留年が決まる。中央情報経理専門学校高崎校は、単位制への移行後も専門学校の強みである「面倒見の良さ」を生かす観点で「学年進行制」を採用した。
五十部氏は「大学であれば留年させ、足りない単位を取ってから進級させるのが一般的だろうが、留年するとそのまま退学となりがちな専門学校にはなじまない。単位制に切り替わっても、補習をしたり課題を与えたりといったフォローで、きちんと単位を修得して進級・卒業できる教育体制を整えておくことは必要と考える」と説明する。
中央カレッジグループでは、中央情報大学校以外の他の専門学校でも単位制への移行を進めている。
今後は学校をまたいだ科目選択制を推進する方向だが、ほとんどの学校が1コマ90分授業である中、公務員系や医療歯科系など50分授業の学校が加わるのは難しい状況だ。社会人の受け入れを想定した授業時間設定で簡単には変えられない。加えて、医療歯科系は国家資格取得のための必修科目が多いなど、カリキュラムの縛りも多い。現時点では、これらの学校は50分授業のまま単位制に切り替え、科目選択制への参加は今後、検討するという。
2026年度から、基本的には全ての専門学校で単位制を導入することになるが、どのような姿勢で取り組めばいいか。五十部氏は次のように話す。
「形として単位制を導入するだけなら、授業時数からの読み替えでも対応は可能だ。しかし、せっかく新しい仕組みに変えるのであれば、そのメリットを生かさない手はない。中央カレッジグループの場合は、それがリソースの効率的な活用であり、科目選択制だった。この機会に専門学校の良さ、自校の魅力を発掘し、単位制の中でそれをどう生かすか考えることが大事だ」
「外形だけ大学のような単位制にすればいい」と考えるのではなく、この機会に自校の強みを先鋭化できるカリキュラムをつくるべきで、そこにオリジナリティを発揮できるというわけだ。
「小規模な専門学校では科目選択制は難しいかもしれないし、必修科目が多い国家資格系分野では柔軟なカリキュラム設計が容易ではない。しかし、学修成果を適切に評価し、編入など大学との接続がスムーズになるという点はすべての専門学校に共通する単位制のメリットだ。今後、社会人教育やリカレント教育の整備、学位や資格レベルを可視化する制度(NQF)が検討される中で、専門学校教育は適切な単位互換によって大学等との接続が可能な仕組みをつくらなければ淘汰されることになるだろう」
接続強化のメリットを生かすためには、単位認定に値する教育の質が担保されていることが重要で、それは第三者評価の話につながってくる。
第三者評価は、高度専門士の称号を付与する学校と外国人留学生キャリア形成促進プログラム認定校でスタートするが、その後、職業実践専門課程認定校や修学支援新制度対象校への拡大も想定されている。多くの専門学校が対象になり、第三者評価を受ける体制を整えておく必要がある。
五十部氏は、文部科学省の委託を受けた全専研(全国専門学校教育研究会)の事業「職業実践専門課程等を通じた専修学校の質保証・向上の推進」の事業推進委員会委員長を5年間務め、自己点検評価の運用ガイドライン作成や内部質保証人材育成の施策に取り組んだ。
中央カレッジグループでは、職業実践専門課程制度が始まった2014年度から毎年、自己点検評価を実施。「2025年6月に文科省から出た自己点検評価のガイドラインは従来の評価表に比べて項目は少ないが、エビデンスをきちんと示すよう求められる。これまで、本グループでは自己点検評価を各学校に任せていたが、第三者評価を視野に入れると、今後は学園本部で学生募集、就職など各部門と連携するチームを作って対応する必要がある」。
「自己点検評価や第三者評価と聞くと身構える学校も多いが、健康診断と同じで、自校の健康状態をセルフチェックし、専門機関にもみてもらうと考えるといいのではないか。問題があれば改善のためにいつまでに何をするか、目標値も含めて決める。一定期間改善に取り組んだら、またその成果をチェックする。問題をきちんと把握して改善のためのPDCAを回せるよう、各学校が人材を育て、体制を作ることが求められている」
単位制も自己点検評価や第三者評価も、「新しい制度に対応する必要があるから」という消極的な姿勢ではなく、「自校の魅力、教育の質を向上させるチャンス」と前向きに捉えて戦略的に臨むことが重要と言えそうだ。