アセスメントで継続的に学力・意欲を把握し、改善施策を実施―奈良リハビリテーション専門学校
専門学校
2026.0611
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3行でわかるこの記事のポイント
●志願倍率低下に伴う意欲の低下に危機感
●半年後のアセスメント実施で再び実態を把握し施策の効果を検証
●悩み、つまずきへの早期対応で中退率は改善傾向
🔗栗岡学園が運営する🔗奈良リハビリテーション専門学校は、学習意欲を向上させて中退防止につなげることを目的に、2023年度に外部のアセスメントを導入した。結果データに基づく継続的な面談や全体補習など、組織的なケアによって、学習面のつまずきが改善され中退者が減っている。
栗岡学園は、大阪府と奈良県で看護・リハビリテーション分野の専門学校4校を運営している。幼稚園を併設するとともに、系列の医療法人・社会福祉法人と連携し、和幸会グループとして教育・医療・福祉事業を展開している。

奈良リハビリテーション専門学校(3年制)では近年の志願倍率低下に伴い、コロナ禍前後から入学者の学習意欲の低下が目立つようになった。
理学療法学科の宮﨑尚也学科長は次のように話す。「親に勧められたり、友達から情報を得たりして、この分野にさほど興味がないまま入学する学生が増えたように感じる。授業態度は真面目だが、この仕事に就きたいという強い動機付けがされていないため、臨床実習などしんどい場面で頑張れない」。こうした状況の中で、留年や中退の増加が顕在化していた。
その解決を図るため、2023年度入学者から、進研アドが提供する入学前教育プログラムと入学後のアセスメント「基礎力リサーチ」を導入した。
それ以前にも学校独自の基礎学力テストを実施していたが、他の専門学校との比較ができず全体的な傾向を把握できないなどの理由により、データを有効活用できていなかった。
そこで、入学前教育とアセスメントを通して学力と意欲の実態をデータで把握しようと考えた。その分析結果を指導に反映して学習への動機付けと学生満足度の向上を図り、中退防止につなげるというシナリオを描いた。
「基礎力リサーチ」は専門学校向けのアセスメントで、「基礎力確認テスト」と「学習状況アンケート」で構成。アンケートでは学習意欲や学習習慣について尋ねる。
これらの結果から全体・層別(学力と意欲を軸にした4象限別)・学生個別、それぞれについて分析した結果が提供される。学校はそれをもとに基礎学力や意欲の向上のための施策を講じる。
学年ごとに2回ずつアセスメントを実施して施策の効果を検証し、学生の状況を継続的に把握する(奈良リハビリテーション専門学校は1年生を対象に2回のみ実施)。
1年生1回目の実施時の補完教材(オプション)として、「数学」「生物」などの教材「基礎力チャージ」と「ふりかえりワークシート」もある。
ここからは、奈良リハビリテーション専門学校における「基礎力リサーチ」の活用について説明する。
同校では「基礎力リサーチ」の導入初年度、以下のような運用スケジュールを立てた。

■5月中旬 1回目の「基礎力リサーチ」実施
■5月下旬 結果提供
■6月中旬
・ホームルームで学生にアセスメント結果を返却
・ふりかえりワークシートの記入・回収
ワークシートでは、「~ができる」という自己認識とアセスメント結果とのギャップを理解し、自分を客観視して目標を立てる。コミュニケーションスタイル、行動特性について問う設問もある。
・「基礎力チャージ」の配布
夏休みの課題の一部にする。
・学力・意欲ともに低い「タイプ④」の学生に対する学科長面談の実施
■6月下旬~
・教員によるふりかえりワークシートの分析
個々の学生とクラス全体、それぞれのコミュニケーションスタイルと行動特性について分析する。
・進研アドによる報告会
全国平均等との比較に基づく特徴・傾向について説明する。
■7月上旬
・ふりかえりワークシートに基づく担任面談
以後、複数回の面談を実施して学習状況を丁寧に把握する。
■7月中・下旬
・クラス全体補習
■8月
・基礎力チャージ回収
■9月
・2回目の「基礎力リサーチ」実施
施策の効果を検証する。
学科長面談では授業についていけているかたずねながら、学力・意欲についての自己認識を確認する。結果を担任に共有し、必要に応じて対応方針を指示。「本校は担任制で3年間クラスが持ち上がるため、問題解決のための対応が担任だけで完結しがち。それを組織的なフォローに変えることが、学科長面談の目的」と宮﨑学科長。
導入初年度、1回目の「基礎力リサーチ」の結果について、教員からは「気になっていた学生の問題がデータで裏付けられた」「予想以上にリアルな実態が反映されている」「ノーマークだった学生の問題を早めに把握できた」といった声が挙がった。
データを基に教員間で目線合わせをして、指導方針を立てることができた。
学生に対しては「面談」という言葉を使わず、「ヒアリング」「ミーティング」などの呼び方で、気楽に話せるよう配慮。従来の面談では多くの学生に対して同じ話をしていたが、アセスメント導入後は一人ひとりの課題に応じた密度の濃い話ができるようになった。
面談では基礎力確認テストの結果について、「ここで得点できなかったのはなぜだと思う?」と問いかけ、データだけではわからない学習上の問題を確認したうえでアドバイスをした。
タイプ④の学生には、学科長面談のほか教員による積極的な声かけを心がける。
補習は対象者を絞るのではなく、クラス全体で実施。ふりかえりワークシートのコミュニケーションスタイルと行動特性の分析によって、共感力が高くストレス耐性が低いというクラス傾向がわかり、協働学習の方が効果的と考えたという。
「基礎力リサーチ」の初回結果に基づき、継続的な面談や声がけ、全体補習などを行った結果、2023年9月の2回目の実施では以下の通りいくつかの指標で改善が見られた。
・「勉強の仕方がわからず不安」と答えた割合が50%➡30%
・授業でわからない問題がある時、「何もしない」が9.1%➡0%
・「授業時間以外での1日の平均学習時間ゼロ」の割合が1.5%➡0%
・「専門分野への関心度(10点満点)」5点以下が0%➡0%、「10点」13.6%➡30%
これらの成果に加え、2023年度秋時点で、「授業についていけない」などの学習要因による中退者はゼロ人に。それまでは例年、5月の連休明けや夏休み明けから登校しなくなり、そのまま中退する学生が数人いたが、そうしたケースがなくなった。
以上は「基礎力リサーチ」導入初年度の取り組みと成果だが、奈良リハビリテーション専門学校では現在もアセスメントと入学前教育プログラムを継続的に実施している。
2年目からは「基礎力リサーチ」の初回を早めて4月下旬に実施。データで学生の状況を的確につかめることがわかり、少しでも早くデータを入手したいと考えた。これと連動して以降の面談等のスケジュールも前倒しした。
アセスメント結果の初回データ取得までは、入学前教育プログラムのデータを学生のケアに活用する。宮﨑学科長は「課題の正答率よりも、提出状況など取り組み姿勢の方に注目する。提出が滞りがちだった学生が入学後の授業態度も気になる場合は優先的に声をかけるなど、つまずく手前でのフォローができている」と話す。
入学前教育プログラムと基礎力リサーチの継続的な実施により、中退率改善の兆しが出ている。宮﨑学科長は「入学者数の変動もあるので単純比較はできないが」とことわったうえで、「導入初年度の2023年度入学者(2026年3月卒業)の中退率は感覚的に5~10ポイント低下している」と説明。現在はそれ以降の入学者の動向を注視している。
宮﨑学科長はこの3年間を振り返って「学生のフォローアップのためのインフラ整備と仕組みの構築ができた」と話す。「以前は『何であの学生が?』と驚くような中退があった。一見、何の問題がなくてもちょっとしたことでつまずく学生がいて、われわれはそれに気付けなかった。今は先回りして悩みを拾えるようになり、『学校として何かできることがあったのでは』と悔やむことが、ゼロではないにしても、この3年間で間違いなく減った」。
以前は、担任が「何となく」という感覚で学生の状況を捉え、「何となく」対応していたが、現在はデータに基づいて客観的に捉え、校内で情報を共有して組織的に対応できるようになった。入学前教育プログラムと「基礎力リサーチ」を軸にした取り組みの年間スケジュールもほぼ確立され、安定的な運用がなされている。
今後は、意欲に加えて学力の底上げにも力を入れたいと考える。「『基礎力チャージ』などの教材を補習でも積極的に使うなどして、専門科目に入る前に数学や物理の学力アップを図りたい」(宮﨑学科長)。
(文・和多田博夏)