設置認可を7月末に早め、不認可の充足率基準は5割から7割に厳格化
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2026.0305
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3行でわかるこの記事のポイント
●学生確保による経営の安定化を重視
●申請・認可の早期化は2028年度新設分、充足率基準は2029年度新設分から
●規模適正化による充足率基準の適用除外も
大学・学部等の設置認可の制度が変わる。大きな変更点は、①審査スケジュールにおいて申請が1~2か月、認可が1か月、それぞれ早くなる(2028年度新設分から適用)、②新設不可となる既存学部の収容定員充足率の基準が、5割未満から7割未満に引き上げられる(2029年度新設分から適用)の2つ。既存学部での学生確保を従来以上に厳格に求める一方、新設学部等の学生募集活動に必要な期間を確保するなど、経営の安定性を担保することがねらいだ。
文部科学省が私⽴学校法施⾏規則などを改正し、2026年3月末に施行する。中央教育審議会🔗「知の総和答申」と🔗「私⽴⼤学の在り⽅検討会議」の議論をふまえた改正だ。
定員割れから経営困難に陥る私立大学が増える中、大学・学部等の新設における学生確保、経営の安定性を一層重視する観点から、審査を厳格化。一方で、定員割れ学部の廃止を条件とする規制の例外措置や、定員削減による充足率基準のクリアなど、規模適正化のインセンティブも示されている。
2028年度新設分から適用される審査スケジュールの変更は次の通り。
▼大学新設
従来:10月末申請、8月末頃認可
変更後:9月末申請、7月末頃認可
▼学部・学科等新設
従来:3月末申請、8月末頃認可
変更後:1月末申請、7月末頃認可
学生募集を早く始められるよう認可を1か月早め、これに伴い申請も1~2か月早くする。2027年度新設分は現行スケジュールのまま。

2029年度新設分から適用される収容定員充足率基準に関する変更は次の通り
▼新設を不可とする「設置大学等の全学部の収容定員充足率」を引き上げ、基準時期を変更
従来:申請年度の充足率が5割未満
変更後:開設年度の前年度の充足率が7割未満
▼ただし、以下のすべてに該当する場合は充足率基準の例外とする。
・未充足の学部等を廃⽌する具体的な計画がある
・廃⽌した学部等の収容定員の範囲内で新設する
・設置⼤学等の収容定員の総数が増加しない
規模適正化も選択肢としつつ、安定的な学生確保に努めていることを従来以上に強く求める。
2028年度新設分からは、申請スケジュール以外に次のような変更点がある。
① 答申時の「継続審査(保留)」をなくし、設置の「可」「不可」のみにする。
スケジュールの見直しと同じく、認可後の学生募集活動期間を確保するための措置だ。この変更と同時に、審査意見に対する大学からの回答機会を従来の3回から2回にする一方で、回答までの期間を現行より長く設ける。文科省の担当者は「十分な検討に基づき委員が納得できる回答をしてもらうことによって、継続審査を不要にするという考え方だ」と説明する。
②申請時のリスクシナリオ(学生募集が計画通りにいかなかった場合の対応策)の妥当性も審査する。
③認可のアフターケア調査でリスクシナリオの遵守を求め、遵守されない場合は一定期間、設置や定員増を認可しない等のペナルティを課す。
中教審答申や有識者会議の議論では、ペナルティとして私学助成の減額・不交付も提起されており、今後、これが追加される可能性もある。
④「経常収⽀差額が3か年連続マイナス」かつ「直近年度の外部負債が運⽤資産を上回る」場合は新設を不可とする。
⑤大学新設の申請時に保有すべき経常経費を、現行の「1年分」から「2年分」に引き上げる。
⑥ 法⼈合併や設置者変更によって収容定員充足率や財務状況の基準を満たせなくなる場合は、合併等の認可後から修業年限にあたる期間は認可前の基準を適⽤する。
・収容定員充足率は、認可前の学部等のみに適用
・財務状況の基準は、認可前の法人のみに適用
改革を制限されることを理由に経営困難な大学の合併等を断念しないで済むよう講じられる規制緩和だ。
2029年度新設分からの制度変更について、さらに詳しく説明する。
すでに述べた通り、新設を不可とする収容定員充足率が5割未満から7割未満に引き上げられるのと同時に、収容定員充足率の基準時期は従来の「申請年度」から「開設の前年度」に変わる。
これにより、2029年度に学部を新設する場合、2028年度の充足率が7割以上を求められる。その達成が厳しい見通しの場合、不認可回避策として以下の2つが考えられる。
▼パターン1
①2027年12月末までに、2028年度からの収容定員減を届出(7年以内に定員を元に戻す計画を示すことによって、定員増も届出で可能になる)。
②2028年1月末に学部設置の申請(暫定的に、2027年5月時点の充足率を記載)
③2028年5月時点での充足率は7割以上が必要だが、定員を減らしたため基準を達成しやすくなっている。
④2029年度の開設以降、学生確保を安定化させた場合、①で計画した年度に届出で収容定員を元に戻すことができる。
これは、2026年度から施行される🔗一時的に減らした定員を戻しやすくする制度を活用するものだ。
▼パターン2
①2028年1月末に学部設置の申請をする際に、2029年度の開設時までに充足率7割未満の全学部を廃止する計画の提示など、基準適用除外の要件に沿って対応する。
②本来は2028年5月時点の充足率7割以上が必要だが、①で学部の廃止計画を提示済みなので基準適用除外となる。
③2029年度開設以降、新設学部で学生を受け入れるのと同時に、充足率7割未満だった学部は学生募集を停止。

2028年度以降の学部等新設を予定している大学は、今回の制度改正によって、新たに次のような対応が必要になる。
①高校生を対象とする学生確保のためのニーズ調査実施等、申請の準備を早めに始める。
②収容定員充足率の基準を上回るよう直近の入学者確保に力を入れつつ、必要に応じて定員削減等について検討する。
③7月下旬からの学生募集スタートを前提に、広報施策を立案する。