大学が定員減を決断しやすくなるよう、定員を戻す手続きを簡素化―文科省
2025.1212
3行でわかるこの記事のポイント
●一定の要件を満たせば認可でなく届出で定員増が可能に
●定員減から7年以内の定員増が対象
●「知の総和」答申が求める「忌避感の緩和」の具体策
文部科学省は、私立大学が一時的に減らした定員を戻しやすくする制度を新設し、2026年度から施行する。一定の条件を満たす場合に、従来は認可事項だった定員増を届出でできるようにする。定員割れが常態化している学部・学科の定員規模の適正化を促すことがねらいだ。
🔗文科省の発表資料
*表は資料から引用
一度減らした収容定員の一部または全部を戻す際の手続きに関する変更は、学校教育法施行令の改正によってなされる。
学部等の収容定員の総数を増やす場合の学則変更は現在、一律に認可事項として扱われるが、以下の条件を満たすものについては届出で可能になる。
①収容定員減後7年以内の増加である。
②増加総数が減少前の総数を超えない。
③定員減の届出の時に、7年以内に減少前の総数の範囲内で増やす計画があることを示す。
※医師、歯科医師等一部の養成分野は制度の対象外


高等教育の規模適正化を打ち出した中央教育審議会の「知の総和」答申(2025年2月)では、各大学に「少子化を踏まえた適正な規模の在り方について検討」を求めた。同時に、文科省に対しては「収容定員の引き下げに対する大学等の忌避感の緩和」のため、「一定の条件を満たす場合に一時的に減少させた定員を一部又は全部戻すことを容易にする仕組みの創設」など、「縮小への支援」を求めた。
文科省の担当者は「主に地方では、看護師や保育士などのエッセンシャルワーカーを養成する大学・短大が学生確保に苦しみ定員を減らそうとしても、地元の業界関係者などの不安を考えてなかなか踏み切れないと聞く。結果的に定員割れが悪化して私学助成がなくなり、経営悪化の一途をたどるケースもある」と説明。
こうした状況をふまえ、地方大学が多く加盟する日本私立大学協会は2024年5月、文科省に対し、地域需要に迅速に対応可能な定員管理政策を求めていた。
今回の制度改正では、定員減が一時的な措置で、元に戻す計画があるという意思を表明することによって地元の理解が得られ、実際の手続きの簡素化とあわせ、大学が定員減を決断しやすくなることを期待。地域需要に応じた迅速な教育展開を可能にするねらいもある。
「定員減から7年以内」という要件について、担当者は「定員の見直しは大学の教育研究等への評価に基づき考えるべきものなので、認証評価の受審周期を参考に設定した」と説明する。
結果的に7年以内の定員増がなされなくても、特に問題はない。
制度変更案は11月中旬の大学分科会で報告され、12月中旬までパブリックコメントにかけられている。そこでの意見もふまえ、2026年度から新制度を施行。2027年度以降の学則変更による定員減に適用される。