2024.0702

理系学部新設等を支援する事業に59大学を選定―文科省

この記事をシェア

  • クリップボードにコピーしました

3行でわかるこの記事のポイント

●地方の中小規模大学、女子大など多様な大学が新設へ
●改組に伴い総入学定員を減らす大学も
●高度専門人材養成支援での選定は38大学

大学による理系分野の学部設置等を文部科学省が最長10年間、約20億円まで支援する「大学・高専機能強化支援事業」の2回目の選定結果が発表された。公立・私立合わせて59大学が選ばれた。初回の選定校とあわせ、理系学部新設の動きがさらに活発化する中、必要な教員を確保して教育の質を担保することが課題となりそうだ。

文科省の発表
大学改革支援・学位授与機構の発表

*参考記事(Between情報サイト)
理系学部新設等を支援する事業に67大学を選定―文科省
私大連が理系への転換支援事業に対し、財政支援強化などを要望


金沢工業大学は支援1と支援2の両方で選定

特定成長分野への学部転換等の改革を促す「大学・高専機能強化支援事業」では、3002億円の基金を活用して「デジタル」「グリーン」等の分野の人材育成を継続的に支援する。

公私立大学が対象の「支援1」では、理・工・農の3分野、およびこれらのいずれかを含む融合分野への学部再編等を支援。原則8年以内、最長10年で、20億円程度までの支援を予定している。
国公私立大学と高専が対象の「支援2」はデジタル分野の高度専門人材を養成する大学院レベルが対象で、最長10年、原則として10億円程度までの支援を予定している。

2回目となる2024年度は202312月~2024年2月に公募を受け付けた。
「支援1」には62件の申請があり、59件(公立大学4件、私立大学55件)が選定された。「支援2」には43件が申請し、38件(国立大学18件、公立大学4件、私立大学5件、国立高専10件、公立高専1件)が選定された。金沢工業大学は「支援1」と「支援2」の両方で選ばれた。

「支援1」では、都市部の大規模大学、文系中心の中小規模大学や地方大学、理系単科大学、女子大など、多彩な大学が選ばれた。選定対象の改組に伴って文系を中心に他学部等の入学定員を減らし、総入学定員を縮小するケースもある。 

京都文教大学は併設短大の生活科学分野にデータ・AIなどを融合

申請時の提出書類をもとに、「支援1」で選定された3大学の学部新設計画について紹介する。

東北学院大学(宮城県仙台市)は、届出で2027年度に「未来探究学部」を新設する計画が選定された。学位分野は工学。
問題発見力や課題解決の実行力に富み、「モノ」「仕組み」「サービス」等に新しい価値を付加して日本および東北に社会的イノベーションを起こす人材を育成するという。
これを実現するため、東北をフィールドとして、人口減少や少子高齢化などの課題を俯瞰的に理解してテクノロジーによって解決するプロジェクトを企画し、システムやサービスの構築、プロジェクトの推進・完遂を経験できる教育課程を予定している。
多様な入学者を確保するため、高校での探究学習に関するプレゼンテーションや論文作成力を評価する入試を検討。女子学生枠、外国人技術系・IT系技術者のリスキリング入学枠なども検討する。
入学定員は110人で、他学部等の入学定員を110人減らす。

昭和女子大学(東京都世田谷区)は、認可申請によって2026年度に総合情報科学部を新設する予定だ。学位分野は工学・経済学。
数理能力に基づく思考や発想ができ、データやデジタルに関する知識やスキルを応用して課題を解決し、創造性を発揮してアイデアを社会実装できる女性を育成する。先駆的・実用的な校舎を建設し、VR  Learning Commonsを設置する計画もある。
学外との連携については、DX推進企業等と連携したインターンシップや、産学官と連携したPBL型授業を検討。工学部等がある海外協定校との教育研究面での交流についても協議したい考えだ。
総合情報科学部にはデータサイエンス学科(入学定員60人)とデジタルイノベーション学科(同50人)を設け、他学部等の入学定員を30人減らす。

京都文教大学(京都府宇治市)は、認可申請によって2027年度に生活工学部を新設する予定だ。学位分野は工学・家政・体育・経済学。
併設する短大の生活科学分野にデータやAI、人間工学などの学びを融合させ、フードテック、アンチエイジング、エクササイズスポーツの分野に特化したテクノロジーの学びを深める。地域社会を実践の場とした教育を展開。評価や分析の手法、データ活用やAIのスキルを身に付け、生活者の視点を持った食や健康、運動の専門家として地域社会のウェルビーイングの実現に貢献する人材を育成するという。
多様な入学者確保のため、女子中高生を対象に文理選択や大学選びを見据えた出張講座、企業見学などの実施を検討している。
入学定員は100人で、他学部等の入学定員を250人減らす 

私大連は教員配置計画について文科省の柔軟な対応を要望

「大学・高専機能強化支援事業」初回の2023年度は、「支援1」に67件、「支援2」に51件が選定された。
この事業によって理系学部新設の動きが一気に活発化し、元々人材が不足していたデータサイエンス分野を中心に教員の確保が難しくなっている。
日本私立大学連盟(私大連)が202310月に文科省に出した要望書では、事業の対象となる設置認可申請について、「設置計画履行期間(AC 期間)を修業年限に限らず弾力的に設定できる仕組みの構築」を提案。通常は申請時点で完成年度までの教員配置計画を示す必要があるが、たとえば修業年限が4年の場合は6年間での計画も認めるといった柔軟な対応を求めている。


認可申請・届出に活用できる進研アドのマーケティングリサーチの紹介