総合・推薦型選抜における学力テストの年内実施、条件付きで容認の方向に
学生募集・高大接続
2025.0411
学生募集・高大接続
3行でわかるこの記事のポイント
●大学側が「学力の把握は必要」として要望
●「他の評価法と組み合わせた丁寧な評価」「高校の学修への配慮」が条件
●学校推薦型における推薦書と併願制のあり方も検討へ
2026年度入試の総合型選抜、学校推薦型選抜において、従来は認められていなかった2月以前の教科・科目にかかる学力テストの実施を条件付きで認める方向で、検討が進んでいる。6月に公表される「大学入学者選抜実施要項」(以下、「要項」)に反映される見通しだ。
🔗学校推薦型における個別学力検査の実施時期の問題について、文科省に聞く(Between情報サイト)
2025年度入試までの学校推薦型選抜で、一部の大学が学力テストを年内に実施していたため、文科省が個別に指導したり、全大学にルール順守を求める通知を出したりしていた。
こうした状況を受け、高校と大学の代表者で構成する「大学入学者選抜協議会」(以下「協議会」)の 🔗3月中旬の会議では、2026年度入試の年内入試における学力テストの扱い、学校推薦型選抜のあり方を中心に議論された。
大学側は🔗「大学団体からの提案」で、「総合型選抜、学校推薦型選抜の評価方法の一つとして、教科科目にかかる基本的な知識を問うテストで基礎学力を把握することを認めてほしい」と要望。条件として、小論文や面接など、他の評価方法と適切に組み合わせて丁寧に評価することを提示、多面的・総合的評価に基づく選抜を行うとの姿勢で高校側の理解を求めた。
この提案では「高校の学修状況に配慮した問題」として、「進学後の学部・学科で学ぶために必要な関連分野の基礎的理解度等を把握するための基礎的な内容や範囲に限定」といった例示もされた。しかし、「学部・学科で学ぶために必要な分野」の厳密な定義は難しく、「基礎的理解度」も大学によって異なるため、テストで課す科目や出題内容は、高校への配慮の下で各大学が主体的に判断するという方向になりそうだ。
この提案に対し、強い反対意見はなかったという。文部科学省の担当者は「多面的・総合的評価という総合型選抜、学校推薦型選抜の本来の趣旨に基づく提案であり、高校側も入試における学力把握の必要性は一定程度感じていた。もろ手を挙げて賛成というわけではないと思うが、大学からの提案に一定の理解を示したということではないか」と説明する。
大学からの提案には「学校推薦型選抜については、推薦のあり方についても、一定の条件を設ける方向で、高等学校側と協議の上で検討していきたい」との一文も入った。
高校側から、推薦書については「氏名欄のみで、推薦理由の記入欄がない推薦書もある」「評定などの推薦基準が示されないと、誰を推薦していいかわからず困惑する」と問題視する声、また、専願・併願については「当該生徒がこの大学・学部にふさわしいと推薦する制度の趣旨に、併願制は反している」との指摘が多いことが背景にある。
協議会はこの会議に先立ち、大学団体や高校団体などに「総合型選抜や学校推薦型選抜における学力把握のための措置に関して改善されるべき点(日程、内容等)」などについて、意見を求めた。
大学団体からは「大学教育を受けるために必要な『学力』の把握は、入学後の学修等の観点からも重要」(国立大学協会)、「大学教育を受けるために必要となる基礎的な知識・技能の確認・評価を目的とする『各教科・科目に関するテスト』の早期実施を必要と考える大学も潜在的に存在」(私立大学協会)など、年内入試における基礎的な学力の把握の必要性が指摘された。
私立大学連盟は、小論文や口頭試問等によって「教科・科目にかかる基本的な知識を十分に把握・評価することは困難」との見解を示した。
大学入学共通テストの前倒しや、基礎的な知識を測るための新たな共通テストの開発といった要望も挙がったが、これらは中長期的な検討課題になりそうだ。
この意見照会では大学側から、これまでの要項において「各教科・科目に係るテスト」「個別学力検査」などの用語の定義が不明瞭なため、2月以前の学力テスト実施が可能との解釈を生んだとの指摘もなされた。
これを受け、協議会は要項全体を見直して用語を再定義する方向で、解釈のブレが生じないように改訂したうえで、あらためて要項の遵守を徹底する考えだ。