年内入試による進学者が参考にした情報は教育内容、資格、校風-ベネッセ教研調査
学生募集・高大接続
2025.0225
学生募集・高大接続
3行でわかるこの記事のポイント
●過去の調査に比べ「大学名にこだわらなかった」が増え50%超に
●「偏差値54以下・年内入試」層は高校教員やSNS等の影響を受けた
●「進路情報が不足」との悩みが前回から10ポイント増え46%に
ベネッセ教育総合研究所はこのほど、東京大学社会科学研究所と共同で実施した「🔗高校生活と進路に関する調査」の2024年版の結果を公表した。高校3年の修了段階で、進路選択などに関する意識と実態について質問。一般選抜層と年内入試層、および進学先の難易度による分析を加えている。各大学のターゲット層の傾向を把握して学生募集広報に生かすことができそうだ。
*グラフは調査レポートから転載
「高校生活と進路に関する調査」では、高校3年生の3月に学習や生活、進路選択に関する意識と実態を聞く。
2024年調査は同年3月から4月上旬にかけ、郵送で依頼してウェブで回答してもらう方式で実施。郵送法で実施した2018年調査と2021年調査の結果と比較・分析した。
2024年は1370人に依頼して717人が回答(回答率52.3%)。
回答者のうち大学・短大進学者は67.6%で、専門学校・各種学校進学者は12.1%。残り20.3%は浪人、就職、進路未定等。
本記事では、大学・短大進学者の進路選択に関する部分を中心に紹介する。入学した大学の入試難易度を「偏差値55以上」「偏差値54以下」、受験した入試方式を「一般選抜(調査レポートでは「一般入試」と表記)」「年内入試」のそれぞれ2つの区分に分け、これらを掛け合わせた属性ごとの傾向も見ていく。
記事本文中では、以前の「AO入試」も「総合型選抜」と表記するなど、現在の名称にそろえる。
専門学校等を含む全進学者について、受験した入試方式を見ると、2018年から2024年にかけて一般選抜の割合は50.5%→44.2%→41.4%と減少が続く。一般推薦(指定校推薦以外の学校推薦型選抜)も15.1%→11.6%→9.3%と減少。
一方、指定校推薦は16.6%→21.7%→21.7%で減っていない。総合型選抜は12.4%、15.8%、20.1%と年々増加している。
大学・短大進学者について、入学した大学の入試難易度を4つに分けて比較したところ、一般選抜で入学した割合は「偏差値65以上」が68.0%だったのに対し、「偏差値44以下」は23.5%だった。
進路の決定については、3回の調査いずれでも、全回答者の9割を超える生徒が「自分の意思で進路を選択した」「自分の進路について真剣に考えた」と回答。
「自分から進んで進路に関する情報を収集した」の割合は「偏差値55以上・年内入試」が88.6%で最も高い。
「できる限り高い進路の目標を設定して挑戦した」は「偏差値55以上・一般選抜」(85.7%)が最も高く、「偏差値54以下・年内入試」(52.2%)が最も低かった。
大学・短大進学者全体で見ると、大学受験に際し「大学名にはあまりこだわらなかった」と答えた割合が過去2回の調査と比べて増加し(50.3%)、半数を超えた。「偏差値54以下・年内入試」は68.1%で突出して高い。
難易度にかかわらず、「一般選抜」は「もう少し難しい大学に挑戦したかった」「推薦よりも一般選抜で自分の力を試したほうがよい」の割合が高く、「年内入試」は「入試では学力だけでなく多様な能力を評価すべきだ」「入試よりも高校での活動を評価すべきだ」の割合が高い。
全回答者にとっての「進路に影響した人」は、3回の調査すべてで「母親」がトップ。今回は、前回調査から約3ポイント上昇して79.3%だった。
「資料や情報の収集」も合わせて見ると、「偏差値54以下・年内入試」では、他の属性の生徒に比べ「高校の先生」「学校の情報(ホームページ・SNSなど)」「学校のオープンキャンパス(オンラインを含む)」の割合が高い。
回答者全体で見ると、過去2回の調査と比べ「自分の成績」の割合が下がり、「通学のしやすさ」の割合が上昇した。
「偏差値55以上・年内入試」の生徒は、他の属性の生徒に比べて「卒業後の進学・就職の実績」「建学の理念や校風」「部活動やサークル活動での経験」の割合が高い。この属性の生徒は、「自分の成績」「大学・学校の偏差値が高いこと」にも関心が高く、多面的な観点から進路を選択していることがうかがえる。
一方、「偏差値54以下・年内入試」の生徒は、他の属性の生徒に比べて「将来就きたい仕事」の割合が高い。
偏差値に関係なく「年内入試」の生徒の多くが参考にしたのが、「カリキュラムや授業の内容」「資格や免許が取れること」「建学の理念や校風」などだった。
回答者全員で見ると、「どういう基準で進路を選択すればよいか分からない」(56.0%)、「進みたい進路に関する情報が不足している」(47.2%)との悩みが、前回調査までと比べてそれぞれ約10ポイント増えている。
「偏差値54以下」では入試方式を問わず、「自分の適性(向き・不向き)が分からない」「どういう基準で進路を選択すればよいか分からない」の割合が高い。
「偏差値54以下・一般選抜」は「頑張って勉強したのに成績が上がらない」の割合が88.8%と突出。「偏差値54以下・年内入試」は「自分の就きたい職業が分からない」(72.6%)の割合が高かった。
2024年調査では、入学前教育についてもたずねた。
大学・短大進学者の約7割が、何らかの入学前教育を受けていた。全体の約3割が、具体的内容として「学力や能力の診断テストの受験」「入学後の学習や生活に関するオリエンテーションへの参加」を、約2割が「高校までの学習を復習する課題の提出」「入学先で学ぶ内容を予習する課題の提出」を選択。
「年内入試」は難易度を問わず、「高校までの学習を復習する課題の提出」「入学先で学ぶ内容を予習する課題の提出」など、学習内容に関するものが多い。
一方、「一般選抜」は「学校のカリキュラムなどの読み込みと理解」の割合が相対的に高い傾向が見られるが、「入学前の指導はなかった」も4割前後に上る。