2024.0401

2023年度入試の全大学の選抜区分中、半数が年内入試-文科省調査

学生募集・高大接続

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3行でわかるこの記事のポイント

●私大の入学者は年内入試が6割
●私大の学校推薦型選抜入学者のうち6割が指定校推薦
●学外者による入試問題の点検を「試験前」に実施した大学・短大は3割

文部科学省はこのほど、大学・短大の2023年度入試に関する調査の結果を公表した。前年の調査結果から大きな変動はないが、総合型選抜が占める割合は選抜区分数、入学者数いずれも上昇。私立大学では、総合型選抜による入学者の割合が前年度より1.6ポイント高い17.5%だった。

*グラフはいずれも文科省の報告書から転載
公表された調査報告書
*参考記事(Between情報サイト)
1/12現在、私大の総合型選抜の志願者数は対前年指数114.5
私立大学の学校推薦型選抜、入学者の6割が指定校推薦-文科省調査


自学との相性を見極めやすいことが総合型選抜拡大の要因

この調査は文科省が外部機関に委託して実施。全大学・短大の2023年度入試について、同年7月から8月にかけて調べた。対象となった1072 校すべてが回答し、79063の選抜区分について情報を得た。一部については、2022年度入試の調査結果との比較も示されている。

四年制大学全体での選抜区分ごとの割合について前年からの変化を見ると、一般選抜が0.8ポイント減、学校推薦型選抜が0.5ポイント減となる一方、総合型選抜は1.3ポイント増えた。総合型選抜と学校推薦型選抜を合わせた年内入試の割合は51.1パーセント。

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私立大学だけで見ると、総合型選抜と学校推薦型選抜の割合がそれぞれ、国公私を合わせた大学全体の平均値よりやや高く、両選抜を合わせた年内入試は52.0パーセントとなる。

②shiritsuzentai.png

入学者ベースで見ると、国立大学は一般選抜の割合が81.8%で依然として大部分を占めるが、前年から0.8ポイント下がった(前年の割合はグラフでは示されていない)。

私立大学は前年と比べ、一般選抜が1.3ポイント減、総合型選抜が1.6ポイント増となった。両選抜を合わせた年内入試の割合は59.6パーセント。

③hito_zentai.png

選抜区分、入学者数ともに総合型選抜が拡大傾向にある要因として、①年内入試で早期に学生を確保するため、②自学との相性を見極める選抜方法によって中退リスクが低く入学後の伸びしろの大きい学生を受け入れるため、③募集人員について、学校推薦型選抜は「入学定員の5割を超えない」と決まっているのに対し、総合型選抜には制約がないため-などが挙げられる。

私大の学校推薦型選抜入学者、指定校推薦は2割強

私立大学における学校推薦型選抜の内訳を見てみよう。

選抜区分ベースで、指定校推薦は31.7パーセント(グラフでは示されていないが、前年から0.5ポイント増)、附属校推薦は22.3%(前年と同じ)。いずれも、入学者を手堅く確保するために多くの私立大学が拡大を図っている選抜だ。

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入学者ベースで見ると、指定校推薦が59.4パーセント(0.1ポイント増)で6割近くを占める。附属校推薦は14.7%(0.2ポイント増)だった。

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学外者による入試問題の点検は国立大学が先行

この調査では、個別学力試験の問題の点検方法についても聞いている。

「教学マネジメント指針(追補)」では、入試について「大学教員が教育研究活動と並行して良質な問題の作成に取り組むことが難しくなっている」と指摘。問題作成の合理化と良問出題の観点から、過去問の利用、外部の専門家の協力を得ることについて、「検討に値する」などとしている。他大学の教員や元高校教員による試験問題の点検も例示された。

しかし、今回の調査では、学外者による点検を導入している大学・短大は「試験前」が31.8%、「試験中」が5.3%、「試験後」が23.8%にとどまっている。

学外者による点検を受けている大学を設置形態別で見ると、国立は36.3%、公立は19.3%、私立は28.7%だった。

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入学者の質を維持・向上させるためには、各入試方式の選抜手法のブラッシュアップが欠かせない。

募集枠が拡大する総合型選抜については、自学のアドミッション・ポリシーとの適合度を測る手法を開発し、その妥当性を絶えず検証しながら修正していくことが大切だ。

一般選抜についても、「教学マネジメント指針(追補)」が個別学力試験の「基本」として述べる「選抜するための要件(信頼性、妥当性、識別力)を備え、入学志願者の資質・能力等を適正に判定できるような良質な問題を出題する」ために、各大学が問題の点検体制をあらためて検討する必要があるだろう。