2024.0122

専願の公募推薦+入学前教育で「選抜から接続へ」を具体化―大谷大学

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3行でわかるこの記事のポイント

●高校の調査書と推薦状を信頼し、面接なしで小論文のみを課す
●意欲の高い第一志望者を受け入れ、入学前にスタートを切らせる
●初年次教育的、学部導入的な教育を先行実施し、単位を認定

大谷大学は2024年度入試で、新たな学校推薦型選抜「公募制推薦入試[専願制]」を全学で導入した。初年次教育を先取りした内容で単位も認定する入学前教育とのセットで、「高校と大学の学びの接続」を図る入試だ。


●入学前教育では建学の理念やアカデミックスキルを学ぶ

大谷大学(京都市)は1665年、東本願寺が寺院子弟の教育を目的として設けた学寮を起源とする。文、社会、教育、国際の4学部があり、1学年の学生数は約800人。

新たに導入した「公募制推薦入試[専願制]」は全学部の学科ごとに2~5人、計27人の募集人員を設定。小論文のみを課し、調査書の評定平均値と小論文を1対4の比重で評価して合否を判定する。
入学予定者には建学の理念や大学での学び方、アカデミックスキルに関する入学前教育を必修で課し、入学後に2単位を認定する。
初年度は39人が合格し、入学前教育に参加している。

●一定の条件を満たせば受け入れてしっかり育てる

入学センター長の渡邊拓也氏(社会学部教授)は、新たな形の公募推薦導入の背景として、18歳人口の急減を挙げる。「大学全入が現実的なものになる中、入試を新しいフェーズに移すためにそのあり方を見直す必要がある」。

大谷大学では「選抜から接続への転換」という課題の下、入試の見直しが検討された。学内には、学力を基準にしてふるい落とす「選抜」が限界に来ているという問題意識がある。「大学の学修についてこられる基礎学力など、一定の条件を満たせば受け入れてしっかり育てるという『接続』の考え方が今後は大事になる。本学は従来、高校と大学の学びをつなぐことを重視し、高大連携に力を入れてきた。新たな入試もその延長線上にある」。
「高校も探究学習を通して大学の学びとの接続に力を入れている。大学側も受け入れのために新しいことを始める必要があり、本学の解は入試改革と入学前教育だ」

入学者を受け入れる「一定の条件」の一つとして、入学後の学びの意欲につながる志望度を重視する。既存の2つの公募制推薦は併願可だが、新入試は第一志望の受験生を受け入れるため専願を条件にしている。
もう一つの条件である基礎学力は調査書と小論文で確認する。面接を課さないことについて学内では慎重論もあったが、調査書と推薦状を出す高校を信頼するという結論になった。

小論文は2000字程度の論説を読み、要約したうえで自分の意見をまとめるという内容。「卒論を必修にしない大学も増える中、本学は全学部で必修を維持するなど、文章表現を重視してきた。小論文を書くことには、大学の学びの特徴でもある『問いを立てる』というプロセスが必ずついてくる。社会に出ても文系・理系に関係なく書く力が求められる」(渡邊教授)。
大学自ら基礎学力を測る手段として小論文を課すのは、こうした理由による。

●入学前教育はオンデマンド講義と合宿形式のフィールドワークで構成

入学前教育は1月中旬からスタート。第6講までは、各回30~40分間のオンデマンド動画を視聴して建学の理念や宗祖・親鸞のこと、大学の施設やポータルサイトの使い方を学ぶ。隔週で動画を配信し、毎回課題も提出させる。

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さらに3月下旬、比叡山延暦寺および滋賀県にある自学のセミナーハウスで、対面による1泊2日のフィールドワークを実施。「アカデミックリテラシー初歩」として、「問い(リサーチクエスチョン)の立て方」「情報収集やフィールドワークなどの研究手法」「プレゼンテーションなど、アウトプットの方法」を学び、学部単位のグループワークでこれらを実践する。

フィールドワークでは、社会学部がバリアフリーの実践ポイントを探し、国際学部は外国人観光客を対象に調査を実施するなど、それぞれの専門分野に関連したテーマを設定。成果発表までのプロセスでチームビルディングにも取り組むことになる。

●入学センターと教育推進室が連携してプログラムを設計

自校教育やアカデミックリテラシーなど、多くの大学が初年次教育に盛り込んでいる内容を入学前に実施し、意欲の高い入学予定者の育成をスタートさせる。
「入学直後はたくさんの書類を配られ、覚えることが山ほどあって学生は大混乱に陥る。入学までの期間を『大学ゼロ年生』と位置づけ、こうした導入を前倒しでやれば、入学後、大学での学びにスムーズに入っていけるはずだ」(渡邊教授)。

基礎学力の引き上げに重きを置くリメディアル型の入学前教育とは一線を画すプログラムだ。仲間をつくることによって大学生活に対する不安を解消し、期待を高める効果も重視する。

入学前教育の成績(SABC評価)はつけず、合否のみを判定。合格者には、卒業要件に算入できる2単位を認定する。単位認定についてもさまざまな議論がなされたが、「プログラムに対する本学の本気度を示した」という。

単位認定プログラムとしての質を担保するため、内容は、教学担当副学長をトップとする教育推進室と入学センターが連携して設計した。
建学の理念やアカデミックリテラシーは全学生にとって必要な内容であるため、すでに1年次の必修科目として設定されている。今回新たに設計された入学前教育プログラムは、重複が最小限になるようデザインされたという。

●一般選抜も維持し、学生の多様化を図る

「選抜から接続への転換」の第一歩として、この推薦入試を導入した大谷大学の入試制度は今後、どう変わっていくのか。
渡邊教授は「関西の大学の間では年内入試へのシフトが特に顕著で、本学のような小規模大学はその流れを無視することはできない」と話す。入学前教育の会場となるセミナーハウスの定員が少ないため、「公募制推薦入試[専願制]」の大幅な規模拡大は難しいとしつつも、「初年度の入学者の学修状況など、手ごたえがあれば何らかの方法を探りたい」。

その一方で、「基礎学力の高い入学者を集めることの重要性は今後も変わらず、一般選抜の縮小等は考えていない」と説明。「入試方式ごとに求める学生像を明確にし、それぞれの選抜方法を磨く。それによって多様な学生を集めていくことが大事だ。この考え方の下、新課程1期生を受け入れる2025年度入試をドラスティックに見直すこともあり得る」。