2024.0415

〈学生募集をDXで動かす~接触者育成のシナリオ〉vol.11
大学案内を見直し、HPやSNSとの連携で気持ちを動かす

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3行でわかるこの記事のポイント

●大学案内の内容を絞り込み、他のメディアに情報を移す選択肢も
●従来通りの大学案内でもメディア間連携は可能
●MAツールを使い一人ひとりの「今、欲しい情報」を届ける

「紙からデジタルへ」の流れが加速する中、「分厚い大学案内をこの先もずっと作り続けていいのだろうか?」と考える募集広報担当者も多いようです。進研アド中部エリアプランニング課の野村和幸課長は、大学案内の機能を再定義し、MAツールによって他のメディアと連携させて高校生の気持ちを温める新たなコミュニケーションを提案します。多くの大学の学生募集コミュニケーション設計を通して導き出された「新しい大学案内」の考え方とは―。


大学案内を手にする高校生のインサイトはさまざま

SNSの広がりに伴い、高校生のメディア活用をめぐる意識・行動は大きく変わり、多様化しています。その状況を受け、紙の大学案内を廃止する大学、HPのリニューアルと連動させて大学案内のボリュームを減らす大学なども出てきました。

かつて、多くの高校生は、大学案内を読み込み、大学ホームページ(HP)で理解を深め、オープンキャンパスで大学の雰囲気を確認したうえで出願するといった単線型の進路選択プロセスをたどっていました。

しかし今や、SNSなどいくつものメディアを使って情報を集めるようになりました。大学と接触する起点も、そこから出願に至るまでのプロセスもさまざま。結果として大学案内を手にする時の気持ちはそれぞれ異なり、「ちょっと興味がある」から「志望校の一つ」まで幅があります。

こうした中、あらゆる生徒のニーズに一つの大学案内で対応するのは難しいと言えるでしょう。場合によっては網羅的な情報を詰め込んだ大学案内に負担を感じ、その後の資料送付を拒否してしまうかもしれません。 

進路決定プロセスにおける大学案内の位置付けは大学ごとに違う

一つのメディアで生徒の気持ちを一気に動かそうとするのではなく、一人ひとりに「今、欲しい情報」を届けるコミュニケーションを重ね、少しずつ温めていくことが大事です。大学案内も、その一部を担うメディアとして位置づけ直す必要があります。

生徒それぞれの「欲しい情報」を捉え、複数のメディアを連携させてタイムリーに情報を届けるために、MAツールが司るコミュニケーションの設計をお勧めします。

その設計においてどのような進路選択プロセスを想定するかは大学ごとに異なり、それによって大学案内の位置付け方もいくつかのパターンが考えられます。ただし、情報の単位を分け、MAツールによる管理の下で発信してナーチャリングするという点は同じです。 

起点となる大学案内なら「興味を膨らませるための工夫」を

一例として、大学案内を起点にしたプロセスを下図で示します。

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この図では、大学案内の送付後、LINE経由で繰り返しHPを訪問させることによって気持ちを温め、オープンキャンパスで最後の一押しをして出願に導くというプロセスをMAツールで動かしています。

「友達との会話でその大学が話題に上り、ちょっと興味が沸いた」という資料請求をイメージするといいかもしれません。

このようなライト層向けの大学案内は、芽生えたばかりの興味を膨らませるため、例えば「学部ごとに、1人の学生を通して4年間の学びを俯瞰する」という役割に徹し、学部・学科の詳しい紹介は思い切って他のメディアに譲ることが考えられます。

大学案内で興味が膨らんだ生徒に次のアクションを促すため、別のメディアで働きかけます。例えば、大学案内に登場する学生にQRコードを付けてHPに遷移させ、その学生の授業やサークル活動など、キャンパスライフを紹介するのもいいでしょう。 

継続的なコミュニケーションのための働きかけを

HPを訪問してくれたらLINEの友達登録を促し、継続的なコミュニケーションにつなげたいところです。毎回、学びの特色や留学プログラム、学食のメニューなど、さまざまなトピックでHPのランディングページ(LP)に遷移させ、反応からその生徒にとって興味があるテーマを把握。それを深掘りするページへと、ポップアップやメールで誘導することも考えられます。

このような内容であれば、「私のために送られてきた情報だ」と思えるはずです。

従来、大学案内に集約していた情報をHPの各ページに移し、最適なタイミングでLINEやメール、ポップアップで連れていく-そんな考え方です。

継続的なコミュニケーションを通して気持ちが温まった状態でオープンキャンパスに参加した生徒には、総合型選抜の志望理由書作成の材料を見つけられるよう、HPの「先輩の志望理由」のページに誘導することなども有効でしょう。 

アクションしてくれない生徒を想定した施策も設定

「全ての高校生がそんなふうに思い通りに動くわけがない」と思われるかもしれません。上の図はわかりやすく単純化しましたが、実際にはこれ以外のさまざまな反応(反応がないことも含め)を想定して施策を埋め込み、設計はより複雑になるはずです。

例えば、大学案内からHPに遷移しない生徒には、発送の1週間後に「大学案内は読んでいただけましたか? あなたが気になったのはどの先輩でしょうか」といったメールを送る、など。その場合も、資料請求時に取得した興味・関心の情報によって誘導先のLPを変えれば、アクションしてくれる可能性が高まります。

LINE登録のタイミングはHP訪問時だけでなく、オープンキャンパス申し込み時や参加時も考えられます。高校生にとってメール以上に活用度が高いLINEでコミュニケーションができれば、大学に対する親近感を高められることでしょう。 

最後の一押しのための大学案内には入学後をイメージできる情報を

ここまで、大学案内が起点になる進路決定プロセスの設計について説明しました。しかし、はじめに述べたように、今の高校生は大学と接触する起点も、そこから出願に至るまでのプロセスも多様で、大学案内が起点になるとは限りません。

YouTubeがきっかけで何度もHPを訪問し、進路決定プロセスの終盤で初めて大学案内を手に取るケースもあり得ます。そのような生徒を出願へと一押しするには、「自分がこの大学に入ったら」とリアルにイメージできるよう、実際の時間割と1週間のスケジュールなど、より具体的な情報に絞るというのも一案です。

また、実際にはさまざまな理由により、従来通り大学案内に網羅的な情報を掲載し、コミュニケーションの柱として活用したいという大学も多いと思われます。その場合も全ページを一気に読ませるのではなく、ある程度の期間にわたって何度も読み返してもらえる工夫をするといいでしょう。

MAツールによってHPLINEなど、他のメディアと連携させ、その時々で必要とする情報のページにナビゲートし、少しずつ気持ちを温めるコミュニケーションが設計できるはずです。大学案内をいつも近くに置き、繰り返し開くことによって大学に対する愛着が高まることが期待できます。 

一方的な発信からの脱却を

以上のようなことを考えると、そもそも「大学案内」とは何だろうという奥深い問いに行き着きます。大学によっては分冊にするのがいいかもしれませんし、大学案内の機能をすべてHPに代替させて「ウェブ大学案内」と呼ぶのが適切かもしれません。

いずれにしても、大学の「伝えたいこと」を一方的に発信するようなコミュニケーションからの脱却を図る中で、自学にとっての大学案内の機能を再定義する必要があるでしょう。

高校生一人ひとりの内面に寄り添い、心地良いと感じてもらえるコミュニケーションを図ることが大切です。

*進研アドによるクリエイティブ支援の紹介
*進研アドが提供する学生募集MAツール「infoCloud Digital Marketing」の紹介


〈今回のナビゲーター〉

野村和幸(のむら・かずゆき)
進研アドエリアプランニング部 中部エリアプランニング課課長

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前職ではグラフィックデザイナーとして多種多様な業界・企業で広告制作やブランディングに尽力。進研アド入社後は「デザインする領域」を拡大し、募集課題・ブランド課題の解決のためのコミュニケーション戦略、広報戦略はもとより、カリキュラム構造の助言に至るまで幅広く支援している