2022.1116

設置基準の規定を緩和する特例制度の申請受け付けがスタート

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3行でわかるこの記事のポイント

●オンライン授業の単位数や他大学との連携科目の活用を柔軟に
●モデルケースに沿った申請内容は審査を簡素化
●複数地域での長期フィールドワークなど、「国内版ミネルバ大学」も想定

文部科学省は、教育課程の編成等において大学設置基準の規定を緩和する特例制度の認定申請受け付けを11月8日に開始した。オンライン授業の拡大や他大学との連携による「国内版ミネルバ大学」への改革も視野に入れた制度に対し、どのような意欲的な構想が出てくるか、注目される。2024年度からの新教育課程実施をめざす大学が主な対象となる一次申請は、12月28日に締め切られる。

*特例制度に関する資料はこちら
*参考記事(Between情報サイト)
設置基準改正へ②オンライン授業単位数上限等を緩和する特例制度の創設


●12月末の申請締め切り分は早ければ3月に認定大学を公表

 教育課程等に関する特例制度は、一定の要件を満たした大学が学部等の学位プログラムとして先導的な教育課程を編成する場合などに、特例的に大学設置基準の規定によらずに実施できる制度だ。オンライン授業の単位数の上限や科目の「自ら開設」の原則、校地面積などの基準を緩和することによって、大学に先導的な教育を促す。
 12月28日の一次締め切り分については、早ければ3月に認定大学を公表。認定された大学は、学生募集において先導的な教育をPRできる。
 文科省は年明け以降も引き続き申請を受け付け、3月31日を二次締め切りとする。審査スケジュールは申請状況をふまえて検討。2025年度以降の新教育課程実施に向けた申請スケジュールも、あわせて検討される。
 文科省は、11月16日に申請受け付けに関する説明会をオンラインで開催。制度についての質問をメール等で受け付けるほか、オンラインによる申請の相談にも対応する。各大学に申請予定の有無とその時期を尋ねる調査も、11月中旬から1月末にかけて予定している。

●連携推進法人を設立しなくても連携開設科目を「自ら開設」とみなす特例も

 今回の申請受け付けにおいては、大学の意欲的な構想をよりスピーディに実行に移してもらうため、文科省が一定のモデルケースを示したうえで、それに沿った内容の申請については比較的、簡易な審査によって認定するという。示されたモデルケースは次の2つ。

<モデルケース1> 遠隔授業の上限(60単位)の緩和
 例えば、国内の複数地域におけるフィールドワークと長期の海外留学を組み合わせ、4年間を通して課題発見・解決力、国際的視野の獲得をめざす教育課程の編成を想定。学生はそれぞれの滞在地から同時双方向型のオンライン演習に参加し、各自の体験・実践について発表したりフィードバックを受けたりする。所属大学の講義も同時双方向型のオンライン授業で受け、メインキャンパス以外の場所で単位を修得していく。世界各地を移動しながらオンラインで学ぶミネルバ大学をイメージしたこの方式を可能にするため、オンライン授業を単位数の上限を超えて実施できる特例の適用を受ける。
 オンライン授業の上限(60単位)にはオンデマンド型(指導等のフィードバックがあることが要件)も含まれるが、特例によって60単位を超える分は同時双方向型のみが認められる。60単位をオンデマンド型で実施し、残りの全単位を同時双方向型にすることも可能だ。
 モデルケースはあくまでも例として示され、実施内容の方向性が同じであれば、厳密に同じである必要はないという。

<モデルケース2> 科目の「自ら開設」の原則の緩和
 学生が幅広く、かつ質の高い学修を通して課題発見・解決力を修得できるよう、他大学との緊密な連携の下、他大学がその強みを生かして設置した科目の提供を受けて教育課程を編成することを想定。これを可能にするため、大学等連携推進法人を設立しなくても連携先の大学の科目を連携開設科目とみなし、「自ら開設」の原則によらない特例の適用を受ける。法人設立の負担がないため、スピーディな改革ができるという考え方だ。連携開設科⽬の単位数の上限は、大学等連携推進法人制度を利用する場合と同じ30単位となる。 
 大学間の連携に問題が起きて当初の予定期間より前に連携開設科目の開講が終了すると、その教育課程で学ぶことを前提にして入学した学生に不利益が生じる。このような事態を回避するため、申請時には①連携大学間の協議会設置や連携協定締結によって継続的な連携を確保する、②既入学者に対する連携開設科目の継続開講を協定に盛り込むなど、学生に対する適切な配慮について明示が求められる。

 申請する教育内容が2つのモデルケースのいずれか、または両者を組み合わせたケースに沿ったものであれば、より簡易な審査によって認定される。審査では、先導的な教育を行ううえで、それぞれの特例対象規定の緩和が必要不可欠であること、またはその教育の効果的・効率的な実施において合理的であることが示されているか、チェックされる。

●大学設置基準の将来的な見直しにつなげるための実証的取り組み 

 今回の認定による教育課程等はあくまでも「特例」と位置づけられ、大学の申請に基づいて決まる認定期間に限って実施できる。
 特例制度の適用を受けるためには、申請する教育課程等が先導的な取り組みであることの説明に加え、次のような機関要件が課される。①内部質保証体制の確立、②教育研究活動に関する積極的な情報公開、③直近の認証評価で適合認定を受けている、④法令順守と健全な財政状況。
 認定された大学は、年1回の実施状況の報告と、認定期間終了後3か月以内の教育効果検証報告を求められる。特例制度は、大学設置基準の将来的な見直しにつなげるための実証的な取り組みとしても位置付けられている。文科省は大学から提出されるデータに基づき、教育効果が高いと判断した取り組みを他大学に広げられるよう、規制緩和を「特例」ではなく一般化することを検討する。
 一方で、オンライン授業の拡大など、特例を使わなくても現行制度で対応が可能なこともあるとして、文科省は、まずその内容を確認するよう大学に呼びかけている。