2022.0225

現行制度でも可能なオンライン授業の活用法は?ー文科省が例示

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3行でわかるこの記事のポイント

●一部がオンライン実施でも一定の要件で対面授業と見なすルールを活用
●2年間すべてオンラインにし、海外での受講を可能にするパターンも
●有識者会議では単位数上限を緩和する特例制度を検討

コロナ禍を受け、大学の間ではこの2年間でオンライン授業の導入・活用が一気に進んだ。そのメリットに着目し、対面授業の代替手段としての活用にとどまらず、より積極的、戦略的に活用したいと考える大学もあるようだ。そうした大学からは、オンライン授業による修得単位数の上限を定めた大学設置基準が、柔軟な運用を阻んでいるとの声も聞かれる。文部科学省は「現行の制度でもできることについて、あらためて大学に周知していく必要がある」として、このほど、オンライン授業の活用例を示した。

*記事中の図は文科省の資料から
*文科省の資料はこちら


●私大連は設置基準の改正を要望

 中央教育審議会大学分科会の質保証システム部会では、一定の要件を満たした大学を対象にオンライン授業で認定できる単位数の上限を緩和する特例制度の創設が検討されている。
 一方、日本私立大学連盟は2021年夏にまとめた提言で、「デジタルを活用した新しい学びの実現」の一環として「必要な授業のオンライン化」を推進する考えを示し、大学設置基準の改正による単位数上限の撤廃を求めている。
 こうした中、文科省は質保証システム部会に、現行制度の下でも各大学の判断・運用によって実施できる取り組みを例示した。
 大学設置基準では、オンライン等の遠隔授業による修得単位数の上限は60単位となっている。2021年4月、文科省は各大学に「対面授業の一部として半分以下の時間をオンラインで実施する場合は対面授業と見なし、オンライン授業の上限60単位に含めなくてもよい」という趣旨の通知を出した。コロナ禍の下、各大学でオンライン授業が拡大する状況をふまえ、これを常設のルールとした。この場合のオンライン授業には「同時性または即応性を持つ双方向性(対話性)」が担保される必要がある。

●オンデマンド受講後、次の対面授業で質疑ができれば「即応性」はクリア

 この原則や2021年5月に出したQ&A集に基づき、文科省が示したオンライン授業の活用例は以下の通り。
 下図は、4年間を通してオンライン授業を最大限に取り入れた例だ。

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 60単位に相当する2年次と3年次の授業をすべてオンラインで実施し、大学から遠く離れた国内外の任意の場所で学ぶことを可能にするパターンだ。長期的なボランティア活動をしたり、旅を続けたりしながら授業を受けるなど、柔軟な学びへの対応が想定されている。加えて、1年次と4年次の対面授業も半分以下の時間をオンラインで実施することが可能だ。
 また、下図のようにクラスを2つの班に分け、対面とオンラインの授業を交互に実施するなど、全ての学生が授業時間の半分以上を対面で受講する科目であれば、対面授業として扱うことができる。対面授業の学生数を半分に抑え、きめ細かい指導が可能になるといったメリットが生まれそうだ。

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 さらに、下図のように全授業数の半分を対面で実施し、残り半分は対面・オンラインのいずれかを学生が選択できるようなパターンも、「全ての学生が授業時間の半分以上を対面で受講する」ことになるので、実施が可能だ。後半は毎回オンライン授業を選び、最初の例で示したように海外等の遠隔地から授業に参加するような学び方も可能になる。

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 この例で、特定の学生が病気や障害等を理由にすべて、または半分以上の授業をオンラインで受講する場合も、大学がその科目を対面授業として扱うことは問題ないという。
 1回の授業をオンラインと対面の2部構成で実施する手法に関心を持つ大学は多いようだ。下図は、1回100分の授業を半分に分け、50 分相当のオンデマンド授業で知識をインプットした後、「速やかに」実施される50分間の対面授業でディカッションや質疑応答をする反転学修の例。オンデマンド部分が授業外学修の代わりにされることなく、別途、授業外学修を課すなど、要件を満たせば2つの部分を合わせて1コマの対面授業科目として扱うことができる。

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 オンライン授業を対面授業の一部と見なすための要件となる「同時性または即応性」の「即応性」とは、「時間割に設定された当該科目の次の授業までの間」という考え方がとられる。つまり、次週の予習となるオンデマンド授業を学生が自分の都合のいい日時に視聴し、次週の対面授業でディスカッションや質疑応答の機会が確保されれば、要件を満たすわけだ。
 文科省はこれら「現行制度でも実施可能な取り組み」について、さまざまな機会を捉えて大学に周知し、教育改善を目的とした活用を促したい考えだ。


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