小規模校で充足率改善、入定厳格化の効果が薄い地域もー2018入試
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2018.0820
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3行でわかるこの記事のポイント
●定員割れ大学の割合は3.3ポイント下がり36%に
●入学定員「400人以上500人未満」の大学が充足に転じた
●中四国は依然、厳しい状況
日本私立学校振興・共済事業団による2018年度の私立大学入学志願動向調査によると、定員割れした4年制大学は前年度より19校少ない210校で、全体に占める割合は3.3ポイント低い36.1%だった。小規模大学で定員充足率の改善が目立つ一方、入学定員管理厳格化の効果がうかがえないエリアもあり、文科省による追加施策導入の判断に何らかの影響を与える可能性もある。
*調査結果はこちら
私学事業団の調査では、私立大学582校の入学定員や志願者数、入学者数などを集計し、分析している。
2018年度は定員割れの大学が減る一方、大規模大学が合格者を絞り込んだ結果、全体の入学定員充足率は2.0ポイント低い102.6%と、この5年間で最低となった。
*グラフはいずれも私学事業団の資料より
入学定員規模による11の区分ごとに見ると、「100人未満」、および「1000人以上1500人未満」「1500人以上3000人未満」「3000人以上」で入学定員充足率が下降。それ以外の7区分はいずれも上昇してこの5年間で最大の充足率となった。
2016年度までは「入学定員800人」が充足と未充足の分岐ゾーンになっていた。2018年度、「400人以上500人未満」は1.4ポイント上昇して100.8%と充足に転じ、前年度に充足に転じた「500人以上600人未満」は今回も2.8ポイント上昇して103.7%。「200人以上300人未満」の充足率も3.4ポイント上昇して99.4%まで回復するなど、小規模大学での改善が目立つ。
一方、「3000人以上」の充足率は前年度から5.5ポイント下降して100.6%、「1500人以上3000人未満」も3.5ポイント下降して105.0%になるなど、大・中規模校による合格者絞り込みの結果が表れている。その影響で、前述の通り小規模校の入学者が増えたことが前年度に引き続き見て取れるが、こうした構図の中でも「100人未満」の超小規模校(34校)は2年続けて充足率が下降し、厳しい状況が続いている。
大都市と地方の二つに分けて集計したデータを見ると、3大都市圏(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫)の充足率は近年、徐々に下がり2018年度は103.2%。逆にそれ以外のエリアの充足率は年々上がり2018年度は100.8%で、この5年間で初めて100%を超えた。
21のエリアに分けた上のグラフでは多くの大都市部で充足率が下がり、特に5.6ポイント減の97.7%と未充足に転じた京都が目を引く。東京は3.7ポイント減の103.7%、大阪は2.6ポイント減の104.5%、愛知は1.7ポイント減の103.9%となっている。
一方、地方部では、多くのエリアで充足率が改善した前年度とは状況がやや異なる。3年前の水準に戻った四国(3.3ポイント減の88.6%)、この5年間で最低の「中国(広島を除く)」(0.5ポイント減の93.9%)など、充足率が下がったエリアが目につく。近接する大都市部の大規模校の合格者絞り込みを受けて入学者が増えたと推測される「近畿(京都、大阪、兵庫を除く)」(6.3ポイント増の110.7%)、「関東(埼玉、千葉、東京、神奈川を除く)」(2.1ポイント増の104.5%)とは対照的だ。
入学定員管理の厳格化は受験生の流れを「大規模校から小規模校へ」と変える一方、「都市から地方へ」という変化に対する影響力は限定的とも言えそうだ。都市部の大規模校に出願や合格ができなかった受験生は、首都圏、近畿など一部のエリアの中・小規模校に多く流れているとも考えられる。
入学定員管理厳格化のねらいは、地方から都市部への進学者の流出を抑制することだった。私学助成が不交付となる入学定員充足率の段階的引き下げは2018年度で完了し、文部科学省は2019年度以降も充足率を100%前後に誘導するための新たな措置を検討している。しかし、大規模校による合格者数絞り込みで受験生に混乱が生じたことを受け、新たなペナルティの導入には慎重な姿勢も見せている。今回の私学事業団の調査結果からこれまでの施策による地方大学の学生募集効果について文科省がどう評価し、次なる施策の判断にどうつなげるか注目される。
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